ビール製造は装置産業 設備の選択でビジネスがだいたい決まる
危うく2月のnoteを書き損ねるところでした。
1月に3回書いたから油断してたんですが、noteの通知で催促されて気付きますw
さて、最近は自社の店舗やビール製造はスタッフに任せきりにしてしまって、他社さんの事業のサポートばかりしております。
今年もまだ新規立ち上げのお手伝いをさせてもらえそうなのですが、
10回のブルワリー立ち上げを経験してもまだまだ奥が深いビジネスです。
まず立ち上げの最初に、
どうやって売るのかという事業計画や目論見を考えるわけですが、
その次に考えるのは
その計画に必要十分なブルワリーの設備をどうするかということです。
ビール製造業はおもくそ装置産業なので、
そもそも最初の設備にどう投資するかはめちゃくちゃ重要です。
とはいえ、その正解ってどうやって出すと思いますか?
私は基本的にかなり小規模、マイクロブルワリーを専門にやってきたので、
それこそヤッホーブルーイングや伊勢角屋さんのような、
クラフトビールの中で大規模なブルワリーの設備については未知数です。
そこまで大きな規模のクラフトビールメーカーは数えるほどですが、
ほとんどのクラフトビールメーカーが備えるのは、
1ロット2,000L以下のブルワリー設備だと思います。
弊社で相談問い合わせされるのも
だいたいは300~1,000L規模までの案件。
最近はその規模までの設備の選定には
選択肢がかなり多くなってきました。
今日は、設備の選定のポイントについては書きません。
なぜなら、そこがかなり大きなノウハウだからです。
そもそもブルワリーの立ち上げなんて、
ほとんどの人は1回しかしません。
のちのちスケールアップするために2回目をすることはあると思いますが、
だからこそ設備選定のノウハウは蓄積しにくい。
家は3回建てないと、みたいな話です。
ブルワリー勤務経験のある経験者でも、
いきなりブルワリー設備の選定で理想にたどり着く人はいないと思います。
ましてやブルワリー勤務未経験の人にとって、
ブルワリー設備の選定は、見積もりを眺めることくらいしかできません。
いくつか相見積もりを取ったとしても、
なんでこんなに金額が違うんだろう?
くらいのことしか考えられないでしょう。
おそらくビジネスの事業計画上、
必要な量のビール製造が可能な設備条件は伝えているでしょうが、
設備メーカーによって何が違うのか、理解することも難しいでしょう。
設備の条件としては、
年間何キロリットルのビールを製造することができるか、と
せいぜい予算と敷地面積の上限を提示するくらいじゃないかと思います。
同じ条件でも、設備メーカーによっては3倍以上の見積額の差があったりします。
これは車に例えると、
ポルシェと軽自動車を比べるようなものです。
条件は、4人乗れて時速100㎞で走ることができることだけ、
みたいな感じですね。
ブルワリーの設備も、同じ製造量を達成はできるけど、
スペックや機構、アクセサリーなどは全然違うので
当然見積もり額も違うというわけです。
地ビール黎明期に比べると
ブルワリー設備のコスパはかなり良くなっていますが、
それでもこの数年で2倍近くまで高騰しています。
ステンレスと為替の影響もありますが
ありとあらゆるコストが上がっているので致し方ないです。
以前は、ドイツやアメリカ、カナダ製造の設備などが多かった印象ですが、
最近は中国製の設備が安価に手に入りやすくなっています。
アリババで見つけて取引する人もいるそうですが、
未経験の人がいきなり手を出すとリスクもかなりあると私は思います。
仕様書や図面通りの物が届かなかったり、
容器に穴があいていたりは割と当たり前にあります。
素人目にはわからない(経験者でも微妙)かもしれませんが、
ステンレスなのに錆たりもします。
国際基準の品質に満たないステンレス鋼だから安いというわけです。
さらに言うと、
アーク溶接の精度が悪い場合、
ビール製造の最もキモになる衛生面で重大なリスクを抱えることもあります。
結局、自社での改修や部品交換などをすることになって
安かろう悪かろうに引っかかって結果的に高くついてしまうパターンに。
また、設備自体は安くとも、
輸入や関税のコスト、配送から設置、配管保冷電気工事などなど
自力で手配しようと思うと、それはそれで手間も時間もコストもかかります。
自力で何とかできる経験者がいるならまだ良いと思いますが、
未経験で設備の良し悪しも判断できない人には
中国メーカーへの直発注はオススメしないようにしています。
書いてるうちにちょいちょいノウハウを出してしまいそうになりますねw
未経験の人が単一の設備メーカーに見積もりを依頼すると、
フルパッケージ、フルオプションで出てきたりします。
よく分からないけど、とりあえず見積もり出して、
と言うとそりゃそうなりますよね。
私がお手伝いしているのは、
本当に必要な設備や機器の選定と、
メーカーごとに得手不得手な部分を見極めて
いくつかの発注先の組み合わせを提案することです。
これだけで無駄なコストが数百万円単位で削減できる可能性があります。
いずれにしても1,000万円以下の投資でブルワリー事業を立ち上げても、
採算の合う規模のビール製造は難しいと思います。
とはいえ高級ブランドの設備をいきなり導入しても
技術がなければ宝の持ち腐れになってしまうでしょう。
初期投資を下げることだけではなく
高品質なビールのためにどこにどうお金をかければよいのかを
判断することが重要です。
というわけで、興味がある方は一度ご相談頂ければと思います。
明後日の大阪マラソン、応援頑張ります!
雨は嫌だなぁ、、、