正欲を読んで

正欲を読んで

多様性。今の世間に溢れていて、いろんな価値観を共有してみんなすみよく理解し合おうという意味合いで使われる印象だった。
しかし、この本を読んで逆に多様性という言葉によって苦しむ、一般的に、社会的に、理解されない性的趣味嗜好を持つものの存在についてはっとさせられた。
多様性というのは、いつでも多数派の社会通念に近い人たちだ。多様性多様性というわりに、理解できない領域になると弾圧しろ、隔離しろと自分と異なるものの存在を排斥しようとする。多様性を受け入れるとは、器の広いように見せるある意味カッコ付けのような言葉に思える。
検事として正義のために自分の感情も押し殺し、端的に物事を見続ける男また、子供が不登校になり一般既定路線にもどしたいとおもう男と葛藤する不登校の子供および、妻。
 水に対して性的嗜好を感じ、学生時代から自分は変人、外に出せない葛藤と戦ってきた男女2人。
 同じように水に対して性欲を抱くイケメンダンスサークルの男。 
 引きこもりになってしまった兄が現役女子高生のAVをみており、自分に対して性的な目で見られていることを自覚し、それから男性不審になってしまった女性。
 それぞれが自分の価値観や欲求に対して葛藤している中で、それぞれの正欲という自分の中の信念や理念を自分の中で、時には他の人とぶつけ合って社会は成り立っていることを強く理解させられた。
 では、自分はどうなのだろうと白羽の矢が立つ。ある意味、衝突を恐れて、うまい具合に発言を擦り合わせて、多様性というなの社会通念として不都合がないようにこの社会を生きていることを実感させられた。この物語に出てくる人物一人一人には確たる自分の像があるが、自分は社会に擦りよりトラブルこそないものの何者なのだろうかと幸せな状況ながらも問いが立ちモヤモヤする。
 あとがきでも書いてくださっていたが、正欲をぶつけ合う、話し合うことで理解しあえないまでもお互いの領域を把握することや、異なるものがあるという事実を理解することはできる。その中で自分と他者との境界線を領域を押し合うが如く広げていくことが生きやすさにつながるのだと感じた。

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