見出し画像

アジアのサプライチェーンはどうなる(6)共通の価値観とは何か?

物価高と円安が、じわじわと市民生活の重石となってきています。
考えたくありませんが、1ドル=150円、ガソリン1L=200円という見方も、まだかなり少数派ではありますが、出てきてはいます。

いわゆるコストプッシュインフレであり、デマンドプルよりも政策対策は難しいとされています。エネルギー価格は、世界的な景気低迷懸念から需要が弱まるとの思惑で、頭打ちになっているのは朗報ですが、ウクライナ・ロシアから穀物が輸出される目途は立っておらず、7月と9月の米国FOMCで日米の金利差が3%超になると、円高に回復する余地はさらに見えなくなります。参議院選に向けて、安保もありますが、まずは、物価対策は待ったなしという点が、最大の注目的になりそうです。

さて、サプライチェーン問題に話を戻すと、基本的に、大きな問題になるのは半導体、クラウド、バッテリー、先端医療などのいわゆる機微分野という私の前提は変わりません。

近いうちに施行される、日本の経済安保推進法もまた、当該分野のサプライチェーンを網羅し、時と場合によっては監視を強めるものと考えてよいでしょう。

米国議会の動きと、日本政府の対応を慎重にウォッチすれば、「経済安保」を企業レベルの「経営安保」に落とし込んだ際の回避策はみえてきます。

他方で、非機微分野は問題ないのか・・・というと、問題になってきているのが、ビジネスと人権です。例えば、アジアの軍政への資金還流阻止、野党の理不尽な解党、少数民族抑圧などの疑義などへの制裁は、主に繊維製品というハイテク・先端分野ではない非機微分野が該当することになります。

人権問題において、米欧の主張は、民主主義、人権保護などで「共通の価値観」の有無が、サプライチェーンの構築上も重要だと言っているように受け取れます。問題はこの「共通の価値観」ですが、果たして、日本は米欧と共有しているのか・・・という点になります。

アジア諸国は、米欧の主張を受け入れる国も一部ありますが、戸惑いを覚えているケースは少なくありません。というのは、「アジア的な価値観≒権威主義的」と「米欧的な価値観≒市民主義的」は、そもそも、民主主義、人権保護などで、権利の範囲への理解が大きく異なるためです。価値観には、キリスト教的世界観というものも内包されるのではないでしょうか。また、米欧(特に米国、多国が密集する欧州は必ずしもそうは言えないでしょうが)流で白黒をつけるのとアジア流で曖昧さを残すのも、相当な差があります。

私は、日本が米欧と完璧なまでに同じ「共通の価値観」を持っているとは思えません。相当程度共通なのは間違いありませんが、歴史・伝統的にアジア的な部分を残してるのが日本の価値観のように思えます。

そのため、日本企業の対応もまた、「ビジネスと人権」では厳格さや一環さを欠き、この点、米欧の圧力を受け易いともいえるでしょう。そのため、米欧だけではなく、国連人権理事会(UNHRC)などが問題ありと指摘しているものは、細心の注意を払っておくしかありません。

機微分野は元より、非機微分野においてビジネスと人権の視座で気を付けるべきである。米国との競合の有無で生産移管を考えるのもよいが、あくまで中道を貫くかどうか生産移管を考えるのがよいのではないか、というのが、私の現時点での小括です。

本件は、より肉付けをして深耕していく所存です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?