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赤星香一郎短編集

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お仕事の合間にちょこっと休憩しませんか?
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#短編小説

静かにしろ

 博多着の東海道新幹線「のぞみ」が東京駅から出発するのは朝九時のことだった。  その日、村山は大阪で大切な仕事があった。彼は本社渋谷区のIT会社に勤めるエンジニアである。  一ヶ月前、部長の上野が村山に言った。 「村山君、新製品の説明をするために、大阪に出張してもらえるかな?」  村山は新製品開発チームのプロジェクトリーダーだった。そのため大阪支社の人間に、完成間近の新製品を説明する必要があった。  平日の朝なら新幹線も混んでいない。わざわざ指定席にしなくても、少し早めに1号

はないちもんめの謎

 「はないちもんめ」、なんと懐かしい言葉であろうか。  この言葉を聞いて、和やかな、ほのぼのとした印象を持つのは、筆者だけではあるまい。  諸君は幼少の頃、この「はないちもんめ」で遊んだことがあるだろうか。誰でも知っているこの遊戯、むしろ遊んだことのない人のほうが珍しいのではないだろうか。  「はないちもんめ」とは、数人で二つの集団になり、欲しい子を指名して、仲間を増やしていくという、原始的ではあるが、意外に奥の深い遊戯である。  筆者も子供の頃には、よくこの遊戯をして遊んだ