ベースを取る

1週間ほどドタバタしてしまっておりました。

最近、社内外で色々と深い話をする機会が多いです。

人生観だったり、キャリアだったり、家庭のこと、仕事に対する考え、等等。

新しいライフスタイルに向けて、文字通り過渡期にあるので、大きな決断をする時には、色んな人の意思がぶつかり合うものなのだな、と肌で感じています。

青木信也選手と幻冬社の編集者をされている箕輪さんがNewsPicksアカデミアの企画で対談をされた際、青木選手が「人生の主導権を他人に握らせない」ということを話されていたのですが、その言葉がとても印象に残っています。

「軸」とか、「自分が大事にすること」とか、「優先順位」みたいな言葉にも置き換えられるかも知れません。体調を崩して会社を休んだ時のことを思い返してみても、結局は「人生の主導権」を他人に握らせすぎた結果、振り回されて「目が回った」のが原因だったのだろう、と今にして思います。

元来、僕は「吸収力がある」点が長所、といわれて育ってきた反面、「人の影響を受けやすい」タイプの人間とも言い換えられます。だから、主導権を常に自分に置くよう意識しておかないと、折角たくさんの人から「綺麗な色の絵の具」を沢山もらったのに、それを片っ端からキャンバスに塗ってしまって、結局何色か分からなくなってしまうのでしょう。

趣味にしているブラジリアン柔術でも、「ベースを取る」という言葉が多用されます。これは、「自分の重心が安定した姿勢を取る」という意味で、重心が安定しない姿勢では、攻撃も防御もままならないことから、柔術の基本とされる考え方です。なんとなく、「人生の主導権」と似てますね。

さて、前置きが長くなりましたが、「心配のネジを外した男」の話へ。

営業部に所属した親父。思ったような結果が出せず、フラストレーションは溜まる一方でした。

周りの上司や先輩は、電話帳片手に片っ端から電話をかけ、なんとかアポが取れれば営業をかけ、契約が取れたら、また次の契約を取る為に電話をかけ。契約が取れなくても、また次の顧客を獲得する為に電話をかけ。

親父も、勿論同じように営業をかけまくっていたそうですが、はっきり言って「面白くない」と感じていたそうです。「結果を出さなくては」という思いが人一倍強い人間だったので、中々結果に繋がらない仕事のやり方に、ストレスを感じていたようです。

ここで、親父はある一つの工夫をした、と言っています。

「もっと楽して契約を取る方法は無いか」。

ようは、「契約を取ること」が大事なのであって、「たくさん電話をかけたやつが偉い」わけではない。皆がやっているやり方と同じことをしていたのでは、同じような結果しかでないし、何より面白くない。

だから、親父はそこから上司達から教わった方法を無視して、「どうやったらもっと楽に契約が取れるか」を考えたそうです。当然、周囲の人間からは批判されたのでしょうが、そこは「主導権が常に自分にある」親父のことなので、気にもとめなかったとか。

元々、新入社員時代、算盤が使えない親父に対して上司が「算盤ぐらい使えるように練習しろ」と注意していたそうですが、「もうすぐ自動計算機というものが一般に出てくるはずだから、今から算盤なんか練習したって意味が無い」といって、結局最後まで算盤は使わなかった、というエピソードを持っている人間なので。

(その後、ほどなくしてホントに電卓が普及したのだとか)

「楽して結果を出したい」という考えを持った親父がたどり着いた結論は、「単発発注」ではなく、一度契約が取れたら「継続して発注してくれるような契約」を結べる企業を探す、というものでした。

言われてみれば当たり前のことなのですが、単発の小口受注をたくさん取ってくるより、大口の受注を継続して発注してもらえるような顧客を探す方が、効率が良いに決まっています。ただ、たまたま周りの人間がそういった仕事の取り方をしていなかったがために、社内の気付きが足りなかったようです。

それに気づいた親父は、幸運にも自宅からほど近くの街にある、新進気鋭の機械メーカーを探し当て、以後その企業の窓口として、契約を取り続け、文字通り「楽して」結果を出す、という作戦を成功させたのでした。

ちなみに更に幸運なことに、実はその機械メーカーが世界的にも有名な企業の日本法人で、その後トントン拍子に会社の規模が大きくなってくれたこと、且つ、メーカー側が担当者としての親父を気に入ってくれたお陰で、上司よりも親父と話がしたいと指名を入れ続けてくれたこともあり、営業部でもトップの結果を出し続けることができたそうでした。

親父はこの時のことを、「ほとんど運が良かっただけ」と言っていましたが、唯一「人と違うやり方で『もっと楽して結果を出そう』と考えたのは、今にして思えばターニングポイントだった」と、昔を振り返っています。

周りの人から色々なアドバイスを受けることは、とても環境に恵まれている証拠だし、アドバイスをしてくれる人がいる、ということも、その人の人徳の結果であり、財産であることはまぎれも無い事実です。

ただ、それ以上に「何を大事に考えるか」、「自分がそれに対してどうしたいか」が無ければ、かつての僕のように「人に振り回される」人生を送ってしまうのでしょう。

「自分の人生の主導権を他人に握らせない」

「自分の主導権を握らせようとする人からの批判を恐れない」

これも、一つの「心配のネジを外した」幸せに生きるコツなのかも知れません。



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