日記 2023年2月10日

 朝、起床してカーテンを開けると灰のような細かな雪が降っている。すでに隣の家の屋根には薄く雪が積もっていて、昼頃には道路にもそこそこ積もっているのでは、と思う。妻はそれでも自転車でバイトに行くと言っているので心配するが、結局バイトは休みになり、ホッとする。

 夜、仕事を終えて窓の外を見ると、雪は止んでいる。打ち合わせばかりで殆ど雪景色を見れておらず、少し悲しい気持ちに。妻が作った夕食の炒め物が美味しく、夢中になって食べたら悲しい気持ちが吹っ飛ぶ。
 お茶を飲みつつ今日から配信が始まる『こちらあみ子』の映画を鑑賞。小説に忠実に作られているが、映画化にあたり脚色している部分がことごとく良い。原作は三人称の小説なのでやや俯瞰的な視座であるが、映画は基本的に主人公あみ子の視点であり、一人称的な演出。さらに、ファンタジックと言っても良いシーンが追加されていて、それが子供の世界観と相性がとても良い。映画『フランケンシュタイン』が挿入されるのは、『ミツバチのささやき』を想起させるという意見があるが、個人的にはフランケンシュタインの怪物とあみ子の近似性を表現したかったのではないかな、と思う。善悪の区別がなく、無垢とも言える眼差しで世界を見ているという意味で共通しているのだ。そして、ラストシーンは『大人は判ってくれない』のオマージュとも言えるカットで終わる。ただひたすら感動。

 原作の小説に関しても、『こちらあみ子』以外の短篇も読了。個人的には『ピクニック』がもっとも心に残る。何かを一途に愛することは、とても生きにくいことにもなってしまう。幻想を信じて生きることは、時として人から蔑まれ、笑われることもある。でも、たとえ虚構だとしてもその人にとって真実であれば、それで良いじゃないいか、というテリー・ギリアムの映画のようなメッセージを感じる。

 自分なぞが、生きにくい世界だなと思うのは甘えだとは思うが、最近、ちょっとした生きにくさを感じる場面がある。それでも、もがきながらなんとかやっていくしかない。だってこの世界で生きていくしかないのだから。

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