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都バス06系統四ノ橋下車5

 負け惜しみにしか聞こえないかもしれないけど、女の子たちとのつきあいより、今は男同士のつき合いが気に入っている。
Hな話や馬鹿な話もするけど、男同士の話には男にしか分からないリズムがある。(気も楽だしね)社会的なことだって一応話題にはなる。その日も、popsやサッカーの話から映画の話と流れて、石田が思いだしたように話し出した。(こいつは軍事おたくのゾンビ※野郎!)

 「オレオレ詐欺ってあるじゃん。俺んちにもあれ掛かってきちゃったのよ」
 「お前んとこ、親父とお袋と兄さんお前の4人家族じゃん。ジーさんもバーさんもいないのに?」サッカー部不滅のケズリマン、高橋の鋭いけずり。
 「だから、その親父の実家?っつか田舎のバーさんとこに」
 「信じちゃったわけ」再び高橋。
「急ぐなって、ニーチャンがさ、合宿中に、事故起こして、示談にしないと内定取り消されるかもしれないって」
石田の兄さんは、弟と大違いの秀才で、九州大生だ。

 「でもさ、なんでバーさんとこに、普通、家の方にかけない」
 「そんなことしたらバレルでゲスよ。詐欺師さんたちだって頭使ってるのよ」これは桜井。なぜかビギナー2年目の落語フリーク。

 「だから、俺んとこ親父の実家が九州だから、まず地元のお祖父様、お祖母様へご連絡をと思いまして、って言ったんだって。その大学の教務科主任とかいう犯人Aが」
 「すると、Bは?」とこれはボク。
「最近の常套手段だよね。彼らも手が込んできてるから」(高橋訳知り顔するな!)
 「でね、BからCにそしてまたAにってぐあいに、次々とお話しが進むもんだから、バーさんあわてちゃって、電話を切っちゃたのね。それが良かったみたい。」

 「なんで?」
「向こうは気づかれたとでも思ったんでしょ」
その後、石田のお祖母様は、改めて自慢の孫に電話を入れ、詐欺だということに気づいたんだってさ。めでたしめでたし。
 「あるんだね、でもさよく考えてみたら、それってオレオレ詐欺じゃなくて。振り込め詐欺なんじゃねーでゲスか」
 「ゲス、ゲスってお前が好きなのはどっちかってーとGAPだろ」
「おホッこんつとんでもない勘違い野郎でゲスな。拙の好みはユニクロでゲスよ」桜井と高橋の掛け合いからまた話は別の方向にシフトチェンジしていった。

 昔のドラマみたいに言うと「事件は身近で起きている!!」
被害にあった人たちには気の毒だけど、その時はそんな程度の興味だった。小さな子どもが大人のちょっと深刻そうな話を聞いて、凄い秘密を知ったように興奮する。それと似たような感じだ。まだ子どもなんだ。ボクたちみんな。

 この手の詐欺は急速に巧妙になってきている。個人情報保護法だとか、インターネット詐欺だとか。テレビやネットでもそんなのばかり。詐欺師だって情報化社会の一員という分かりやすい理屈。それにしてもこんな身近にも被害者(未遂だけど)が出てるなんて。

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