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タジェン バリ島の思い出

2018年12月インドネシアはバリ島に10日間ほど滞在したときのお話。インドネシアはイスラム教徒が大多数ですがバリ島は4,5世紀頃からジャワ島経由でヒンドゥー教や仏教が伝えられバリ土着の信仰が混じり合った信仰体系となった。これがバリ・ヒンドゥー教といわれます。

神々が住む島と言われるバリは絶景スポットや綺麗なビーチが多数あり世界中からリゾート目的で人々が訪れますが飲んで踊って泳いでサーフィン出来てもギャンブルは御法度です。インドネシア自体はイスラム国家なので賭博行為は違法なんですね。

だけど魚心あれば水心、というかタジェンという賭博が存在します。タジェンというのは闘鶏で単純なハナシ鶏同士が戦ってどちらが勝つかを賭けるギャンブル。でもこれはれっきとしたバリ・ヒンドゥー教の宗教儀礼として認められているんです。ただし儀礼として開催される闘鶏は3試合らしくたった3試合でアツくなった男達が”じゃ、ウチに帰るか”なんてなるわけないんですよ。

で、このタジェンの様子をカメラにおさめたくて現地でガイドさんを雇いました。Kさんていうバリ人ですが無類のタジェン好きです。ま、どこにでもギャンブルに熱くなる人はいますよね。Kさんに今日の開催情報を調べてもらって午前中は観光地を訪れてバビグリンを食べながら午後の開催を待ちます。

“コーイチさん、行きましょう” 情報収集の電話を切った直後の目の輝きが午前中に訪れたライステラスにいた時と全く違う。なんだよこのオッさん。

車を降り、なだらかな坂を登りながら四角い闘鶏場に近づくと歓声が響いたと思ったら急に静まりまた沸き返る。男たちが目をギラギラさせ大声を張り上げる様子は鉄火場ならどこでも同じ。バリ人男性というとおだやかな微笑みを浮かべているイメージなんですがこの場所では感情をストレートに出すようです。

鶏達は10センチほどの鋭い小刀を赤い糸で蹴爪に括り付けて戦うんですがこれはバリ語でタジと呼ばれタジェンの語源らしいです。人間に例えれば防具なしの真剣で斬り合うわけですから勝敗のつき方はかなり悲惨です。まずは単純に死んだほうが負け、逃げ出したら負け、ダウンして11秒カウントされたら負けとのこと。死んだ鶏は勝者のオーナーが持ち帰ります。

Kさんは意を決して多分日当ぐらいの金額を賭けましたが外しました。僕も成り行き上Kさんに乗って同額を失います。2勝負しましたがオッズとかがよく分からない。最初は負け、次は勝ちましたが1.9倍戻し。Kさんは使えるお金を全てスッたらしくその目は既に仕事モードでした。

5試合ほど見てましたが中入りらしく夕方再開とのことで客は一斉に引けます。勝った時に賭けていた鶏のオーナーがバイクのハンドルに勝った鶏が入った籠と死んだ鶏をぶら下げて去っていきます。バリ島は実用的なスクーターが多いのですがこの男は趣味性が高いかなりいじったオフロードバイクのバーエンドに勝者と敗者を引っ掛けて僕とKさんの間をすり抜けていったんですがこれが妙にカッコよかった。

帰国してタジェンについて調べていたら”男達がタジェンに向かう時、妻や子供は行き先を尋ねてはいけない、もし尋ねたら鶏が死ぬ。 ”という言い伝えの話を読んだんですがこれは都合良すぎでカッコ悪いですな。




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