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我々の取組をモデルにした映画「こいのわ~婚活クルージング」の公開

インパクト重視の婚活イベントを知った映画製作会社からまさかの映画化の打診があった。なし崩し的に映画化の話しが進んでいき、これまでに我々が取り組んできた婚活イベントの集大成と言えるような映画が完成し、全国で公開されることとなった。


我々の婚活の取組が映画に!

映画化の打診は断っていた

取組を開始した初期は、メディアへの露出による我々の取組の認知度の向上と婚活会員の増加を狙い、インパクのある婚活イベントを中心に実施してきた。数多くの有名人を起用し、首都圏メディアでの露出も増えていた。こうした中、突然届いたのが映画化の話しであった。

広報プロモーションを委託していた広告代理店に東京の映画制作会社から連絡が入った。瀬戸内海を舞台にした婚活映画を製作することを考えているので、そちらの取組を参考にさせてもらえないかというものであった。

広告代理店からは、すごいことなので前向きに考えましょうと言われたが、映画ともなれば何億円もの予算が発生し、さらにプロモーション経費の予算も必要と言われるかもしれないから断ろうということとなった。

しかしまた1ヶ月後に同じところから再度お願いがあった。今度は広告代理店からではなく、映画制作会社から直接県庁に電話があった。

こいのわの取組を様々なメディアで確認して、ぜひ映画にしたいということであった。

こちらの懸念材料であった映画製作費については、映画制作会社がすべて持ち、プロモーション経費については映画配給会社が持つので、県が映画製作や配信のために予算を確保する必要はないとのことであった。

また、実際の県主催の婚活イベントを見てみたいとのことであったため、直近で予定していた居酒屋での婚活イベントを見てもらうこととした。結果的になし崩し的に映画化が決定していた。

繁華街で通行人を止めての撮影

映画監督は早々に決定

実際の我々の婚活イベントを見てもらってもない中、映画監督が決定していた。映画「デスノート」シリーズの金子修介監督であった。個人的に、デスノートは漫画を全巻そろえ、映画もDVDでそろえていたため、監督名を聞いたときは驚いたし、映画製作会社の本気度を感じた。

この時点で、映画製作会社と監督、脚本家だけが決定しており、この3者が実際の婚活イベントを見るために県庁にやってきた。

県庁の近くの居酒屋で開催した婚活イベントでは、仕事着のスーツからいつものスタッフポロシャツに着替え、映画関係者は視察する中で婚活イベントの進行を行った。

脚本家が婚活イベントの最初から最後まで視察し、イベント進行だけでなく、婚活イベントで使う各種カード類や参加者の番号プレート、入り口に立てていた幟にまで興味を持ち、細かくノートに書き込んでいた。

最後のマッチングが終わり、婚活イベント終了後も会場に残り、様々な取材を受けた。このイベント後、1ヶ月も経たないうちに映画脚本の初稿が届いたが、これが驚くほど「不適切にもほどがある」的なものであった。

県庁内の知事専用会議室を模様替えしての撮影

映画の題名に「こいのわ」を使用

実は、この少し前に映画の題名が「こいのわ~婚活クルージング」に決定していた。映画製作会社から「こいのわ」という名前にインパクトがあるし、映画の題名にも合うので使いたいという打診を受けていた。

県としては最高の広報プロモーションになるので即答で了解した。「こいのわ」を名乗る以上は、婚活をネガティブではなく、ポジティブなものに感じられるようなストーリーにしてほしいとお願いをしていた。

そんな中で出てきた脚本の初稿が婚活へは非常にポジティブな気持ちになるものであったが、同時に驚くほど「不適切にもほどがある」的な脚本となっていた。そのため、すぐさま県庁の広報課と打ち合わせを行い、脚本を細かく修正させてもらうことになった。

何回も脚本修正の往復が続き、本県の思いが全て解消されたわけではないが、婚活がポジティブなイメージになるのであればというところで妥協した。

主人公についても設定の段階からこちらの希望を伝えており、実際に県主催の婚活イベントに参加している30代半ばぐらいの男性でのキャスティングを希望していた。こちらは大人の事情により本県の希望が通ることはなかった。

街中の大型ビジョンを使った撮影

私をモデルにした県職員役はイケメン俳優に

脚本修正の往復を行う中で、次々とキャスティングが決まっていった。この映画の中で私をモデルにした県職員役のキャスティングも決まり、俳優の町田啓太さんに決まった。

長身のイケメン俳優であり、モデルの私とは似ても似つかないキャスティングであった。家族からも詐欺だと言われるくらいであった。

ただ、この映画の脚本家が婚活イベントの司会をしている私の姿を見て、登場する県職員は気弱でオタクという設定になったことには誰もが納得していた。

映画撮影はオール本県での撮影

映画のロケハンが始まる

映画撮影に入る2週間前に、3人助監督たちが先に入ってきて、撮影場所の確保に走り回った。我々もいくつかは候補を出して、撮影場所の確保に協力した。県庁内では、知事が重要な会議を行う会議室も撮影場所として提供した。

また、これまでに県主催の婚活イベントで活用したホテルやクルーズ船、スタジアムも映画のストーリーで登場するため、現地で撮影することとなった。

ロケ地のほとんどを本県内で行うこととなり、撮影するにあたって実際の婚活イベントに近い動きとなるよう指導をしてほしいということで、ほとんどのロケに同行することとなった。

映画キャストのサインが書かれた本県のとある場所の壁

1ヶ月にわたる映画撮影が開始

最初の撮影は、婚活イベントの会場となるホテルのイベントルームで町田啓太さんが演じる県職員がガチガチに緊張しながら婚活イベントの司会するというシーンであった。

端から見ると自分の婚活イベントでの司会はこんな感じなんだろうなと反省しつつ、撮影にはエキストラで参加し、婚活イベントの流れをチェックしていた。

最初のシーンの撮影が終わり、僕が休んでいるところに、町田さんが駆け寄ってきてくれて、「県職員の役を演じさせてもらいますのでよろしくお願いします」と挨拶をしていただいた。

身長が高くて、イケメンで、しかも爽やかで礼儀正しくて、別世界の人間かと思った。

実は、このとき、僕は町田さんのことは存じ上げてなく、この初めての挨拶の時に、
「オーディションですか?」
「いえ、演出さんにお声をかけてもらいました。」
「これまでにどんなドラマに出ているんですか?」
「NHKの朝ドラなどにちょっと出ています。」
「戦隊ものとかには出てないんですか?」
「いつかは出てみたいです。」
「どこの事務所に所属しているんですか?」
「LDHです。EXILEの事務所です。」
「歌を歌ったり、踊ったりはしないんですか?」
「怪我をしてしまって踊りは諦めて俳優になりました。」
など、本人のことを何も調べずに、大変失礼な会話をしてしまったのを今でも後悔している。

町田さんからは撮影現場で会うたびに爽やかに声をかけていただいた。周りはベテラン俳優だらけだったが、みんなからかわいがられていて人間性の良さが際立っていた。

スタジアムのラグジュアリーフロアでの撮影

これまで婚活イベント開催してきた会場がロケ地に

この映画では婚活イベントのシーンが多いので、ほとんどの撮影に立ち会うこととなった。我々が最初に婚活イベントを開催したホテルや豪華クルーズ船、野球スタジアムのラグジュアリーフロアやゴミ拾いでしんどい思いをした海岸などである。

これら全てにモデルとなる実際の婚活イベントがあったため、撮影期間が約1ヶ月であったが、これまでの仕事の集大成のように感じた。

撮影の最後はスタジアムであった。スタジアム内のラグジュアリーフロアでの婚活イベントのシーンであり、スタジアム内のスポーツバーでのイベントシーンも撮影した。

俳優とエキストラ全員が地元球団のユニフォームを着用しており、まさに実際に開催した婚活イベントの再現となっていた。撮影後は助監督さんからキャストでもないのに「○○さん、クランクアップです。」と言われ、キャストの皆さん全員から拍手までいただいた。

あっという間の撮影期間であったが、こんな婚活イベントも、あんな婚活イベントもやってきたのかと改めて思い返した。また、映画を撮影することの大変さと面白さも体験させてもらい、撮影スタッフのチームワークと雰囲気の良さも心に残ることとなった。

カープ坊やならぬ監督坊やが描かれたポット

撮影から1年後に映画公開

無事に撮影が終わり、4ヶ月後に東京で試写会があった。このときには映画配給会社も決まっており、誰でも知っている大手配給会社であった。所々未完成ではあったが、出来映えに感動したし、面白い映画に仕上がっていた。

この試写会の9ヶ月後に東京と本県で先行公開となり、その後、全国公開となった。

普通の地方公務員では絶対に経験できない貴重な経験をさせてもらい、感謝いっぱいであったが、映画公開時には人事異動で違う部署に異動しており、この映画を活用した取組については後任者に任せることとなり、非常に残念で悲しい気持ちでもあった。

6か月もロングラン公開された映画になった

映画製作会社や配給会社の人たちから、「民間企業だったらプロジェクトのキーマンはそのプロジェクトが終わるまでは異動させない。行政はそういうところがダメなんだ。」と励まされた。

この映画をきっかけに本県の結婚支援事業である「こいのわプロジェクト」の認知度が上がり、映画を見て婚活に興味を持ってもらうことで、婚活イベントへの参加のハードルが下がったのではないかと思っている。

映画公開後にこいのわの会員登録数が増え、映画公開中に会員は1万人を突破することとなった。なお、本県では異例の6ヶ月のロングラン公開の映画であった。

映画の初日の舞台挨拶


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