2020 Women’s Collection - 制作 3 (移動するからだの線の構造)
2020 Women’s Collection
Fashion Designer : Yuko Koike
Model : Ksenia , Hair & Makeup : Marisa Tipkanok , Jewelry : Yukari Inoue , Photo : Yuko Koike
洋服は面的で立体的なものです。それをつくるために、たくさんの線と時間を一箇所に重ねる作業がわたしには必要です。
テキスタイルは面的で立体的ですが、触れるとたくさんの線が存在するのがわかります。
コレクションの世界を具体化するために、わたしは素材選びに数十日をかけて、たくさんの線に触れて、イメージをつくりあげていきます。
デザイン画も線です。
数十枚、数百枚のデザインを立体的に思い浮かべ、そのイメージを一息に描きあげます。
手元にあるインクの限界まで、体力と締めきり時間に悩みながら、線を束にあつめて洋服が具体的に現れてきます。
わたしの視界も線であふれています。
都市の人工的な線と、自然の線の掛けあわせに気づくたびに、その世界を洋服で表現したいと考えています。
地上43階のガラスの建造物に反射する夕焼け、あるいは雲まではっきり映りこむ青空に、気づくとカメラを向けています。
関係性も無数の線です。
この洋服を着用する方にとって、デザイナーのわたし、そして制作に携わってくれた方々とが繊細な線でつながっていると思っていただけたら嬉しいです。
ワンピース、シューズ、koike. 、ネックレス Yukari Inoue
そろそろ終電が気になる人たちがでてくるころだ。
シティセンターの41階から都市を眺めている。花火のように点がつながり、あるいは切れたり、さまざまな太さの線がこぼれおち、しなだれ、斜めに弧がひろがる。パターンがあるかのように繰りかえす光。
都市にあふれる愛の視線を想像する。光をかたちどる透けたハートの明かりから、愛の色がのぞいてる。固く結びあう愛。彼女たちはいつも愛を忘れない。
それぞれの光に愛があるのに、41階から眺めると意図がなくなったように見えてしまう。
シティセンターからの帰路は60分ぐらいかかり、いつの間にか、闇と光がしずかに交差する空気になっていた。
雨の翌日のなごりか、湿度と風が心地よくて、しっとりとながれている。
タクシーだけが数台とおる片側一車線の歩道で、満ち満ちとした月に心が洗われていると気づく。
わたしのなかで、光が立体的になる。月光浴をしている気分、ひとりきりでなつかしい世界がはじまる。
公園のおもちゃのような河川のつり橋。月夜にウサギや蝶のおもかげを思い浮かべる。
水面を月の光がながれてゆく。その光はなまめかしく、艶やかで。滑るような肌ざわりでひんやりとしている布のようだ。
自然の光と、都市の人工的な光の両方を享受して、彼女の表情は変化していく。からだの一部を都市にして、ともに寄り添いながら生きていくために。
◇
今回のコレクションを、イタリアのファッション誌『PAP Magazine』、ロンドンのファッション誌『Solstice Magazine』、『F'OLITIQUE Magazine』に、ご紹介いただきました。
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