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異世界ジャンプ 修行中 lesson2

目隠し?やけに暗いな。なにも見えない。もしかして目が見えなくなった?それちょっと困るんですけど。
風がある。部屋の中って言うより、外みたい。しばらくして緊張がほぐれてくるとなんとなくだが周囲の状況はがわかってきた。

そうか、夜か夜なんだ。今の日本では、よっぽどの田舎でもないとありえないほどの暗さ。目が慣れてくるに連れて周囲がぼんやりと見えてきた。いやいや徐々に鮮明になっていく。目が慣れたと言うより、視力がアジャストされてきた感じだ。

ンッ、メガネがなくなってる。けど見えるね、見えるよ。てか異常に遠くまでは無理かな。あっカバーしてるね。なんていうんだろ、身体が変わってきてるみたいだ。単純に筋力だとか身体能力とかのパーツではなく、ハードもソフトも。いや意識だけはそのままかな。不思議なのは違和感がないことだ。

オレの心はすでにこの身体に慣れている、高さのある木こそないが森のようだ。木の高さはビルで言えば2階建てくらい。せいぜい7mかそこいらだろう。今ならてっぺんまでジャンプできそうだ。って非常識だよね。
ダメダメ、そういう発想はもうないの。そうださっきも言われたよな前例がないからって否定から入るな
「うんDon’t think. feel!だ」

なんとく期待はしてたけど、軽くジャンプしただけであっさりと木のてっぺんまで到達した。着地も問題なし。むしろジャンプするときより落ちるスピードのほうがゆっくり。だから着地も感覚としてはふわりと舞い降りた的なイメージ。

「フンッ無様な飛びを」誰?気づかなかった。感覚もアップしてるはずなのに。気配ってやつが全然なかった。

「ええっとどなたですか。もしかして新しい指導員の人?」どこにいる?わからない。

「前を見ろ」えっいないじゃん。

「足元だ」やっぱりいない。でも

「どこを見とる、上だって」
“ど”の発声の瞬間バックキックを炸裂させた。瞬時の反応&会心の一撃!!!のはずがあっさりと空を切った。

「ふ〜んバカってわけでもないか。狙いは悪くないけど、なんとなくとか、気配なんかじゃ当たらないよ」
こいつ、じゃなかった。今度の教官は口調こそのんびりだが、動きは早いようだ。

「あー言っとくけど動きは別に早くないからね。君の行動パターンをデータ解析してるだけ」

「あの〜先生のお名前は」

「聞きたい」

「ハイ」

「リンク、ジェット・リンクだ」
えっ!まさかでしょ。その手は卑怯だろ。

「卑怯じゃないですよ。調べましたものあなたの記憶。ヒーローでしょ彼」
あっ、またあの声だ。

「そうです。コイツですよ」

ブルース・リーにジェット・リンクつまりサイボーグ 002だ。確かにどちらもオレの少年期から青年期にかけてのヒーローには違いない。この分だと次は・・・。まぁそれはいい。あとのお楽しみというやつだ。

「オーケーわかった。了解だ。頼むよ始めてくれ」

「聞き分けがいいな。じゃいくぞ。加速装置をオンにしてみろ」

「ちょ待って。加速装置なんてないよ」

「あると思え、思いさえあれば現実化できる」むちゃをいいやがる。思いだけで現実化できるなら、今頃オレはスティーブ・ジョブスとイーロン・マスクを足して3かけたくらいのセレブだ。

「ほらまた忘れている。ここはあなたのいた空間とはチ・ガ・ウ・ノ」怒ってる、怒ってるなこれ。はいはいわかりましたと。

ジェットのスペックはどうだったかな。思い出すんだ。ブロンクス出身のイタリア系アメリカ人。飛行速度はマッハ5。アメリカ空軍の偵察機SR71ブラックバードが最高速度マッハ3.4だから、マッハ5となるとやっぱりマンガだ。夢があったね昔は。
ちなみにSR71ブラックバードがマッハ3.4を記録したのは1967年。信じられない話だが、未だにそれを上回る有人軍用機はない。60年近く昔の記録を抜けないなんてどうなってるんだ。
いやいや世の中はスピードが全てってわけじゃないぞ。Gを考えると生身の人間が耐えられ、且つ戦える限界が、マッハ3.4ってことなんだろう。確信はないけど、そう関西人の言う知らんけどってやつだ。

「さっきから何を一人の世界に入り込んでるんだ」

「いや加速装置がどこにあるかと思ってね、今思い出したよ」言うなり奥歯を噛み締めた。何も起こらない、故障か。とりあえず歩いてみた、あ〜普通だね、普通に歩けるね。とくにゆっくりとは思えない。
といきなりボールが飛んできた。焦ったけどなんとかキャッチ。オレの慌てぶりがおかしいのかジェットが笑っている。

「そいつを投げ上げてみろよ。いや違うな。そいつを手首のスナップだけでかる~く上げてみろよ。風船を投げ上げる程度にな」どういうつもりだ。これもトレーニングか。とりあえずオレは従順な弟子だ。

押し上げられたボールはゆっくりと上昇し、天井から50cmほどの位置で停止したあと、ゆっくりと落ちてきた。アッ?どういうことだ。

「そういうことだ。ボールに魔法がかかってるわけじゃない。お前の感覚そのものがアップしてるんだよ」

「欠点がないわけじゃない。加速装置が作動している間は、通常の音、特に会話は聞こえないと思って間違いない。もちろん加速中は音楽を楽しむことだってnoだ」

「残念だな。オレはオフビートで動ける数少ない日本人だってのに」

「そんな冗談をいう余裕があるなら少しレベルを上げるとするか」
予備動作も感じさせずジェットが消えた。

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