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講師として大切にしていること 2022年の終わりに

はじめに


以前も同じテーマで書かせていただいたことがありますが、今回、また一つの節目のタイミングとして、その時に執筆したことをベースに、新たな視点を加えた内容をお届けしたいと思います。

私は2009年にワインスクール レコール・デュ・ヴァンの講師に就任しました。2007年のソムリエコンクールで優勝し、フランス研修を終えた翌年で当時31歳。まだまだ知らないことだらけだったにもかかわらず、良くも悪くも勢いに乗っていた時期でもあり、我ながらずいぶん生意気な存在でした。

実際の講師歴で言うと、ワインエキスパート資格を取得した翌年の2003年から、勤務先のレストランでゲストを対象としたセミナーを行ったり、2007年より勤務していたホテルのレストランスタッフ向けワインセミナーの講師を担当した経験があり、トータルで考えるとおよそ20年のキャリアということになります。

早い段階から「アウトプット思考」に切り替えていたことが、その後のキャリアに好影響を及ぼすことになったことは確実です。

ただ、ソムリエの仕事だけではなく、もう一つの本業として講師になり、それを生涯の仕事として考えるようになるとは、人前で発言するタイプではなかった学生時代のことを考えると全く予想していませんでした。

何か一つだけでも得意なこと、継続できることを見つけ出すことさえできれば、人生は大きく変わるのだと実感しています。


得意を意識する


「副業」という言葉は私の中では存在していなくて、やるからには全てが「本業」。「副業」ではなく全てが本気の「複業」としての本業なのです。

ソムリエも講師もコンサルタントもライター業も、今やっていることは全て同一線上にある本業であると考えています。その中の一つである講師という仕事を愛し、長く続けてこれたのは、人に対して「得意」だと自信を持って言えることがあったから。

講師という仕事は大勢の人の前で話をすること自体が得意かどうかの前に、「話すべき何か」を持っていなければなりません。

私の場合で考えると、長年ソムリエとしてさまざまな飲料や料理をゲストにサーヴしてきた経験、世界のさまざまなワイン産地や国内の酒蔵、ワイナリーへの訪問の経験があるからこそ、講師としての仕事が成り立っています。

その「話すべき何か」は、ほとんどの方が必ず持っているもの。もちろん、今この記事をご覧いただいているあなたも例外ではありません。

小さい頃に大好きだったこと、社会人になってから夢中になっていること、今向き合っている仕事の中でも、特に「これに関しては得意」、だったり人から頼られている部分というのが必ずあるはずです。

その「得意」を認識し、自らそれを認めて、追求できるか。そこに焦点を当てることができれば、見える世界は変わっていきます。


自信の重要性


人前で話す時にまず大切なことは何なのか。それは「自信」だと考えています。

想像してみてください。目の前の壇上に立っている人の雰囲気を。自信がなく話されていては、何のためにその人の話を聞きにわざわざそこに足を運んだのか不安になってくるでしょう。

逆に自信と確信をもって話している人の内容は頭に入ってきやすく、強いエネルギーを感じることができる。この「エネルギー」がとても重要です。

ではどうやったらその自信を手に入れることができるのか。その解決策が「得意なことをつくる」です。

私は学生時代にアルバイトを初めてから、このことをずっと意識して生きてきました。小中学校、高校時代の5教科の中ではそれがなかなか見つからず悩んでいたからこそ、「仕事」でそれを見つけ出したかったからです。

得意なことになり得る片鱗はどんな人にも必ずある。なぜなら、何かにワクワクしたり、これは面白い!と思ったことが人生において全くないという人はおそらく存在しないからです。

子供の頃から今大人になってからも、必ず何かに対して興味を惹かれた経験が誰しもあるはず。その気持ちに素直になってとことん向き合うことができれば、それがやがて得意なことになり、そのワクワクを伝えること自体が仕事にもなる。

そうすると自然に情報が集まってくるようになり、それをまたアウトプットする。仕事をしながら学べる環境になることで成長サイクルが加速されていくという、ある種の理想的な流れが出来上がるのです。

そしてそうなった時こそ、歳を重ねるごとに人生が楽しいと思えるようになるのだと思います。


得意分野はどこに存在するのか


自分では得意なことだと思っていても、当然ながらその分野についてもっと詳しい人はたくさんいます。

例えば「ワインに詳しい」と言っても、そういう方は地球上にたくさんいらっしゃいますし、「全てを知っている」という状態は、きっとどんな分野においても訪れることはないでしょう。

それを理解した上で、どこまでその世界を識ることができるか。そしてここで重要となるのが「どう詳しいのか」ということ。

その昔、「ゴールは存在する」と思いながら、日々ワインの勉強をしていたことがあります。この業界に入った当初、ソムリエは「ワインに関しては何でも答えられる存在」だと、心底信じていました。

猛勉強の末に何とかソムリエの資格を取得。しかしその直後に、まだまだ知らないことだらけだということを思い知ることになります。

その後、日本のトップソムリエを目指す「ソムリエコンクール」の存在を知り、迷わず挑戦。

全く歯が立たず敗北することで心を折られかけるも、もしこれで勝てたとしたら、まさにこの分野において「何でも知っている」という状態になれる。そう信じて数年間、寝食を忘れるほど必死に努力を続けました。

正直この時は心身ともにかなりの負荷がかかり相当苦しかった。しかしこの試行錯誤の日々こそが、得意分野を作るための重要なプロセスだったのです。

その努力がなんとか実って優勝。「これで自分はどんなことでも答えられる存在になったんだ!」と、幸せな夢を見れたのはわずか一晩だけでした。

現実の世界に戻れば、まだまだ知らないこと、経験していないことだらけ。

まだ若僧だった自分がこの時気づいたことは、「資格も優勝も常に次へのスタート」だということ。一生をかけたとしても完璧な存在にはなれないということ。そしてそれと同時に、「これまでに得た知識と経験をシェアしたい...」そう思ったのです。

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