日記 2023年2月4日

 すこし寝坊し、昼近くに起床する。朝食の後に家の中を掃除。一息ついたのちに、妻とともに永福町方面へ出かける。図書館に行ってみたいとのことなので、その周辺のお店にも行くことに。

 永福町の駅近くにある、昨年オープンしたばかりのイタリアパンのお店に入る。落ち着いた雰囲気の洒落た店だ。チョコレートクリームと通常のクリームの入ったドーナツパン、ミートソースのようなものがたっぷりかかったパン、宝石のような、緑色と赤色のゼリーが乗った小さなクッキー、チョコレートが塗られた細長い形状のクッキーを買う。他のパンも美味しそうだったので、また来てみようと思う。

 図書館に着き、妻が借りる本を選んでいる間、僕は椅子に座り『百年の孤独』の続きを読む。フロアの中にはいくつも勉強用のスペースがあり、満席であった。中高生が背中を丸めて真剣に勉強している。僕が同い年のころ、休日に図書館で勉強するなどという考えは全くなかった。では何をしていたのかと言うと、なかなか思い出せない。高校生の頃はアルバイトをしていたのだが、中学生の頃は何をしていたのだろう。多分、自転車に乗って学区から離れたところにある書店に行って、エロ本でも立ち読みしていたのだろう。何となく、たんぼ道の彼方に落ちていく燃えるような夕陽を見ながら、自転車を漕いでいる風景の記憶がある。

 図書館を出て、珈琲豆を買いに、井ノ頭通り沿いにある、焙煎をしている珈琲豆店へ。店主の方に質問をすると、予想している以上の返答があり、この人は珈琲が本当に好きなのだということが伝わってくる。たとえ自分が詳しくないジャンルでも、何かを偏愛している人の話を聞くのは面白いものだ。またここで珈琲豆を買おうと思う。

 家に戻り、パンと食べながら珈琲を飲む。どちらもとても美味しく、嬉しい気分になる。しばらくの間『百円の孤独』を読み、ついに読了する。長篇を読み切ったときに達成感を噛みしめる。なぜ今まで読まなかったのだろう。大好きな一冊として自分に刻まれた気がする。リアリティの逸脱の仕方が幻想小説よりもナチュラルで素晴らしい。

 夜はとても久しぶりに『ソナチネ』を鑑賞。この頃の北野武は、画面がめちゃくちゃ決まってる。すごい。海辺のシーンは本当に大好きだなと再確認。楽園にいるような幸福感と、この時間はすぐに終わりが来るという諦めのような感情が、夏の空と花火に集約され、なんというか、胸にせまる。あと、全編通じて、武のニヒリスティックな表情が怖い。底なしの虚無は死と破壊によってしか埋められないのだ。

 嬉しいメールが届いていて、思わずにこにこしてしまう。3月が楽しみ。


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