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排卵誘発薬「フェマーラ」の副作用が辛い

胃がとても痛い。フェマーラというマイルドな刺激が売りの薬を処方されて、安心して飲み始めた2日目のことだった。服用期間は5日間。仕事中に耐えられないほど胃が痛くなり、吐き気を感じながらうずくまった。しばらく身動きがとれなかった。

テレワークだったので、そのまま退社して、ベットに横になる。仕事は繁忙期でとても休むような雰囲気でなく、自分も一過性だと信じて明日の予定を頭で計算していた。休みたくない。苛立ちさえ浮かんだが、座りなおそうと体を持ち上げては、全身に走る鋭い痛みで引き戻されを繰り返していた。

病院に電話はした。ネットでも軽く調べた。同じような人が1人ブログを書いているのを見かけたが、「副作用はほとんどない」「安心して飲み続けられる」という表記が目立ちため息をついた。担当医も「おそらくフェマーラの副作用ではない」と言った。じゃあどうしたらいいのだ、この痛みは。


服用中まる5日間、波のある胃痛に耐えながら仕事をした。ご飯を食べると痛みが激しくなるため、ヨーグルトとバナナ、水だけで過ごした。薬を飲むだけで痛かった。あごには沢山のニキビができた。やっと飲み終わり、徐々に良くなる痛みにほっとした翌日、再び刺すような痛みを感じた。



夫に連れ添ってもらいながら、近くの消化器内科の門をたたいた。
「血液検査は問題ないですが、触診では明らかに胃が腫れていますね」
医師は少し考えるように首を傾けてから、痛みでうなだれている私に言った。

「ストレス高いことしてないですか?ストレスで自律神経が乱れて消化器官の働きが悪くなっていると考えられます。続くようなら胃カメラ検討してください。悪くなると、逆流性食道炎になります。」
私は蚊の無く様な声ではい、と言って、診察室を後にする。胃の働きを助ける薬、胃の痛みを和らげる薬を受け取って、帰って真っ先に飲んだ。そしてそのままぐったりと、暗くなるまで寝た。


ストレス、というほどストレスの高いことはしていないと思っていた。仕事は大変だし気に病むことは多かったが、山場だから踏ん張りたいと思いながら頑張っていた。不妊治療も、そこまで気に病んではいなかった。受付の人の声色が少し厳しいから電話するの怖いな、とか、先生にちゃんと自分の話を聞いてもらえるかなとか、そんなことを考えることはある。ただ、これも経験だと思って勇気で乗り越えているつもりだった。

いずれにせよ、明るい気持ちで過ごしているつもりだったので、ストレス、の言葉には首を傾げた。どちらかというと、フェマーラ、この薬のせいではという気持ちが大きかった。フェマーラはエストロゲンの産生を抑える薬だ。もともと乳がんの薬で、不妊治療ではこれを応用して、あえてエストロゲンを抑えることで脳に「まだ足りてない」と思わせてさらに産生を促すと聞いていた。

胃痛で苦しむ寝床で、自分でも調べた。乳がんはエストロゲンの産生がガンの活性に繋がるから抑える必要があるようで、そのために閉経後の女性が服用する。不妊治療ではこの作用を応用して、逆に排卵誘発をするために、閉経前の女性に処方しているようだ。
さらに、エストロゲンは体内の自律神経を整える作用をもっている大切な女性ホルモンである。

#参考までに、兵庫県立がんセンターの病院薬剤部が患者向けに資料として提供しているPDFを張り付けておく。
https://www.pharm-hyogo-p.jp/renewal/siryou/r2s45.pdf

https://www.pharm-hyogo-p.jp/renewal/kanjakyousitu/sk27.pdf


ここからは、素人の勘。エストロゲンを抑えて→余分に出させるの工程で、抑えすぎたか、もしくは抑えたあとに余分に出るまでが遅いのか、抑えたけど余分に出てないかのどれかでなかろうか。どれかが理由で、エストロゲンが足りなくて、その結果自律神経が乱れて、、、、今に至る。

知識の間違いも、偏りもあるかもしれない。ただ、自分の中では、一番納得する意見だった。

#蛇足だが、ヨーロッパの方では医師に薬を出されたときにまず安全かどうか、効能が正しいかどうかをかなり疑うらしい。「疑う」ことは一つの重要な生きるスキルとして認知されているそうだ。その話を聞いてから、たしかに自分の体のことなんだから、権威者からの指示をうのみにしないで自分で考えることは大事だなと気づかされた。なお、ヤマザキマリさんの「立ち止まって考える」という本に書いてあった。気がする。



いずれにせよ、このままフェマーラを飲み続けないと、きっと私は排卵しないだろう。そして来月もこの胃痛に苦しむのだろうか。こんなに痛くて、繰り返したらもはや別の病気にかかりそうだ。
いや、そもそもフェマーラを飲んだところで排卵するのかも不明だ。今回の検査次第では、より多く飲まされるか、もしくは自己注射などに切り替わるのだろう。私の身体はどうなるのだろう。仕事は。人生は。

「妊娠を諦める」
ふとよぎった言葉に、冷静になる。不妊治療のおわりは決めていなかった。だが、こんなに体に負担がかかるなら、決めざるを得ない。不妊以外健康な体を、大切にいたわりながら人生を歩む方が、よっぽど重要かもしれない。


いつでもやめようと思えば辞められる。自分が選んだ選択、自分が手綱をもっていることを忘れずにいたい。自分が選んで、自分が責任をとるのだ、この人生に。



おわり

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