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【5G×AI】5GがもたらすAIデジタル変革のサーベイおよび考察

0. はじめに

5Gの技術変革は、AIのビジネス活用と産業のデジタル最適化を推進させる。本記事では、過去技術と5Gの差分について整理した後、AIのビジネス活用に絡めながら、実活用の可能性とその運用方法について考察を深める。
この記事を読むことで、以下の「問」に対する考察が得られる。

- 問: 5Gはどのような特徴を持ち、なぜそれが実現可能なのか
- 問: 5Gにはどのような活用方法が期待されているのか
- 問: 5Gを導入する意義や必要性はどこに(そして本当に)あるのか
- 問: 5Gを導入することによる経済合理性はあるのか
- 問: 5Gの運用活用はエッジデバイス処理と比較してどのようになるか

1. 5Gの特徴とは?

5Gは、単なる4Gの拡張ではない。
多くの他の記事でもまとめられているが、

1. 超高速・大容量通信
2. 多数同時接続
3. 超低遅延
という3つの特性をもつ。

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ただ速いだけでなく、安定して同時に処理できるという点が、実適用におけるポイントになる。

参考: 「5G」とは?次世代通信システムを基礎から解説

2. 5Gを支える技術

5Gの技術詳細は、通信技術を一通りさらう必要があるため、ここでは割愛する。技術詳細を知りたい場合は、以下などが参考になる。(結構ボリュームあるし専門性も高めなので注意)

以下は簡略化した技術説明。

- 2.1. 高周波数帯域の活用

情報通信において、高周波帯域は1波長が短く(高校物理知識)、一定時間で送信できる情報量が多くなるが、数百MHzから3GHz程度の周波数帯は、すでに既存の通信に使われてしまっていおり、追加で通信周波数を割り当てることは困難とされている。
そこで、5Gの基本的なアイデアは、準ミリ波からミリ波まで考慮した高周波数帯の帯域幅を確保し活用することで、高速な通信を実現しようというものである。

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引用: [総務省]電話利用ページ

参考: 第5世代移動通信システム「5G」とは?
参考: 「5G」とは?次世代通信システムを基礎から解説

しかし、高周波帯域の波は波長が短く直進性が高い(高校物理知識: ホイヘンスの原理など参照)、ので障害物で電波が途切れてしまう可能性が高い
そこで、後述する超多素子アンテナ技術が注目されている。

参考: 波の回折 わかりやすい高校物理の部屋

- 2.2. 超多素子アンテナ技術

超多素子アンテナ技術については、 第5世代移動通信システム「5G」とは? で丁寧にまとめられているので以下に引用・抜粋する。

多数のアンテナ素子を用いることで、ビームフォーミングと呼ばれる技術により電波の送信を鋭いビーム状にして送信することが可能となる。これにより、無線伝搬減衰の大きい高周波数帯でも、その減衰量を補償して、数百メートルの距離までサービスエリアを確保することができる。

5Gに向けては、超多素子アンテナをより積極的に使用することで、その多重数を増やし、更なる高速・大容量化を図ることを目指している。この技術は一般にMassive-MIMOと呼ばれている。

ビームの形成は現状は水平方向のみを対象として運用されているが、現在の3GPPの標準化作業では垂直および水平の双方を考慮したビーム形成を前提とした議論が進められており、5Gに向けての超多素子アンテナにおいても、垂直及び水平方向のビーム形成を前提として検討されると考えられる。

引用: 第5世代移動通信システム「5G」とは? 

すごいざっくりした理解ではあるが、高い直進性に伴う障害物による電波の途切れを、多重電波を取り扱える複数の超多素子アンテナを中継基地局として用いることで、カバーするということだと認識している。

3. 5Gのもたらすブレイクスルー

5Gに向けた海外通信業者の動向_14p

5Gに向けた海外通信業者の動向_p21

引用抜粋: どう描く- ICTの未来予想図 5Gの海外最新動向@一般財団法人 マルチメディア振興センター

上記資料で、想定される事業シーンが列挙されている。
以下では、5Gの技術差分を軸に各産業領域における変革について整理する。

- 3.1. 超高速・大容量通信 -> 映像空間の共有

エンタメ領域では、スポーツ中継やVRなど、場所を問わずリアルタイムで映像データを送信することが可能になることによって、映像空間を共有することができるようになる。
また、インフラ領域では、ドローンを用いた検査において、検査結果や映像データをクラウドに送信することができ、ヒトのチェックやAIアルゴリズムを用いた自動検査を行うことができるようになるだろう。

- 3.2. 多数同時接続 -> 情報の共有と全体最適

多数のデバイスが同時で接続することができると、物流・交通や工場、ビルや街のマクロ最適化が進む。
自動運転では、自動車単体のエージェントが獲得した情報を周囲の自動車やクラウドに共有しマルチエージェントシステムとして捉えることで、渋滞情報や運送情報を全体で最適化することができる。
同様に、工場やビル、街などでも、様々なデバイスや店舗情報がウェブに接続されることでスマート工場スマートシティ化が促進される。

- 3.3. 超低遅延 -> 遠隔作業の可能性の拡張

超低遅延の特性から、遠隔作業の可能性が拡張し、遠隔医療や遠隔農業が推進する。とくに遅延が致命的である領域では、既存技術との差分が重要となってくる。また、超低遅延によって自動運転が可能になるといった文脈の情報もサーベイの過程で多く見られたが、自動運転は単一のエージェントとしても成立はする技術であり(ヒトや自動運転車でない自動車と通信できなくても成立する)、上述した多数同時接続によるより優れた連携において超低遅延であることも求められているに過ぎない

4. 実導入と本質価値の考察

5Gがどのように実導入され、価値を生み出すかという事を考える際に、技術だけでなく、導入インセンティブとなる「課題」や、実運用を実現するための「エコノミクス」、についても考察する必要があるだろう。

- 4.1. 5Gを導入することで解決したい課題について

5Gは4Gよりも優れいてることはわかったが、実際に5Gがなくて現在困っているか?という問いは本質的である。特に消費者向けのサービスでは、消費者は4Gでもある程度十分な通信を体験できているし、家やオフィスではWifiを利用することができているからだ。

速度・容量のアップグレードのみであれば現時点では4G延長で十分と認識されてしまい、5Gを利用するインセンティブは働きにくい。

引用: 最新動向/市場予測 5G@デロイトトーマツ

そのため、5Gの利用者は主に事業会社ということになる。

自動運転において、各自動車間における相互通信は、スマートで安全な交通・物流を実現する上で重要度が高い。5Gの最大需要は、自動運転社を販売・運用する自動車メーカー(またはUberのようなモビリティプラットフォーマー)と予測される

次に需要が大きいのは、ドローンや監視カメラをもちいたセキュリティ・インフラ管理の業界だろう。現在WiFiの接続されていない or 接続することが難しい領域において、情報通信のニーズが顕在化している(性質上映像データを送信する必要性がすでにある)場合に、5Gの必要性が高い。

一方で、スマート工場などの建物内の利用であれば、WiFiがすでにある(orWiFiをおけば良い)ため、5Gを用いるインセンティブが少ない。つまり、5Gがなければならない必要性・課題が小さい

以上のことから、5Gは、自動車やドローンなど、通信の必要性が高くかつ移動するデバイスにおける活用が期待されるが、他の領域では5Gを用いる相応のメリットがなければ、導入するインセンティブは弱まると考察できる。

参考: 最新動向/市場予測 5G@デロイトトーマツ

- 4.2. 5G事業者のエコノミクス

上記のように、5Gの特徴や性能について大きな期待が寄せられる一方で、5Gを提供するためには数十億ドル以上の設備投資を必要とし、その回収方法については不透明な部分も多い。

5Gによる新しいユースケースが全く新たな製品やサービスを生み出し、国の経済成長にも結びつくのは確実とされる一方、その新しい価値のうちどの程度を通信会社自身が享受できるのかはあまり明確になってはいません。

引用: 5G:今後10年のビジネスをリードするチャンス@デロイトトーマツ

こうした背景には、激しい価格競争に伴う利用者一人あたりの平均売上単価(ARPU)の低下、MBあたりの売上単価の低下がある。

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引用: 5G:今後10年のビジネスをリードするチャンス@デロイトトーマツ

5G:今後10年のビジネスをリードするチャンス@デロイトトーマツ では、5Gの競争優位においてソーシャルメディアと同じようにネットワーク効果が強く働くと言われており、5Gを先行して導入を進められた組織(国や企業)はその恩恵を得られるともされているが、上述した課題解決や価値について、後述する5G利用者のエコノミクスも合わせて検証を進める必要があるだろう。

参考: 最新動向/市場予測 5G@デロイトトーマツ
参考: 5G:今後10年のビジネスをリードするチャンス@デロイトトーマツ]

- 4.3. 5G利用者のエコノミクス

繰り返しになるが、一般消費者は5Gでないと解決できない課題を現状抱えてはいない(すくなくとも認識はしていない)。

世界モバイル利用動向調査 2019_p22

引用抜粋: 最新動向/市場予測 5G@デロイトトーマツ

実際上記のアンケートでは、消費者は、5Gに対してお金を払ってまでの必要性は感じていないということがわかる。

5Gを利用する事業者にとっても、
- 通信するデータ活用で生み出される付加価値よりも通信コストが小さいこと
- WiFiなど他の代替案よりも
通信コストが小さいこと 
の2つの条件をクリアする必要がある。

通信コストについては、

初期費用 + 通信に対する費用

と定義できる。

初期費用においては、5Gのメリットがおおきい。5GはWiFiに対して、初期工事が不要であることが期待される。専用の回線を引くためには、数ヶ月の期間を必要とするし、金銭的なコストも少なくない。実際、小売店舗や病院など、WiFiの普及すらなかなか進んでいないのは、こうした背景があるのだろう。

通信に対する費用は、すでに既存のWiFiサービスが定額制であることが一般的であるため、5G利用者のエコノミクスがあうためには、ある程度(5Gだからこそなせる水準の通信性能がもとめられる領域以外)の通信量に対して定額料金であることが求められるだろう。

以上のことから、5Gは、
- 通信するデータによる付加価値がある
- WiFiがまだない(or追加の通信が求められる)
- 初期工事が不要

- 通信量に対して定額料金である
という条件で導入・利用する相対的優位性が発生する。

5. エッジ処理vsクラウド処理

4章で記述した提供者と利用者の双方のエコノミクスが成り立って初めて、5Gの普及が進む。以下では、仮に5Gが普及した場合を想定して議論する。

AI(とくにDeep Learning)の技術革新によって、リアル産業のデータ化・デジタル化が進んでいる。AI アルゴリズムを用いる際に、エッジデバイスで計算処理を行うか、データをクラウドに送信してクラウドで計算処理を行うかという大きく2つの選択肢があり、過去の歴史を遡ってみても、エッジ処理とクラウド処理はハードウェアの性能通信コストプライバシーとセキュリティの配慮によって流行が変わってきている。

- 5.1. ハードウェア性能から見た計算処理

近年エッジデバイスの性能も飛躍的に向上し、かつ低単価で利用できるようになってきた。例えばJetson Nanoだと以下のような金額感で購入できる。

一方で、エッジ処理問題点としては、維持管理運用コストが挙げられる。Deep Learningのモデルを軽量化してたとしても、計算処理負荷は大きく、実際のサービス運用では故障なども含めて維持管理運用コストがかさむことが懸念される(ハードウェア(エッジデバイス)の長期安定性が求められる。)近年、1年以上計算負荷耐久性のあるエッジデバイスなども開発されつつあるが、それでもデータを送信してクラウドで処理をする方が安定運用はしやすいだろう。

- 5.2. 通信コストから見た計算処理

通信量に関して言えば、エッジデバイスで処理を行った計算結果を通信したほうが、圧倒的に通信量が少ない。数MBの画像ファイルに対する計算結果のjson出力でも、数KBで住むことを考えれば、1000倍ほどの計算量の違いがある。
一方で、先述したとおり5Gが通信量に対して定額料金である場合は、結局金銭的なコストが少なくなる。5Gが従量課金となる可能性もあるものの、WiFiとの差別化を考えれば、5Gが定額料金となることは十分に期待でき、その場合通信コストの観点からはエッジデバイスでもクラウドでも変わらない

- 5.3. プライバシーとセキュリティからみた計算処理

プライバシーやセキュリティの観点から、元データ(とくに映像データ)をクラウドに通信することは否定的な現場も多い。とくに消費者向けのサービス(小売・飲食店など)や、機密性の高い場所(製造業の工場など)は、映像データをクラウドで保持管理することは現場になじまない。エッジデバイスでの処理でなくても、少なくともオンプレミス対応が必要となる場合が多い。

法規制の変化や、現場におけるクラウド理解が進めば、5G活用で計算処理をクラウドでおこなえるようになる可能性はあるが、現実的にはエッジ処理をして、必要な出力結果のみをクラウドで管理するという運用になるだろう

一方で、ヒトの顔にモザイクをかけた映像に加工してから送信したり、データを暗号化したまま計算する秘密計算を用いることによって対応可能になる可能性もある。

6. まとめ

- 5Gは、1. 超高速・大容量通信、2. 多数同時接続、3. 超低遅延の特徴を持つ
- 5Gは、高周波数帯域の活用を可能にする超多素子アンテナ技術によって実現されると期待
- 5Gは、自動車やドローンなど、通信の必要性が高くかつ移動するデバイスにおける活用が期待されるが、他の領域では5Gを用いる相応のメリットがなければ、導入するインセンティブは弱まる
- 5Gが導入されるには、1. 通信するデータによる付加価値がある、2. WiFiがまだない(or追加の通信が求められる)、3. 初期工事が不要、4. 通信量に対して定額料金である という条件を満たす必要がある
- 5G事業者(提供者)のエコノミクスはやや不透明
- 5G利用者にとっても、通信するデータ活用で生み出される付加価値およびWiFiなど他の代替案よりも、通信コストが小さいことが必要
- 維持管理・コストの観点からはエッジデバイスで処理するよりも5G&クラウド処理の方が経済合理性が高くなる可能性が高いと予想
- プライバシーやセキュリティの配慮が必要なシーンでは、エッジデバイスでの計算処理が主流となり、クラウド通信するには様々な配慮が必要と予想

7. 最後に

【リアル産業のデジタル活用を行いたい方↓】

【会社紹介↓】


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ACES,inc. CEO/東大松尾研究室修士/ 投資(日本株、仮想通貨)/サッカー(バルサ)/夢はポケモンマスター/ポーカー koichirotamura.com