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米国の次の一手で、米中摩擦の安全地帯は明白になるのか?

米中は、トランプ前政権(共和党)時代に、対中制裁関税が賦課されたことを機に貿易摩擦が先鋭化しました。バイデン政権(民主党)に代わる際、賦課は解除されるとの期待がありましたが、見送られ、摩擦の解消には至らず、むしろ先鋭化している感があります。

しかしながら、米国でにわかに、制裁関税の賦課を解除しようという機運が高まっています。背景にあるのは米国で高進するインフレです。ガソリン高が効いていることは論を待ちません。これまでは、米国内のシェールオイルを増産すれば、そういう事態には陥りませんでした。今回もシェール増産に動いていますが、この3カ月の国際情勢による市場の不安定を落ち着かせるには至っていません。


さらに、人手不足によるサービス分野の価格高進も悩ましい問題です。日本よりずっと人口動態は健全ですが、それでも高齢化の進展は指摘されています。


このインフレ解消策として、対中輸入の制裁関税賦課の解除が一躍買うという訳です。無論、「経済安保」の観点から、解除すべきでないというタカ派と、解除すべきというハト派で、せめぎあいは続いています。FRBは物価を安定させたいでしょうし、財務省などは関税収入の問題も出てくるでしょう、USTRなどは不公正貿易の是正には至っていないと慎重姿勢です。国務省や国防省は、対外的には強い米国の姿勢を示したいのでしょう。これらの力関係によりますので、一筋縄ではいきません。

それでも、日用品の太宗は基本的には「経済安保」とは無関ですので、比較的近いうちに解除になると私は考えています。その解除範囲はじわりと広がりますが、制裁が残る部分もでてきます。

その解除の順序、課程が非常に重要です。経済安保との関係が希薄なほど、解除が早く、濃厚なほど解除は遅くなります。その過程で、どこが要注意分野か、白黒の淵が見えてくるはずです。

制裁関税品門は多岐にわたりますので、自社・自業界関連については、再度確認することをお勧めします。

米中摩擦は、白黒がはっきりしないことが問題となっていました。そもそも、トランプ時代は、自国の雇用を奪われているという側面が強く、白も黒もなく灰色なものはいずれも黒という米国の姿勢がうかがえました。バイデン政権になって、機微分野への対応が厳しさを増したことで、黒色がかなり見えてきましたが、制裁関税が続いたことで白い部分は見えにくくなっていました。

米国発インフレは、決して経済事象としては望ましいことではありません。米国の利上げは、利上げについていけないアジア新興国にとっては、資本流出を招く脅威です。それでも、白い部分が明白に見えてくれば、これは、アジア太平洋地域の自由貿易拡大には朗報な面はあります。

白黒の縁取りで、白と黒の縁取りの可愛い珍獣の姿が浮かび上がれば、自由貿易の火は繋がれますので、制裁関税賦課の段階的な削除に踏み出す米国の英断が期待されます。

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