雨の履歴

アスファルトに落ちた雨を
土の上に落ちた雨が呼んでいる
同じ夏の夜

空にあったものたちが
地上に集まる

誰かのいのちだったもの
一度だけ葉脈を伝ったことのあるもの
風にのったことのあるもの
海から山からきたもの
蛙の寝床だったもの
絡まる蔦を ほぐしてきたもの

人はいつからこの空から降るものを
雨と名付けたのだろう

私は今言葉を借り
にぎやかな音たちの中で
ひとり階段を上っている

肩に水滴
その中にある無数の旅を
片手で払えば
行方はもうわからない

降るということは
たぶん光

また次の夏の為の

#現代詩 #詩

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