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収容するけど外に出さない、上限がないので無期限長期収容が生じるのは当たり前

2021年5月9日のChoose Life Projectで、現在の改悪法が出るに至った経緯として2016年の通達が挙げられていました。

通達等の現物を交えて、もう少し詳しく流れを説明します。以下の難民支援協会がまとめてくれた資料を参考にさせてもらいました。ありがとうございました。


2015年 9月 18日退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について(通達)

ここでは、以下のように書かれています。

傷病者はもとより,訴訟の提起・係属,難民認定申請中,旅券取得困難など送還に支障のある事情を有するために,送還の見込みが立たない者については,更なる仮放免の活用を図ると同時に,所要の体制を整え,被退令仮放免者の動静監視の強化に努めることとし,本年10月1日から実施するよう通達します。
(中略)
なお,平成22年7月27日付け法務省管警第172号「退去強制令書により収容する者の仮放免に関する検証等について(通達)」は本通達をもって廃止し,本通達後は,退去強制令書発付後継続して1年(再収容の場合は再収容から1年)を超えて収容する必要がある被収容者については,その理由及び今後の措置方針を付して本省に報告願います。

この通達にあるように、このころは、長期収容といっても、1年を超えるような場合(それでも十分長いですが)には仮放免が許可されているような状況でした。

2016年4月7日 安全な安心な社会通達

ところが、2016年4月7日にこの通達が出されました。

この通達で、このように書かれたことが出発点だと思います。

安全・安心な社会の実現のためには,国内の安心を確保することが重要な要素とな
るところ,近年増加傾向にある不法残留者及び偽装滞在者(以下「不法滞在者等」と
いう。)のほか,退去強制令書が発付されても送還を忌避する外国人(以下「送還忌
避者」という。)など我が国社会に不安を与える外国人を大幅に縮減することは,円
滑な出入国審査,厳格な水際対策,適正な難民認定審査などとともに,当局にとって
の喫緊の課題となっています。

2016年9月28日 被退去強制令書発付者に対する仮放免措置に係る適切な運用と動静監視強化の徹底について(指示)

仮放免中の人たちの動静監視が不十分、もっとちゃんとやれ、という法務省入管局長指示です。

2018年1月12日 難民認定制度の適正化のための更なる運用の見直しについて

以下のとおり、当局が濫用的と判断したり、複数回申請者は「在留制限」、つまり、収容するという方針を打ち立てました。

2018年2月28日 仮放免運用方針

そして、悪名高き黒塗り運用方針です。

これによって、従来は解放されていたような方々がぱったり仮放免されなくなりました。

2019年11月11日 収容・送還専門部会資料(入管庁作成)

で、こちらの資料です。引用元はこちら。

2016年(平成18)年末と翌2017年(平成19)年末とでは、6月以上の被収容者が倍くらいになっています。

そして、この表。

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下に行くにつれて、6月以上1年未満の割合が減少し、3年以上とか2年以上とかが増えていっているのがわかります。

当然ですね。収容しても外に出さないのですから、どんどん長期化していくのは当然です。

長期収容問題は、入管が従前なら仮放免で解放していた人たちを出さなくなった、そして、上限がないので長期化していった、それだけのことです。

おそらく、外に出さないことで被収容者を国費送還ではなく、あくまで「自発的」に帰国することに追い込もうとしたのでしょう(「自粛の要請」みたいですね)。

ですが、送還されたら命の危険があるとか、家族が日本にいるとか、本当に帰れない事情を抱えた人たちが送還には応じないことから、どんどん長期化していったにすぎないのです。



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