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ビジネスと人権がもたらすサプライチェーンへの圧力

いきなり大きなテーマで恐縮ですが、どうやら看過できないテーマとなりつつあるようです。ドイツではサプライチェーンのデューデリジェンスの法制化が決まるなど、欧州主導で進んでいますが、サプライチェーンの監視を強める潮流が世界レベルで強まることになるかもしれません。

私の尊敬する中尾武彦前ADB総裁が、当該テーマで対談されていますので、ご参照下さい。日本はまだ法制化には至らないも、欧州および米国が主導する潮流とは、国益を慎重に加味しつつベクトルは基本的に合わせていく様子が、詳細に議論されています。

ただし、何がセーフで何がアウトか、漫然としている感は否めません。これまで、日本企業は、プラザ合意や東日本大震災直後など、円高の度にコスト低減を求めて海外生産を重ねてきたのは事実です。コスト低減を求めることはこれまでは経営的にも、人権的にもセーフだった訳ですが、あまり過度になるとアウトという風にも捉えられます。欧州のように、サプライチェーンのデューデリジェンスの法制化が進むと、欧州企業との取引によって思わぬ飛び火が起きることも覚悟せねばならなくなります。

他方で、SDGs的な観点からは、目標10「人と国の不平等をなくそう」は、賛同を得られるのではないでしょうか。こちらは2030年に向けた努力目標ですが、持続可能な成長の重要性は、世界が受け入れやすいテーマです。あまり難しく考えすぎる必要はないのかもしれず、コーヒーチェーンや、スーパーチェーンなどで、最近、生産者の顔や生活が見えるようなディスプレイが増えてきました。公平な貿易取引、いわゆるフェアトレードの考え方であり、それがより広範囲に広がっていると理解すればよさそうです。

民主主義国家と権威主義国家では、ビジネスと人権のスタンスは大きく違ってきます。そういう場合でも、持続可能な成長については共通ゴールのはずです。欧州発で、米国が乗ってきた感が強いこの議論、アジアはさもすれば受け身になってしまい易い気がしますが、アジアはまさにサプライチェーンの世界の中軸であり、人権スタンスの違いはどうしても免れないもSDGsのゴールをぶれのないものにすることで摩擦をできる限り中和することが肝要なように思われます。




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