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⭐︎Lady Day/The complete Billie Holiday on Columbia (JAZZ ESSAY 3)

僕はアメリカ、コロムビアより、ビリー・ホリディーの1933-1944年のすべてのコロムビア録音が、集大成されたCD10枚組が発売されるときいた時、すぐに購入しようと思ったし、とても内容に期待した覚えがある.しかし、どういう訳か、日本では、あまり、ビリ-・ホリディーの人気がないように思えるのは、僕だけだろうか?今まで、スィング・ジャーナルの表紙を飾った事は一度も無いと思うし、こんな素晴らしい企画があっても、あまり話題にならなかった。その全集が発売されると、そのあまりの立派さに僕は驚いてしまった.その大きさはまるで、当時の10インチ盤の大きさで、SPの組み物のような作りの中にCD が10枚納められていた.コロムビアは相当力を入れて作ったのだろう.それに、立派な115ページにも及ぶ、ブックレットがついている。でもそのくらいはするべきであろう、なぜならば、これは複製芸術時代における、アメリカの国宝だからである。僕はこの全集を日本でも発売してほしかった、そしてそれには、大和明氏の解説が欲しかった.そうしたら、きっと、完璧な全集になったと思うのです.でも残念な事に、日本ではビリー・ホリディーがそれほど、人気がありません.まだ、彼女が好きだというファンにあったことがありません。それは、僕が思うに、彼女は、ルイ・アームストロングや、エリントンの時代の音楽に思われていて、当然、ジャズ喫茶でかからなかったのである.モダーンにはいってからも、彼女の録音が多い、ヴァーヴレコードの作品はそれほど積極的には紹介されなかった.そして晩年の傑作はストリングスの伴奏だったから、ジャズ喫茶では、歓迎されなかったと思われます.もう30年位前の僕の大学時代には、都内で、コロムビア時代のビリー・ホリディーをきけるのは、お猿を飼っていた、下北沢の"マサコ”だけでした。確か,マサコは朝から営業していて、マル・ウォルドロンや、エディット・ピアフなどもかかりました。珍しい存在でした.太っていて、何時も和服を着て、お猿をかわいがっていた方がママさんだと思います。古い話です。晩年のビリーホリディーのレコードはほとんどジャズ喫茶では聴くことがありませんでした.最も、何も彼女のレコードをみんなで聴く必要はありませんけど、もっと、沢山の方に聴かれてほしいと思うのです.当時は彼女の自伝”奇妙な果実”が大橋巨泉の訳で晶文社から発売されていました。すごく、暗い本でした。その頃、僕は彼女のラストレコーディングを手に入れました.ヴァーブレコードを何枚か購入すると特典盤でもらえたのです。そのレコードの彼女の声は、それまで聴いて来た、彼女の声と全く違ったのでした。まだ40代だというのにまるで老婆のような声だったのだ。レイ・エリス指揮の奇麗なオーケストレーションと不思議にあっているし、素晴らしい芸術作品に仕上がってはいるものの、なぜか、ここまで、がんばらなくていいよ、といってあげたいほどに痛々しい.最後の作品だからそうかもしれないが、悲しい程に美しい.すごい作品なのです。
2006年12 月23 日16 時 33分 


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