ティール組織

 一年のうちには、日本統合医療センター(JIMC)の大幅な改編?改装?が始まりそうです。改めてJIMCについてご紹介するとともに、全体像を振り返ってみたいと思います。

 JIMCとは、当院(小池統合医療クリニック)と、併設されている身心工房リボン(心身の癒し・施術部門)との総称としての呼称となっています。
 当院も含めて、従来の病院・クリニックを念頭に置くと解りにくいかと思うのですが、それこそが、これまでの医療の施設の問題点を改善しようとする全く新しい試みであることが原因といっても良いでしょう。
 類例の少ないものはわかりにくい、理解しにくいというものです。人が類似例から、物事の多くを理解することを考えれば当然といえば当然です。
 そのために、分かり易いように説明文を書くことも必要ですし、加えて、メンバー間も改めて自らの組織の意味するところを理解する必要もあるわけです。そうした考察をする中で、新しい組織論について少し目を通してみました。

 かなり話題になった書籍でもあるので、ご存知の方も多いかとは思いますが、2014年に原著が出版され、2018年に邦訳された『ティール組織』です。
 『万物の歴史』などで知られるケン・ウィルバーの「インテグラル理論」を基盤として、組織の在り方を歴史的に(もしくは発達心理学的に)5つの段階に分析し、それぞれの特徴を解説しながら、第5段階の「ティール」の意義を解き明かし、これからの組織の在り方の可能性を示していくといった内容といえるでしょう。

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現画像

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
フレデリック・ラルー 英治出版 2018-01-24


 同書では、組織を以下の5つに分類しています。

レッド(衝動型)組織
アンバー(順応型)組織
オレンジ(達成型)組織
グリーン(多元型)組織
ティール(進化型)組織

 これらの分類は基本的に優劣ではなく、それぞれの特徴として捉えるのが良いのでしょうが、進化という言葉が使われていることもあり、どうして最終形に達せなければいけないかのような印象もあります。
 個人的には、各々の利点や適性もあるので、一概に階層的な捉え方をしない方が、応用範囲が広がるように感じます。

 荒っぽい分類を「医療」に置き換えてみると(個人的かつ恣意的ではありますが)、旧来の医療のイメージ(実際はどうだったかは抜きにして)がレッド、大学病院など旧来の組織的な医療制度をベースにしたものがアンバー、医療連携などを意識した新しい病院システムがオレンジといったところでしょうか。多元性を重んじるというのは医療現場として実際には困難ですが、新しい統合医療のイメージ(多元的統合医療)に基づいた「ジャングルカンファレンス」はグリーンになりそうだと思いながら読んでいました。
 グリーンの抱える問題は意思決定の困難さです。かつて学会などでジャングルカンファレンスのコンセプトを発表していたころ、最終決定はどうするのか、ただの絵に描いた餅だ、というようなご批判をたくさん受けました。これこそはまさにこのカンファレンスのグリーン性を読み取られてのことだったのかもしれません。
 しかし、家族性とも言えるつながりを強めるものとしてはグリーンは極めて有用ですので、これからもジャングルカンファレンスはグリーンの性質を生かして展開すべきだということをあらためて感じました。

 そしてその家族性の強いグリーンから派生した組織が、日本統合医療センター(JIMC)のように感じます。ただ多元であるばかりではなく、そこにはダイアローグを基盤として統合医療という領域に対して進むべき方向性が共有されています。それゆえに、個々がほぼ独立した形で、活動を展開しつつも、調和のとれた連携が実現していく、まさにティールが実現してるように思います。 

 いかにティールを実現するかということが、この書籍での大きなテーマなのでしょうが、われわれとしてはむしろそこにどれくらいの共通点を見いだせるかという観点で、学べる点があるように思います。
 JIMCの組織の特異性を説明するにあたって、大変有力なワードが手に入ったような感じをしております。
 統合医療という新たな医療には、新たな枠組みの組織として取り組まなければ、その魅力は半減してしまうことでしょう。

 ティール組織の冒頭に、テンセグリティを創り出したR.B.フラーの言葉が引用されているのが、なんとも印象的に感じました。

目の前の現実と闘っても何も変えることができない。何かを変えたければ、今あるモデルが時代遅れになるような新しいモデルを作るべきだ。R.B.フラー

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