見出し画像

【書評】中野耕太郎『20世紀アメリカの夢』--キッシンジャー大活躍

 ヘンリー・キッシンジャーと会ったことがある。ベトナム戦争の時代、ニクソン政権やフォード政権で国務長官などを歴任し、ベトナム和平協定など外交官として活躍してノーベル平和賞まで取った、究極の有名人だ。
 すいません。ちょっと嘘ついてました。会ったのではない。ごくごく至近距離で見ただけだ。10年ほど前だろうか。大学で何やらのパーティーがあって、そこにキッシンジャーが姿を現したのだ。むっちゃくちゃ大物っぽい雰囲気で、ちょっと油断していたら、挨拶した女性教員の肩をいきなり抱いたりして、なんじゃこの押しの強いおっさんは、と思ったの覚えている。
 その時はキッシンジャーって名前を聞いたことがあるが、何をした人かはいまいちわかっていなかったので、後で調べて驚いた。でもまぁ、結局は普通のおじさんだよね。
 さて、中野耕太郎著のこの本には、1900年ぐらいから70年間のアメリカの歩みがまとめてある。ギュッと詰まっているし、記述もわかりやすく、めちゃくちゃ勉強になる。
 こういう人の授業に学生時代出ていたら、もっとアメリカの歴史がわかったのにねーと思うが、後の祭り。新書で読めるだけでラッキーだ。
 この本には例のキッシンジャーも出てくる。それまでは理想主義的だったアメリカの外交戦略だが、ヨーロッパの勢力均衡論が染み付いていたキッシンジャーは、より現実を見る外交へとアメリカの方向を転換した、と書いてある。
 なるほどね。そうじゃないとベトナム戦争を終わらせたり、中国と国交を回復したりはできないわけだ。
 他にも、20世紀最初の60年で南部の黒人が600万人も北部や西部の町に移住したとか、健康保険であるメディケイドとメディケアを制度化したのはジョンソン大統領だとか、いろいろ知らなかったことが書いてある。
 こういう本を読むのは筋トレみたいなもので、アメリカに関する知識の基礎体力をつける上では一番いいんじゃないかあ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?