見出し画像

Perspective というアルバムをリリースしました

2021年5月29日リリース。今作は現代アート的な作品なので、あえて解説を残します。

最近はサブスクの影響もあり、メジャーインディーズ問わずアルバムが単なる曲の詰め合わせと化している場合が多いようです。まあそれ自体決して悪いことではないのですが、やっぱり僕はコンセプチャルなアルバムが好きなので、今回もコンセプト縛りで曲を書いていきました。

結果として「分かりやすい」ものではないアルバムを作ったわけです。そこで、聴く前にもしくは聴いた後にでも読んでもらえれば少しは印象にプラスアルファを打ち込めるかも…と思いnoteに綴ります。

Perspective "視座"

アルバムのタイトルは「Perspective "視座"」。Perspectiveとは「ものの見方」や「視点」という意味ですが、もっと正確にニュアンスを訳すと「あなたがどういう種類の人か、またあなたがどういつ経験を積んだかによって影響される何かについての一つの考え方」といった感じ。つまり、「この作品はあなたがどういう人かによって聴こえ方が違いますよ(違うといいな)」といったところです。

タイトルの由来はいろいろですが、環境問題やコロナ禍、自分の中でのこれまでの常識がいかに無根拠であったかを突きつけられたこと、それによって物事の見方がガラッと変わったことがあって、そういった生活の中での歪みみたいなものが現れた音楽が自然とできたことが1番です。

また、禅も影響しています。

スクリーンショット 2021-05-28 9.52.37

ここ2年くらい、仕事で禅と深く関わりがあり、自ずと生活に取り入れるようになりました。禅とは内面探査。深く内証するような音楽にしたかったという思いもあります。

Contemplative(瞑想的)音楽だと感じた。
そこに何があるのかを聞く側が探しに行くような。
もしくは、忘れていた景色を探しに行くような時間にも思える。
聞くたびに新しい内観が生まれるようなそんな音楽だ。

両足院副住職の伊藤東凌さんにいただいたアルバムへのコメントです。

合わせて音響的な側面でも伏線があります。

多くの曲でノイズやフィールドレコーディングを使っており、いろんな角度からいろんな音が通り過ぎていきます。あくまで主旋律はピアノでありながら、人によって、それぞれの聴く環境や個性によって[主役]と感じる音が違い、結果的に違って聴こえる。つまり、聴く人によってこのアルバムが違って聴こえるようなことを期待しています。

さらに今作はほぼ全ての曲、3Dパンニングしています。LRだけじゃなく、前後左右の広がりを楽しむためにもぜひヘッドホンイヤホンで聴いてもらいたいと思っています。

何曲か解説します。

Plastics

MVをつくりました。アルバムの起点になった曲です。映像はharuki anamiさん。

安価で丈夫なつくりから、経済社会に欠かせなくなってずいぶん経ったプラスチック。しかし、環境問題への意識が高くなった途端にある種「害のあるもの」になってしまいます。

そんな「見方の変容」を表すモノとしてのテーマを持った曲です。

ところどころに微妙〜〜な不協和音を混ぜることで世界の歪みや混乱を僕なりにうまく表現できた気がしています。

あと、最近は低音にすごく惹かれていて、この曲はかなりこだわりました。3Dパンニングを最も細かく調整した曲でもあるのでぜひイヤホンで。

Monoha

生ピアノを近接と遠隔の2種類のマイキングで録音し、さらにソフトシンセのピアノの音も混ぜてつくった曲です。

縦のテンポもリズムもバラバラ。同期しないけどリズムを感じる音楽をテーマに書きました。

序盤にシュッてマッチを擦る音を入れて、それ合図にピアノが鳴り出すところが気に入っています。

Isolation

ノイズとピアノの曲。

中盤に入っている話し声のサンプリング元はBjorkの持続可能社会に関するインタビュー。

後半に歪んだピアノでアンビエントを作っており、これは坂本龍一が使っていた手法の真似です。すごくいい感じ。

MVは深夜のフェリーから撮った波。煙みたいで素敵だったのでただそれを映像に残しました。

Opposites and Essences

「モノ派」がテーマ。

モノ派とは現代芸術の表現の一つ。李禹煥ですね。

モノ派とは、物体を加工しないまま配置し、周囲との関係性を探る表現のあり方。以前直島の李禹煥美術館で見た世界観がすごく好きで心に残っていたことから、これをテーマにしました。

バイノーラルでの環境音を未加工のまま配置し、音の中に混ぜ込ませることで生まれる違和感や天然感を楽しんでもらいたい。環境音は息子がひとりで遊んでいるところの音。斜め後ろから聴こえるのがとても自然なのでぜひイヤホンで聴いてください。

Biopotential

佐賀の山奥で制作したサウンドインスタレーション「If : Expansion of natural phenomena」の音をリミックスした曲。唯一のインプロです。

『自然現象を使った音の出る装置』をテーマに植物の生体電位を音に変換し、水琴窟と合奏を行わせる。呼応する自然の音現象を人によって拡張させた実験的音楽映像作品。が、このIf : Expansion of natural phenomena。

森林が演奏する音楽です。

変容

ここ1stのsign以来、徐々に内省する音楽を傾倒しています。それには音としての "えぐみ" や "硬さ" が必要であり、結果としてただやさしいだけのアンビエントとは一線を画するものになってきました。

このアルバムは割と強めのメッセージ性を持っていると思っています。聴いて何を思うかは人それぞれと書いた通り、ぜひこれで内面探査してください。

音響含め、体験する音楽になっているはずです。

----

koji itoyama

別府在住の音楽家 / サウンドアーティスト
シネマティックなサウンドスケープで、郷愁を誘うムードの世界観を表現する。
これまで、広島県PR「カンパイ!広島県」のCM音楽、映画「Complicity / 優しい共犯」への楽曲提供をはじめ、平等院や金沢21世紀美術館など、寺社や美術館、ホテルの空間BGMやサウンドデザインも数多く手掛ける。
1stアルバム「sign」をアイスランドの名門レコードショップ
「12Tonar」にてリリース。
2ndアルバム「IKNOW」をHidden Vibes(キエフ)よりリリース。
2021年、植物の生体電位を使っ初のサウンドインスタレーション「If :Expansion of natural phenomena」を発表。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?