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ワインが250種類あるセブンイレブンのお話

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はじめに

先日Twitterでこのようなツイートをさせていただきました。

ワインが250種類もあるコンビニエンスストアって信じられますか?福島県の「白河インター店」ソムリエ資格をもつ鈴木さんがオーナーを務めるセブンイレブン。ワインセレクトも素晴らしい。シャトー・カロンセギュールもあります。サッシカイアは売れてしまって今欠品中とのこと。

4枚の写真と共にツイートした結果、1,500を越えるイイねと、450ものリツイート。とても多くの方から反響をいただきました。

この日の前日に、仕事関係のつながりで初めてお会いしたセブンイレブンオーナーの鈴木さん。私が翌日に東京に戻るということをお伝えしたところ、朝、宿泊先のホテルまで車でわざわざ迎えにきてくださり、新幹線の出発時刻までの間、ご自身の経営するセブンイレブン白河インター店にご案内くださったのです。

店内の奥に広がる別世界

ワインにも力を入れていると伺ってはいたものの、店内の奥へと進んで行くと、そこにはこれまでのコンビニエンスストアの常識を完全に覆す世界が広がっていました。

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広い店内の奥にズラっと並ぶワイン。丁寧なコメントシートが添えられています。

日差しを背にするような形で配列され、保管状態にもしっかりと気を配られている様子に、ワインへの愛情を感じます。

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ナチュール系や早めに飲むことが推奨されるワインは冷蔵庫の中へ。こちらにも一つ一つのワインにコメントが添付されています。


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フランスのボルドー地方やイタリアの高価格帯のワインはしっかりとセラー内に。ラベルもきちんとゲストが見えやすい方向に。やはりそれぞれのワインのコメントも。

このセラーにはきちんと施錠がされていて、特別なワインであること、特に大切に保管がされていることを認識させてくれます。

シャトー・カロンセギュールやシャトー・ラグランジュがあることにまず驚きましたが、イタリアのスーパートスカーナである「サッシカイア」が、「先日売れたばかりで、今欠品中である」という会話をセブンイレブンでしているということに、レストランで働いてきたソムリエとして、少し違和感を感じると同時に、何だか嬉しくなりました。


ソムリエがいるコンビニエンスストア

お話を伺うと、鈴木さんは以前、毎週福島から東京のワインスクールに通い、ソムリエの資格に見事合格されたということ。その努力と信念に頭が下がります。

そしてさらにその後、継続してスクールに通い、SAKE DIPLOMAの資格も取得されたということで、そのエネルギーと結果につなげる集中力に、私も大いに刺激をいただきました、

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お話を伺っていて特に印象的だったのが、「いつ行ってもソムリエがいないんだけど!」というクレームをいただいたというエピソード。ご本人としては大変だったと思いますが、思わず笑いが出そうになってしまいました。

そのお店はミシュラン星付きのレストランではなく、コンビニエンスストア。セブンイレブンでそんなクレームがあるなんて初めて聞きましたが、時代が大きく変化してきていることを嬉しく思います。

とは言え、やはり最初の頃はワインが全然売れずにとてもご苦労をされたということ。成功するまであきらめずにここまでこられたこと、心より尊敬すると同時に、これからのますますの発展が楽しみで仕方がありません。


なぜセブンイレブンのワインが250種類まで増えたのか

ではいったいなぜこんなにもワインが充実したコンビニエンスストアが出来上がったのか。

そのきっかけとなった出来事について、鈴木さんに直接インタビューしてご返答をいただいた内容を、ご本人の了承を得た上で、以下に掲載させていただきたいと思います。

「父親はワインアドバイザー、妹はソムリエ(父親は忘れましたが妹は2008年合格でした)、そして私は2015年にワインアドバイザーに合格しました。ここまでは父親の会社に所属しており、私はセブンイレブンのオーナーでもありました。

しかし、その後両親や妹ととの関係に問題が生じてしまい退職。ワイン部門は妹にさせたかったみたいですね。そんな揉め事があり2016年に独立しました。

今のセブンを改装して、2016年2月28日に再オープンと同時に、ワインの売場を少しだけ広げました。最初は父親と妹に対する反骨心だけだったと思います。ですから最初は全く売れず、売るためにはどうしたら良いか考えました。ワインを知らなすぎる、マーケティング力が足りない、そもそもお店(セブンとして)ニーズに応えられているのか.....色々考えたのです。その中で、福島県は酒どころということもあり、SAKE DIPLOMA資格を目指すことにして、スクールに通いながら勉強をして、なんとか合格することができました。

また、お客様の声を沢山聞いてみようと考えて、ワインを買いにきたお客様と積極的にコミュニケーションをとり、出来る限りインポーターの試飲会に参加して、知り合いを増やし、沢山のワインショップを見て回ったのです。

根本にはお家騒動があって、本当に妻も大変な思いをして、お酒も飲めないのに妻の協力と理解があって今に至ります。

父親はワインという飲み物にとてつもないステータスを感じて、「ワインは人を選ぶ」が口癖でしたが、元々お酒の飲めなかった私はそこに違和感を感じていたのです。ワインを知らない人、高貴なものと感じでいる人にも飲んでもらい、身近に感じてもらうことを目標にして、今に至る。という感じです。これに関してはまだまだお話したいこともたくさんあるのですが....。

今はワインの輸入業もしているのですが、それを始めたきっかけは、ワインをもっともっと深く追求したかったから。ワイン歴が短く、小売経験しかなかったので、卸売りを経験したかったのが本音です。

生産者になることはできませんが、輸入元の経験をして、生産者の思いをダイレクトに受けとめ、そして流通を深く知る。それが一番の目的でした。それ以降、インポーターさんとのコミュニケーションをしっかりと取れるようになり、その気持ちが分かったことで、消費者の皆さまに以前よりも多くの情熱を伝えられるようになったような気がしています。」


嬉しいメッセージ

福島から東京に戻った当日の夜。鈴木さんからこのようなメッセージが届きました。

「こんばんは。色々な方から、連絡、問い合わせが絶えずです。インスタのフォロワー増えたり、数件DM来て「伺います」と。東京や全国のワインの友達、知り合いから、「バズってるよ」と。そこに来て水曜日、TV取材なので。プレッシャーではあるのですが、僕は楽しむつもりです」

私は仕事でお店に関わっているわけではありませんが、一人のソムリエとして、「こんなに特徴的で素晴らしいコンビニエンスストアは、絶対に全国に発信しなければ!」という一心でツイート。

あの一つの呟きによって、多くの方に認知していただけたということで、少しでも力になれたことを嬉しく思います。翌日には、台風で大雨という状況にも関わらず、遠方から数組の方々が訪れてくださったようです。


ワイン以外にも注目

ここまでご紹介させていただいたように、ワインが豊富にある店内ですが、私がもう一つ素晴らしいと思ったのが、地元福島県の日本酒を豊富に揃えていること。金賞受賞蔵数が連続で日本一という福島ですが、金賞受賞酒の大吟醸から、純米酒まで幅広く揃っています。

私も何か1本購入させていただこうと吟味した結果、下の写真にある福島県の日本酒「陣屋 特別純米酒 有賀醸造」をセレクト。

米品種は、福島県を代表する「夢の香」を100%使用。SAKE DIPLOMA教本に記載されていてとても気になっていた品種です。

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東京に戻る前に新白河駅で購入した「白河ラーメン」と合わせて、帰宅後に早速いただきましたが、日本版、同郷のマリアージュを存分に楽しむことができました。


最後に

最後までご覧いただき誠にありがとうございました。福島県初訪問で素晴らしい経験をさせていただきました。白河を訪問される際は、ぜひ行ってみてください。ワインラヴァーの皆さまであれば、楽しすぎて長居してしまうこと間違いなしです。

ちなみに言い忘れましたが、こちらのお店はあくまでもセブンイレブンなので、通常のコンビニエンスストアで見かける商品も豊富に揃っていますのでご安心くださいませ(笑)

ではまた次回の記事でお会いできるのを楽しみにしています。

ワインディレクター 田邉 公一


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