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南アフリカワインと料理のペアリング解説 Part 3

はじめに

南アフリカワイン専門のワインショップ「アフリカー」が、昨年末に新たにオープンした、南アフリカワインと料理のペアリングに特化したレストラン「ヘルマナス714」。ご縁をいただき、ワインディレクターとして参画させていただいています。

こちらのお店は、南アフリカのワインそれぞれから発想したお料理をペアリングするという、他ではなかなか類を見ることがないワインレストラン。

今回は、第3弾となるワインペアリングコースが新たにスタートするということで、その内容を特別公開し、それぞれのワインと料理のペアリングについて、詳しく解説をさせていただきたいと思います。

料理とワインの合わせ方の参考にもなると思いますので、ご興味がありましたらご覧くださいませ。


アミューズ・ブーシュ(小さな前菜)とソーヴィニヨン・ブランのスパークリング

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スティーンバーグ ソーヴィニヨン・ブラン NV
▶︎グリーンオリーブとブリーチーズのカプレーゼ風
~ ドライトマト バジルペースト〜

最初の一品目は、「ブリー、グリーンオリーブペースト、ドライトマト 、バジルとミントのピストゥー風ソース」をクラッカーにのせた、手でそのまま召し上がっていただける一品。

私は一口でいただきましたが、まさに口の中でカプレーゼが完成していくような味わい。

ニューワールドのソーヴィニヨン・ブランらしいハーブ香と柑橘フルーツのニュアンスをしっかりと感じる爽やかなスパークリングワインが、トマトやバジル、ミントの風味と重なり合い、味わいが広がります。


一品目の前菜とシュナン・ブラン 

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マリヌー クルーフ ストリート シュナンブラン 2020 ▶︎水タコのスモーク サラダ仕立て~ 金柑 ディル リンゴ 生姜 ~

スワードランドの注目の生産者マリヌー。一口味わうと果実の新鮮な味わいが広がります。

前菜は水タコのスモークをメインとしたサラダ仕立て。フェンネルでマリネした水タコとキンカン、ディル、リンゴの味わいが渾然一体となり、繊細な味わいの中に華やかさを感じる。海の要素をもつ白ワインから発想した一皿。

南アフリカはリンゴの産地としても有名ですが、この国で最も大きな栽培面積を持つ品種であるシュナンとの相性も抜群。そしてキンカンとシュナンの相性の良さに、きっと驚かれるでしょう。


スープとシャルドネ

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ボールクルーバー シャルドネ 2018▶︎魚介とカリフラワーのスープ ~海老 ムール貝 アーモンド ナツメグ~

カリフラワーとアーモンドミルクをベースに、ムール貝のエキスを入れ、ナツメグをきかせたスープ。

ニューカレドニア産の天使の海老はクミンをからめてソテー。アーモンド、オリーブオイル、海ぶどう、万能ネギを添えた豪華な一皿です。

この魚介とナッツの風味を感じる温かくクリーミーなガスパチョ仕立ては、日本でも有名な南アフリカのシャルドネである「ポール・クルーバー」をペアリング。

甲殻の深みのある味わい、カリフラワーとミルクのクリーミーな味わいとなめらかなテクスチャーがとてもよく合い、アーモンドやナツメグの風味が樽の要素とも相乗します。



肉料理とピノ・ノワール

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クルーガー ピノ・ノワール2019▶︎ホロホロ鶏の包み焼き トリュフをかけて ~ スパイスバター ビーツトマトソース 〜

若鶏の胸肉のパンチェッタと網脂でくるんで、鳥の皮の間にスパイス(クローヴ、ジンジャー、ナツメグ、ブラックペッパー)をきかせたデュクセルバターをいれて仕上げた一皿。

一見シンプルに見えますが、かなりの工夫と技術が投下された渾身の一品と言えます。(正直かなり美味しかった)

ビーツとトマトのソース、菜の花のソテーとアマランサスを添えることで、このピノ・ノワールのフレーヴァーに見事に同調し、まさにマリアージュの完成です。


ダブルメインディッシュとシラー

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ダーマシーン シラー 2020▶︎牛フィレ肉のタリアータと蝦夷鹿ブルボス ~赤すぐり 椎茸 白いんげん豆~

*タリアータ:薄切りステーキ

今回もメインディッシュは豪華2点盛り。牛タリアータと蝦夷鹿のブルボス(隠し味でカシスフレーヴァーと山椒) を主役として、白インゲンとサラミ、バルサミコ醤油、ブルーチーズのソースを添えて。

さらに付け合わせとして、ペコロスと焼き椎茸、山葵菜と赤スグリが加わり、食べる前からまさにメインディッシュと呼ぶにふさわしい雰囲気を醸し出しています。

肉料理が2皿続く今回のコース。エレガントで華やかなピノ・ノワールの後に続くのは、世界でも注目度が増しているスター的品種「シラー」。

カシス、ブルーベリーのコンポート、清涼感を伴うスパイシーさ、鉄分的な血や動物的ニュアンスも感じられ、緻密なタンニンと伸びやかな酸。ワインがもっているこれらの要素とメインの肉そのものの味わいと火入れ具合、一つ一つの付け合わせと共にしっかり相乗、補完することで、料理とワインのマリアージュが完成します。


デザートとルイボスティー&デザートワイン

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アニス香るバナナのクレームブリュレ▶︎ルイボスティー

5種類のワインをペアリングしていただいた後、最後は、南アフリカのルイボスティーに合うデザートをシェフがご用意。

パートフィローが重なりあった、アニスのフレーヴァーを感じるバナナのクレームブリュレ。そして今回のデザートもヘルマナス714定番の「ルイボスティー」との相性を考えて作られていて、ルイボスティーの甘苦さとフルーティな要素にマッチします。

最後までコンセプトを貫いて、コーヒーや紅茶という選択肢を外し、ルイボスティーで勝負する徹底ぶり。デザートと合わせていただくと、深く納得していただけると共に、それまでにいただいた料理やワインの記憶も蘇ってくるでしょう。

今回のコースからデザートに合わせたワインも含む内容となっていますので、ご無理のない範囲でデザートワインペアリングも試してみてください。デザートとワインのペアリングの爆発力は、凄まじいものがあります。

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甘口が苦手な方、もしくはその後さらにもう一杯ご希望であれば、ちょうど先日、noteでもご紹介した「インドラヴ」のソーダ割りも、とてもオススメです。


最後に

約20年間レストランのソムリエを続けてきた中で、さまざまなスタイルのお店でのサービスや飲食経験を積み重ねてきました。これまでに料理とワインのペアリングをリリースしてきた経験も数えきれません。

その中でも、南アフリカの洗練されたワインと料理とのペアリングをここまで堪能できるのは、きっとこの場所だけではないかと自負しています。

ペアリングに関して世間でもいろいろなご意見がありますが、やはり料理とのマリアージュがあってこそ、そのワインの持っている力が最大限に活かされるということ。自分自身、幾度体験してもその感動は尽きません。

これまでにこのnoteでも、たくさんのワインペアリングのコツを発信してまいりました。ぜひ参考にしていただければと思います。

最後までご覧いただき誠にありがとうございました。また次回の記事でお会いできるのを楽しみにしています。


ワインディレクター 田邉 公一



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