思い出の神ゲー『峠MAX2』と没データの話
PS1(初代プレステ)で1998年に発売された『峠MAX2』というレースゲームが大好きで、レースゲー大好きキッズだったあの頃から20年以上が経った今でもたまに引っ張り出して遊んでいる。
ほどよくデフォルメされた車や路面・背景のモデリングも見事だし、ゲーム的で爽快感がありつつも決してイイカゲンではなく説得力のある挙動は、コースを変え車を変えいつまでも走っていたいという気分にさせてくれた。
峠シリーズおなじみのタイマンバトルに挑むKING BATTLEモードのほか、ドリキンこと土屋圭市氏がレクチャーしてくれるSCHOOLモード、バキュームカーで峠を爆走したり暴走ロボットを体当たりで破壊したりとはっちゃけたシナリオが体験できるSTORYモードなど、単に車で走るだけと思わせないバラエティ豊かな楽しみ方が用意されている。
一方で自分はゲームの没データ※1 に目が無く、天下の『TCRF』※2 を中心に様々なゲームの没データを見て回る、というのが一時期の日課となっていた。
※1 通常のゲームプレイでは見ることができない画像や音声、武器防具やセリフなど。有名どころではポケモン赤緑のオーキドせんせいとか
※2 The Cutting Room Floor。いわば没データ総合Wikiで古今東西あらゆるゲームの没データが網羅されている
https://tcrf.net/The_Cutting_Room_Floor
こうなると必然「自分が持ってるソフトにも没データが眠っているのでは!?」ということに期待するわけだが、自前の解析ツールを用いてうんぬんといった知識と技術を持ち合わせているわけもないので、せいぜいゲームディスクをPCで読み込んでみて『PSound』で音声、『Tim Collection』で画像のめぼしいデータが無いか見てみるというささやかな没データ探しにいそしんでいたわけだが、
ある日「そういえばまだ見てなかったな」と冒頭の『峠MAX2』を読み込んでみたところ、キャラの顔グラや背景、SCHOOLモードで表示される一枚絵など様々な画像たちに混じって、見覚えがありそうで全然無い画像ファイルが飛び出してきた。お望みの没データである。
正確に言えばこの「戦車を操作する」という案がまるごと没というわけではなく、戦車自体はSTORYモードに登場して搭乗も出来る。
そして本編の流れはというと「ゴジラ的な怪獣が海から現れ大パニックの中、自衛隊が乗り捨てた戦車を見つけた主人公が首都高を爆走して港に向かう」という設定のタイムアタックとなっている。
(改めて書くとめちゃくちゃバカゲーみたいに思えてきたな)
ゲーム内での戦車は「シフトチェンジで砲塔が回る」というおちゃめ要素はあるものの「それなりに走れるけどやたらデカくて取り回しが悪い車」という、同作の並み居るネタ車※3 と比べると若干インパクトには欠ける立ち位置となっている。
しかし先程の没画像を見てみると、操作説明の一枚絵ではっきりと「アクセル…射撃」と実際に砲撃が可能であることが書かれている。
(ちなみにイラストの2人はSTORYモードの主人公とそのガールフレンド)
もう1つ注目したい点としては「アクセル」にあたるボタンがあるのに加速減速がわざわざ方向キーの上下に割り当てられていること。
さすがに製品版の戦車のスピードでその操作を要求されるとやりづらいことこの上無いので、おそらく開発段階では「製品版よりずっと遅い戦車を操作し、怪獣に砲撃を食らわせる」という戦車ゲーさながら(?)の内容だったと思われる。
シフトチェンジ(L2・R2)で砲塔が回るのは本来の旋回操作の名残とみて間違いないはず……
思えばSTORYモードはバキュームカーがドリフトするごとに減っていく謎のゲージ(キッズ俺はドリフトするごとに路上に撒き散らされていると思ってゲラゲラ笑っていた)や、軒先で手を挙げているところにデリバリーバイクで盛大に突っ込めばピザを届けたことになるピザ宅配ミッションのお客様 ※4など特別に用意されたギミックがシュールな笑いを誘う中で、件の戦車ミッションだけは「首都高モチーフのコースの一部をタイムアタックして規定の秒数以下ならクリア」という不自然なほどにシンプルなものとなっていた。
裏事情を知った今なら予測がつくが、元々は怪獣への砲撃がメインのトンデモミッションだった予定が工数の関係か開発途中で戦闘部分がオミットされ、結果的にやたらと速く走れる戦車だけがゲーム中に残された、ということになるだろう。
※3 走り出したら止まらないうえなぜか登り坂でも加速するトロッコ、バカみたいな加速とクイックすぎるステアリングで腕と首を回しながら疾走するロボットカー、アクセル操作がボタン連打に変わり壁にぶつかると情けなく鳴く羊など
※4 直立不動のままTHANK YOU!!とか言ってくれる。強い
ちなみにこの峠MAX2の没データ、自分が調べた限りでは現時点でTCRF含めネット上のどこにも情報が載っていない。
まさか思い出のゲームにこんなオイシイ没データが眠っているとは思わなかったし、開発スタッフの工夫と遊び心を感じてこのゲームがより好きになるのだった。
書いた人:こいつ( https://x.com/koitsu511 )
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【おまけ】
類似の没画像としてロボットカーを入手した際に表示される予定だったものも発見。
ロボットの外観、シフトとステアリング操作が独特なボタン配置になっている点、車種名が微妙に異なっている点※5 が製品版との違い。
(製品版ではロボットカー含めSTORYで車を入手した際に一枚絵は表示されない)
※5 製品版では「4WD.ROBO」。トレノっぽい車はFR.TREN、NSXみたいな車はMR.NXSのように駆動形式が頭に付く。ちなみに上記の羊は4LD.SHEP
【おまけのおまけ】
土屋圭市氏のWikipediaで峠MAX2監修が全く触れられてなくて泣いた。
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