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オンライン講座でカーヴァーの「自転車・筋肉・煙草」を読みました

 4月19日水曜日の夜7時半から、NHK文化センターのオンライン講座「英語で読みたい!アメリカ文学」にて、レイモンド・カーヴァーの短篇「自転車・筋肉・煙草」を読みました。
 語り手であるお父さんが息子の友達に呼ばれて家まで行くと、何やら不穏な雰囲気です。聞けば、息子が他の2人の友人と借りた自転車が無くなったらしい。しかもさんざん自転車を壊してしまってもいるらしいとわかり、誰が弁償するかみたいな話になります。
 すると、退役軍人風な別のこのお父さんが、自分の息子以外のせいだ、と言い出し、なんだかんだで語り手のお父さんはこの退役軍人と格闘にまで発展します。
 家に帰ったあと、亡くなった祖父について息子が訊ねます。僕がお父さんを愛してるぐらいお父さんはおじいちゃんを愛してたの。僕と同い年だった頃のお父さんにはもう会えないんだね、それが寂しい。こんなことを9歳の息子が言うんですけど、なんだか読んでいて涙が出てきました。
 最後は寝室のドアを開けておいて、とお父さんは息子に言われるのですがちょっと考えてから、半分だけ閉めて出て行きます。
 いかにもカーヴァーらしく、シンプルな言葉で日常的なことが語られてるだけなんですけど、ものすごく深くて、心が揺さぶられる作品です。この短篇について、今回もとても多様な意見が出ました。
 ドアを半分開けておく、というのは、息子が子供と大人の間に差し掛かったことを表している。お父さんが煙草をやめるのは、徐々にマッチョ主義が薄らいでいた時代を指し示している。会議を子供のお母さんが仕切っているのも時代の変化だろう。
 あるいは、子供が大人に気を使っているところが重要だ。お父さんが禁煙2日目でイライラしていて格闘してしまうというのが大事だろうなど。
 NHK文化センターの講座では僕が思いつかない意見が受講生からどんどん出るのですが、この日もとても楽しかったです。
 そして何より、受講生の皆さんによる最初の自己紹介が素晴らしかった。この講座に出ることで好きだと思える作品がどんどん増えたとか、自分で選んでいたら決して読まなかった作品に出会えたとか、まさか自分が英語で小説を楽しめるようになれるとは思わなかった、など、ものすごくポジティブな変化をたくさん言ってくださいました。
 僕はとてもいい人たちに囲まれているんだなぁ、と感謝の気持ちでいっぱいになりました。皆さんどうもありがとうございます。

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