うたにすがる

窓硝子が
霧雨を湛えたまま
夜明けを遮っている
朝陽が色を抱えてくる

夜通し本を読むわけでもなく
人が作った歌を聞いていた

あの日の記憶を思い出す旋律

何故歌は思い出を吸い込んでいるのだろう
まだ聞けない歌
口ずさめない歌詞

私の中にあるものは音楽だけではないのに

砂浜の匂い、路地に反射した子どもの小さな影
渡り鳥の横たわる身体、裸体と星の名前
アパートの錆びた階段で浴びた風

とおくで
眠るあなたにも
まだ聴けないうたがあるだろうか

さよなら
その一言よりも
もっと
苦しくなるものが

空が夜明けをおいこしていく
青空になるために

霧雨は遥かな気化を
待ちながら


#詩 #twpoem #現代詩

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