見出し画像

2022年に読んでよかったPR誌の記事

2022年よかったPR誌の記事


 前回の記事で東京大学出版会のPR誌『UP』について書いた。なんか本当につらつらと取り留めなく書いてしまったなと反省している。ちゃんと文章を書くのって難しい。


 お正月があっという間に過ぎ去り、もう2023年になってしまった。備忘録として昨年(2022年)読んでおもしろいと思ったPR誌掲載の記事を記録しておく。本当に、PR誌の記事は記録しておかないと一瞬で忘れる。せっかく読んでも手元にないものはほとんど忘れてしまっているし、かろうじて内容を覚えていても掲載誌を覚えていることは稀だ。だからといって全部とっておくわけにはいかない。と、昨年かなり処分してしまったのを今後悔している。

以下、個人的におもしろかった記事。手元にあるものから順々に書いたものなので、おもしろかった順とかではない。順番にはなんの意味をない。


●「大宅壮一文庫でウィキペディアを書く」北村紗衣(武蔵大学准教授)

≪連載≫汗牛充棟だより6

『白水社の本棚』2022年夏号(2022年7月白水社)

 みんなで集まってウィキペディアを編集する催しを大宅壮一文庫で行ったという内容だ。たしかにこの2つは相性がいいだろうなと思いつつ読んだ。ウィキの“マグノリアベーカリー”の項目を確認したら、本当にこの筆者が作成していて感動した。すごい!こうやってウィキが増えていくんだ。『白水社の本棚』は白水社のHPでPDFが公開されている。今回の連載記事が前回と繋がりがあると書いてあったので、HPから前号を見ることができてありがたかった。


●「学術出版の縁から 変化の時代を生き抜くために」喜入冬子(筑摩書房代表取締役社長)

『大学出版』130号(2022年6月大学出版部協会)

 これ、ちょっとうろ覚えなんだけど、筑摩書房の創業時のことが書かれていて、その中で岩波書店の功績にも少し触れられていてよかった・・・ような。なんか、岩波書店の学術書の出版は大学を一つ建てたことと同等の功績があるみたいなことが書かれていた・・・ような。

 同じ『大学出版』の132号(20022年11月大学出版部協会)は特集が“学術書を読み継ぐ-オンデマンド出版・デジタル送信・古書”で、これもめちゃくちゃよかった。いろいろな立場の人が寄稿しているのだが、特に古書店の人の記事がおもしろかった。私はなんとなく面白そうな記事から読んでいったんだけど、この号に限っては最初から順番に読んだ方がよかったなって最後に思った。『大学出版』もHPでPDFを公開しているのでうれしい。



●「我が家のトイ・ストーリー」二宮敦人(小説家)

≪連載≫ぼくらは人間修行中 第22回

『波』2022 9月号(2022年9月新潮社)

 正直言うと、この回でなくてもいい。この連載は大体毎回おもしろい。要は子育てエッセイなのだが、よく見かける情緒的で共感をメインとした子育てエッセイとも、分析的で真理を探しだそうとしがちなものとも違う、エンタメ的な書き方で情景を想像しやすい。想像しやすいので読みやすい。頭の中で映像化しやすいというのは筆者が小説家だからだろうか。この回では増え続ける子どものおもちゃについて親の視点で、さらには筆者の親との思い出も書かれていて、感慨深いものになっていた。実際子を持つ身として「あるある」すぎることが書かれていて共感しかなかった。うちの玄関にも、拾ってきた枝あります。


●「すずしろ日記」第151回 山口晃(画家)

『UP』通巻540号(2017年10月東京大学出版会)

 今年の号ではないんだけど、冊子類を整理していたらポロっと出てきたので読んでみた。・・・記憶にない。初めて読んだかのように新鮮。読んでなかったっけ?私はこの筆者のサイン会に行くほど大好きなので、この連載も作品として見ていたけど、改めて考えると普通にエッセイとしておもしろい。2022年12月発行の『UP』で連載212回とあったけど、月一の連載だとして・・・え!もう17年以上やってる?これもどの回を読んでもおもしろいんだけど、この回では“カミさん“の靴下コーナーの話がわかりすぎて身につまされた。衣服は地層化する。



●「世界を切り刻む科学とありのままに愛でる科学」須藤靖(東京大学大学院理学系研究科教授)

≪連載≫注文の多い雑文その59

『UP』通巻599号(2022年9月東京大学出版会)

 植物学の話を主軸に広い視点で関連することが綴られている本文もおもしろかったのだが、やはり注文が最高にイカしている。この連載はだいたい本文で学術的なことが書かれ、注文で筆者の心情や裏話が明かされる。この構成は発明ですらあると思う。600号の記念寄稿で吉見氏が著者のインタビューの動画チャンネルを的なことを言っていたが、それが誌上で再現されているようなものだ。本文と余話が同時に読めるというのが何より楽しい。



●「愛書家の楽園 (エモい)コーヒーテーブル・ブック」柴俊一

『書標(ほんのしるべ)』2022.11月号(2022年11月丸善ジュンク堂書店)

 これは内容というより、コーヒーテーブル・ブックというものを初めて知った驚きがよかった。馴染みのないものだが、テーブルに飾って来客者に見せびらかす用の美麗本らしい。本棚でいう手前に置く1軍みたいなことか。ビジュアル的に見栄えのいい本がいろいろ紹介されていたのだが、印刷が白黒だったので残念だった。コーヒーテーブル・ブックバトルをしたらおもしろそうだ。「これが俺のコーヒーテーブル・ブックだ!」「か、かっこいい~負けた~」みたくやりたい。



●「我らが愛する“吸血鬼” 万城目学『あの子とQ』刊行記念対談」万城目学(作家)、小島秀夫(ゲームクリエイター)

『波』2022 10月号(2022年10月新潮社)

 これは・・・覚えてないなぁ。でもおもしろかった気がする。吸血鬼の映画の話とか。あとなんか最近、吸血鬼のアンソロジーが出てその鼎談を図書新聞か読書人で読んだから「吸血鬼」いまキてるなっていう印象。『波』はこういった単発の記事(たぶん新刊の宣伝を含むもの)はHPでも公開されていて、これも読める。



●「ガイラの夜明け」高嶋政伸(俳優)

≪連載≫おつむの良い子は長居しない第7回

『波』2022 11月号(2022年11月新潮社)

 これ、ちょっと今手元にないので記憶だけで書くけど、ものすごくおもしろかったの。ちょっと衝撃的で、あの俳優の高嶋政伸ってこういう文の書き方するんだって。とにかく衝撃。こんなおもしろいエッセイ書ける人を今まで見逃していたなんて、どうかしている。いやでも書籍化されてないし、ほかの媒体で書いているわけでもないようなので仕方ないか。とにかく早く書籍化してくれ。いや待て!1回分しか読んでいないので判断するのは早いか。これ、連載だからHPに載ってないんだよ。バックナンバー見たい。



●「声の楽器のおける機能性と呪術性」土佐信道(明和電機代表取締役社長)

『月刊みんぱく』2022年9月号(2022年9月国立民族学博物館)

 明和電機すごい流行ってたなぁと懐かしい気分で読んだが、おもしろ楽器としてブームになった一部分しか見てなかった自分に気づかされた。2015年に秋田で見た明和電機の展示より、この1ページだけの短い記事の方がよかった・・・と思ったけど、秋田は会場がよくなかったからノーカンとする。『月刊みんぱく』もバックナンバーのPDFがHPで掲載されている。みんぱくは、できれば連載の「ことばの迷い道」を一つにまとめてほしい。



●「特集:荒俣宏妖怪探偵団、東日本へ 奇想の冒険旅行へようこそ アラマタ的新七不思議の旅」

『トランヴェール』2019-8月号(2019年8月東日本旅客鉄道)

 最高。これ、どうやって入手したか全く覚えてないんだよね。たぶん職場の誰かにもらったような・・・好きなものを公言しておくといろいろもらえていいですね。これはタイトルだけでおもしろさがわかるでしょう。『トランヴェール』はHPでebookとして公開されていて、もちろんこの号も閲覧できる。ガンガンアクセスしよう。


こんなところか。内容についてではないが、あと2点。


 『禅の友』(曹洞宗宗務庁)が2023年1月号より表紙をリニューアルした。これがすごかった。思い切ったリニューアルだったと思うが、めっちゃくちゃオシャレ!抜群!これはすごい。なんというか、何とも言えない。私の持つ語彙と表現力ではこの表紙のカッコよさ、美しさ、オシャレさについていい感じに書くことができないので、これは現物を見てほしい。そのうち書影がHPに掲載されると思うので。

 あと、『学鐙』の冬号(丸善出版2022年12月発行)で、来年夏号より発行元が丸善雄松堂に代わりリニューアルするとのこと。“誌面構成において編集方針が大きく変わる予定”とあったのでどうなるか楽しみ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?