趣味を仕事にする

趣味を仕事にする
ということの意味は深いと思う。

「今でしょ」の林先生が、昔某テレビ番組で、
X軸に「やりたい、やりたくない」
Y軸に「できる、できない」みたいなパラメータで4象限にわけて
「好きで得意なこと」を仕事にできないときに
「好きではないけど、得意なこと」を仕事にしたい人もいるし
「好きだが、得意ではないこと」を仕事にしたい人もいる
みたいな話をしていた。

自分自身は「好きなこと」以外にはまったくやる気がでないという欠陥がある。全然真面目じゃないのでやりたくない課題の提出は滞ってしまう。
こんな人ばかりではまったく世の中というものは成り立たないので、
本当に変な意味ではなく、社会というのは、あまり好きではなくても努力できる、素晴らしい方々によって支えられていると思う。

そういう意味では社会に不適合しがちな自分が、好きなことを仕事にできたのでは本当によかった。

医学がとても好きなので、少しでも時間があると夜でも休日でも、臨床疑問を調べたり、医学論文を読みあさって過ごしているくらい、趣味といってもいいと思う。というかこれほど熱中しているものはないかも。
医師免許を取得して3年間は年間100万円程使って医学書を買い漁っていたし、4年目以降はそれに加えて1日10本論文を読むことを自分に課している。論文コレクションは8700を超えた。

それくらい医学自体は趣味だし、臨床もすごくすごく好きだし、仕事も好きなのだけれど。

どういう症例が好きなの?どういう状況が好きなの?救急好きなの?
みたいな話がよく医師の会話では出るのだけれど、
不思議なほど、自分は全然好き嫌いがなくて、あまりその感覚がわからない。

ある意味どれにでもうち込めるという総合診療医にむいているところでもあるのだけれど。

というよりも、本質は、
臨床好きなのだけれど、自分が見たことで患者に不利益を生じさせたくない、というかなんならできれば自分の患者にはその場所で可能な限りの最先端の世界一の医療を受けてもらいたいという思いが強い。
その中では、
どんな症例や状況であっても、プロとして一定のプレッシャーが自分にかかってるからなのかな、と思う。

イチローがこどもに向けて
好きを仕事にすると「心から楽しめなくなる」と話していた。

イチローは野球が好きだけど、プロになってからは小中学生の頃に感じていた楽しさというのはゼロ、うまく言ったときの快感は言葉では言いあらわせないが、失敗と常に向きあうことになる。

イチローが考える「プロの世界」という解釈が自分の中ですごくしっくりきた。
趣味を仕事にする ということにはこういう側面もかなりあると思う。
これを子供に伝える ということも、やっぱりイチローすごいなあ。

イチローといえば、
伝説の2009年のWBCの決勝のでの 気持ちを語っているのもしびれた。

イチローほどすごい人でも、こんなチャンスでまわってきても、
平常心を保てなくなる。敬遠してくれると楽なのになーと思う。
といったことがあるという。

医療現場でも、かなりプレッシャーがかかる場面というときに、
心から楽しめていないこと、平常心じゃなくなっていることがある。

イチローは、そういうものを乗り越えられるのは、今までも難しい状況に向き合ってきた、という自負だと。平常心でいようとしないほうがいい、と。

好きなものを仕事にできているからこそ、感じる気持ちかもしれない。
それでもやっぱり臨床は面白い。

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