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より良いオペレーションのためのプロダクトとは?お届けチームが探索する「現場リサーチ」〜プロローグ〜

この記事は 10X アドベントカレンダー20236日目(12/6)の記事です。
5日目(12/5)の昨日は、ブロッコリーさん(@broccoli)による「DevOpsのループ図およびシフトレフトテスト/シフトライトテストについての考察」でした。

さて、毎年12/6は「音の日」だそうです。今年は幸運にも推しのライブに足を運ぶことができまして、最近は彼らの昔のレコードを集めているのですが、状態が良くかつお手頃で・・・といったのが中々見つかりません。来年は良い出会いがありますように!

ということで本日はProduct Managerのこういち (@koichi_miyamae) が、お届けチームで行っているリサーチ活動についてご紹介します。

Stailerとお届けチームについて

10XはECプラットフォーム「Stailer」を提供し、スーパーやドラッグストア等 (以降、パートナーと呼びます) のオンライン事業立ち上げ・運営支援を行っています。

Stailerはオンライン事業 (≒ ネットスーパー、ネットドラッグストア)を運営する全ての仕組みを提供しており、お届けチームはそのうち、パートナーが業務で利用する仕組み(店舗スタッフ・配送事業者向けのピッキング・配送管理等のシステム)を管轄するチームです。

Stailerが提供する仕組み

お届けチームは執筆時点で、SWE5名、QA3名、Designer1名、PdM1名の計10名で構成されています。開発チーム体制が爆誕した背景についてはこちらの記事をご覧ください。


お届けチームが行う現場リサーチ

お届けチームでは重要な活動の1つとして、定期的な現場リサーチを行っています。 実際にネットスーパーを運営する店舗にお伺いしオペレーションを観察します。

お届けチームが提供するプロダクトは、オペレーションを効率的・確実に行うために存在しています。そのため、プロダクトの仕様やプロダクトに残るin/outのデータだけ見てても極めて断片的な理解・情報にしかなりません。より最適なオペレーションを実現するためにプロダクトがどうあるべきか、プロダクトで解決しないことも含めて認識することが重要であり、そのための解像度を上げる取り組みの1つと位置づけています。

現状はプロダクト開発において主にDiscoveryフェーズで訪問することが多く、いわゆるフィールド調査やユーザーインタビューをミックスした形式です。概ね月1回、チームの全員が1回以上、各パートナー1回以上を目指してリサーチ活動を設計しています。

この定期的な現場リサーチを立ち上げるにあたっては、前職でリサーチの推進を間近に見せて頂いていた @mihozonoさん、@_koki_kさんの共著はじめてのUXリサーチや、今年イベントもご一緒させて頂いた株式会社Shippio @K_Nishitoさんの資料も参考にしています。この場を借りてお礼申し上げます。

本日はアドベントカレンダーということで、"概ね月1回、チームの全員が1回以上、各パートナー1回以上を目指してリサーチ活動を設計" の背景について、簡単にご紹介します。

1/ なぜ月1回か?

実は当初、「なるべく多くの機会を作りたい、隔週はどうか」という提案がありました。というのもお届けチームでは2週間サイクルのスプリントで開発を行っており、アプリも2週間毎に定期リリースをしています。「日々のちょっとした改善リリース」の探索であれば、本来上記の2週間サイクルに沿う形で隔週で行うのが良さそうです。

一方、まだまだ現場リサーチプロセスそのものの立ち上げ時期のため、1リサーチあたりの準備〜振り返りコストがチームで使えるリソースに対して高く、隔週だと負担が大きすぎます。逆に隔月だと、「◯◯という機能を設計前に現場でオペレーションを確認したい」といった具体的なニーズが発生しても、最長で2ヶ月待つことになります。それでは現場リサーチがブロッカーになってしまい、思うような開発サイクルが作れません。そういった背景から現在は間をとって月1回をペースにしています。

月1回だと店舗にお伺いする時点では調査項目が確定していることが少なく、まずは大まかな内容で日程だけ抑え、後日具体的な中身を調整することが多いです。柔軟に受け入れてくださるパートナーの皆様には感謝しています。

パートナーへ依頼する際の資料より抜粋

2/ なぜチーム全員か?

1つはチーム内で共通認識を持ちたいからです。お届けチーム組成当初はイベントストーミングなど座学で共通理解をつくることもしましたが、イベントの付箋で表現される前後の文脈であったり、プロダクトに表現されない行動までは可視化できません。実際に店舗で見たものをイメージしながら、「あのときこうだったよね」と会話できることで、より良い議論ができていると感じます。

もう1つは、最終的にアウトカムの質を高めるためです。 チーム全員が店舗を訪問する、すなわちSWEやQAなど職種問わずリサーチに参加することになります。リサーチの目的は、リサーチをして課題や仮説を見つけだけではなく、最終的なアウトカムのためであり、そのための入り口の活動と位置づけています。そのため、最終的にデリバリーに関わるメンバーも含めて解像度が高い方が、後工程が圧倒的にスムーズで質が高くなります

これについては、最近10XのProduct Managerたちで開催している輪読会の題材「INSPIRED」でも以下のように書かれています。

エンジニアの1人が同席して定性的テストを観察しているときに何度も魔法が起きる

INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント

私も実際にSWEと何度か店舗に足を運んでいますが、店舗のバックヤードで課題〜解決策まで一緒に考えたり、帰りの電車* で実装の相談をし翌週のスプリントで実装進めるなど、良いシナジーが生まれていると感じます。
(*移動中の機密情報管理は徹底しています)

ここで現場の課題解決をとても大事にしているSWE @teshi04 さんの、僕も好きな言葉を紹介します。上記を爆速で推進している1人です。

お客様に価値を届けるオアダイ

https://twitter.com/teshi04より

まだまだリサーチの立ち上げ期としてPdM もしくは Designerが必ず1人以上行くことが多いですが、調査記録のテンプレートを用意して、誰でも一定のリサーチの質を担保できるように型化も随時進めています。

調査レポートのテンプレートより抜粋

3/ なぜ各パートナー1回以上か?

ネットスーパーのオペレーションは、パートナー単位・店舗単位・日単位・注文単位、それぞれ大なり小なり異なり、1つとして同じ状態はありません。もちろんマニュアル化したオペレーションがベースにありますが、店舗の導線によって可能なオペレーションが異なりますし、その日の注文状況やシフトによっても差分が生まれます。

Stailerはあくまでプラットフォームのため個別最適は目指しませんが、個別の課題を把握した上で共通の課題を見つけ出し、プラットフォームとして解決することが求められます。そのため、とくに差分の大きい「パートナー」という単位について、なるべく全てのパートナーを1回以上訪問することを目指しています。

また都市部だけでなく地方にも目を向けることを意識しています。10Xはオフィス出社・リモート勤務を自由に選択できるため、日本全国に社員が居ます。ただ私含めて都市部に住んでいるメンバーも多く、調整がしやすい・普段つかっているパートナーのお店、に意識が行きがちです。
例えば、地方の大型店だと店舗面積が広く現場スタッフ間のコミュニケーションがとりにくい、店内の歩行距離が長い、扱う商品の種類が多い、であったり、ルーティングシステムの前提となる道路事情が大きくことなる、といったことも都市部の店舗だけを見ているとわかりません。

以上が "概ね月1回、チームの全員が1回以上、各パートナー1回以上を目指してリサーチ活動を設計" の背景でした。


突然ですが、三種の神器をご紹介

終わりの前に、リサーチの現場で大活躍する三種の神器をご紹介します。

ストップウォッチ

現場スタッフの業務スピードを計測するのに利用します。


メジャー

スペースの幅や棚の高さ、什器の大きさを確認するのに使います。レーザー距離計 (赤外線メジャー)を持っている方もいます。


モバイルバッテリー

リサーチでは1日中スマホで、録音・録画・写真撮影・Slackを使うのでこれがないと仕事になりません。お店のバックヤードは電波が弱いことも多く、バッテリーの消耗が激しいです。ankerは偉大です。

その他、@tsukui7さんは電動ドライバーを持ち歩いているとのことです。棚の高さは男性目線で設置されていることが多いのですが、現場スタッフの方は小柄な女性も多く、高さが負担になることも多いようです。その場で一緒に棚を分解して、高さ調整をすることもありました。

2024年に向け、より進化したいこと

本題に戻ります。私はまだまだ現場に行く度に、何も知らないということを知ります。オペレーションは日々アップデートされますし、パートナーも増えるため、この活動に終わりはありません。

来年はより現状のリサーチの型化を進めて1回あたりのコストを下げつつ、より後続の工程での活用としてユーザビリティテストの実施なども行っていきたいです。また現場スタッフ(日々のオペレーションを担当する社員やパートの方)の解像度は上がってきたものの、本社でネットスーパーを管理する方や複数の店舗を束ねる管理者の方の業務解像度はまだまだ高くありません。リサーチのスコープとして、現場の深さに加えて、スコープの幅も広げて行きたいと思っています。


お知らせ

最後までお読み頂きありがとうございました。現場リサーチの詳しい取り組みについては近日10X Blogでも公開予定です。こちらも併せてお読みいただけると嬉しいです。というわけで今回は"プロローグ"のお届けでした。

[12/19追記] 10X Blogが公開されました!

また、toB向けリサーチの試行錯誤をしている方、お届けチームの活動についてもっと知りたい!という方、ぜひ情報交換しましょう。XでDM、またはカジュアル面談フォームまでお気軽にご連絡ください!

10X アドベントカレンダー2023 7日目の明日はProduct Managerの@enaminnnがお送りします。


Happy holidays! :)
こういち

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