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:妄想歳時記:桜之宮で、間悪う魅いられた

造幣局の「桜の通り抜け」より少し前、
桜之宮の大川ぞいは、花見の宴で遅くまで明るい。
満開の桜に誘われ、夕方から呑み始めると、
花曇りの空は、だんだん深い色に移る。

昼と夜が入れ替わる逢魔(おうま)が時に、
ふと見上げた桜は、群青を背景に白く透きとおる。
無数の花びらが悪悪(わるわる)う冴えわたり、
ゾッとするほど妖しく美しい。

もちろん樹の下に何かが埋まっているはずもなく、
ただ光の加減と空気の密度、見える角度で姿は変わる。
それも一時のこと。
夜も更ければ、まだ肌寒く
知人は、ぼつぼつ一人減り二人減り。
問悪(まぁわる)う、ずるずる過ごしていると
いつの間にやら灯も消えている。

その時、一筋の風が花びらを散らして吹き抜け、
気付くと、嘘のように周りにはだれも居ない。
ああ恐ッ、と酔いも覚めた瞬間、
すでにウイルスに魅いられ、鼻風邪をひいた。

月刊誌「大阪人」/2009年3月号 掲載
おおさか絵暦
イラストレーション&文⚫︎中田弘司

発行:大阪都市工学情報センター




今年は、まだ寒いがもうすぐ桜も咲き始める。満開はほんの一時の事。
昔は、仕事先の人たちに誘われ花見もあったが、不景気があり、コロナもあり、すっかりそんな呑み方はしていない。寂しいのか、スッキリしたのかわからないが、懐かしい事だけは確かです。

毛馬桜之宮公園、桜の時期は昼間に歩くだけも値打ちがある。




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