見出し画像

テクノロジーと倫理

約十二年前、新潟大学工学部の入学オリエンテーションの際、学部長より「アメリカでは死刑囚を被検体として、脳に小型の機器を取り付けて反応を観る実験が行われているが、日本は法令が邪魔をして同様の実験が行えない。こうした実験結果はゲーム等に応用可能であるが、日本は遅れている。」という旨の発言を耳にし、日本のテクノロジーを専門とする学者が、自身の専門分野に閉じこもり、生命倫理を度外視している事に唖然とした記憶があるが、此度のイーロン・マスクの経営する「ニューラリンク」による発表を聞き、いよいよ、あの時、聞いたディストピア幻想が彼の国で現実のものになりつつあると喫驚している。日本では同様の事が起こらぬよう、法と倫理に基づいて、専門家と技術者の暴走を食い止める必要がある。
COVID-19のパンデミックの際、臨床試験を十分行わぬまま、RNAワクチンの接種の強要が世界規模で起こり、副作用に苦しむ者が相次いだが、二十世紀に医学分野にて同様の悲劇が発生しているのにも関わらず、現代人は洋の東西を問わず、自然科学の齎す危険性を考慮せずに、専門家へ疑義の目を向けない傾向がある。「歴史は繰り返す」という古諺があるが、前世紀をそっくりそのまま繰り返すのは愚行と言わざるを得ない。一度目は悲劇、二度目は喜劇であったが、三度目は、悪しき二例を知っている以上、何としてでも回避すべきと考える。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?