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カーボンナノチューブに光を

よりミクロな技術、いわゆる「ナノテクノロジー」が様々な分野で注目されていますが、理化学研究所から、興味深い研究発表がありました。

要は、
カーボンナノチューブに新しい技法で発光させる仕組みを開発した
という話です。

カーボンナノチューブとは、炭素のみで構成されている直径がナノメートルサイズの円筒(チューブ)状の物質です。
世界的に応用が期待されていますが、元々は日本の科学者が発明しました。(やや諸説あり)

基本的には六角形(ベンゼン構造)の組み合わせることで、単層や入れ子構造(複層)とあります。
同じく炭素原子の6角形を組み合わせた物質に、フラーレン(炭素原子約60個でサッカーボール状)、グラフェン(丸まっていない平面状態)があり、それぞれノーベル賞を受賞済みです。(つまりカーボンナノチューブも期待できます☺)

カーボンナノチューブはその組み合わせ方でいくつか種類があり、上記Wiki内にも下記のような多様な美しい構造が載っています。

出所:上記Wiki

髪の毛の5万分の1の細さでありながら、強固な化学結合で頑丈な性質を備えています。
しかも密度が1.0∼1.3g/㎤(アルミニウムの約半分!)でと非常に軽いにもかかわらず、強度が鋼の約20倍(!)になります。
また、銅の1000倍以上という高い電流密度耐性があり、さらに銅よりも高い熱伝導性を備えています。

いいことづくめの無敵な物質に聞こえますが、まだ目的に応じた長いものを作る量産化はこれからという段階です。

用途には、「宇宙エレベーター」という面白いものもあるので、ぜひこれからの期待を寄せたいです。

そんな未来の素材(ナノマテリアルと総称されます)ですが、そこに量子欠陥と呼ばれる発光体を技術的に植え付けたのが今回の成果です。

量子欠陥という言い回しがピンとこないと思いますが、要はこの6角形で出来た構造内に、同じく六角形で出来たベンゼン分子を引っ付けて合成させて欠陥を意図的に創ります。

なぜそんなことをするかというと、このベンゼン分子が発光するため、カーボンナノチューブを使った発光材料への挑戦です。

今までは溶液上でしか実現できなかったのが、それが不要でかつ室温でも可能なやりかたで(気相化学反応法)従来より高精度な発光を実現しました。

そもそもなぜ発光させる必要があるのか?

上記で触れたとおり、カーボンナノチューブは薄くて丈夫で電気も通す未来の材料です。
今後の工学的なブレークスルーで量産が進めば、多彩な用途で期待が出来ます。
それは単純に任意の色で発光させるという装飾的なものだけでなく、今回の基礎研究が進むと発光を使った「光通信」手段としても期待が高まります。

もう少し未来を想像すると、どんなミクロな物質でも光でやり取りが出来るインターネットと異なる新しいコミュニケーションが実現するかもしれません。

材料科学は無機物のナノ化もそうですし、有機物、もう少し飛躍すると生命科学の技法とも組み合わせることで、新しい局面を迎えています。

ぜひ今後も、分野をまたがった今回のようなユニークな研究は目を光らせていきたいと思います。

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