春色の服と真冬の心

私のタンスはここ何年かで色味を増してカラフルになった。
メンタルと収入が安定していたからか、カラフルな服を買うことも、いっそのこと憎んでいたくらい嫌いだったスカートをはくことにも抵抗がなくなっていた。
テンションに任せて、興味もお金もないからと学生時代からずっと変わらず着ていた服をアップデートしまくったのだ。
オシャレとは案外楽しいものだったのか、と痩せたこともあいまって随分と楽しんだのだが……。

この一年で転職をきっかけにメンタルに不調をきたし、引きこもるようになってしまってからは体重も怒涛の勢いで増え、収入もなくなった。
既存の服は軒並み着れはするもののいささかサイズがきびしくなり、新しい服は増えず、タンスの中身はカラフルでちょっと小さい服で占められている。
それでも冬服でいる内はそこまで違和感を覚えることはなかった。秋冬の服はカラフルだけど比較的落ち着いた色に分類されるものだったからだ。

しかし季節は変わって春。
春色です! と主張する服たちと、寒暖さなどですぐに底辺まで落ち込むメンタル。
とても相性が悪かった。

引きこもってばかりでは体力が落ちるから外出しようと頑張って着替えた春色の服とは対照的に、心は真冬で吹雪いている。
出なければいけない、でも出る元気が足りない。
なけなしの元気を振り絞りたくとも、そもそも外出のために着替えた服の色味にも疲れて負ける始末。
しょぼくれたメンタルではカラフルな服に耐えられないのだった。

見た目だけは春に浮かれているのに、心はついていけてなくて、私にこの可愛い服たちはふさわしくないなぁ、なんて気持ちはやさぐれていく。

ああ、はやく元気になって、出来ればちょっと痩せて、似合う似合わないの前に、

私は私の好きな服を私のために着るのだ!

と、胸をはって歩ける日にたどり着きたいものである。

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