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元受刑者が監理措置の対象外とされることが確実な理由

法案公表前にされた、昨年秋の読売新聞のリーク記事を見直して、元受刑者人が監理措置の対象外とされることは間違いないと確信しました。

読売新聞2020年9月22日朝刊記事

読売新聞の上記記事によれば、「関係者によると、新設される『監理措置』では、入管難民法の規定で送還が停止される難民申請者やその認定を巡って訴訟中の外国人らが対象となる。前科や逃亡のおそれがある場合は対象から除外される。」とされています。

監理措置は入管が「その他の事情」も考慮して「相当と認めるとき」に認められる

この「監理措置」、2021年2月19日に閣議決定されて法案が公表され、ようやく具体的な要件が明らかになりました。

監理措置は、逃亡、罪証隠滅などのおそれの他「その他の事情を考慮」し、主任審査官(入管職員)が「相当と認めるとき」に認められ、収容されずにすみます。

その問題点は、以下で指摘したとおりです。

2020年9月22日の読売新聞報道の段階では、法案は公表されておらず、この記事の内容は、入管当局がリークしたものです。

そこに、はっきりと「前科や逃亡のおそれがある場合は対象から除外される。」と書いてあるのです。

その後、前科のある人を条文で対象外とすることはさすがに予防拘禁になってしまうので、まずいと思ったのか、条文には明記されていませんが、2020年9月22日に読売新聞へ情報提供をした関係者は前科のある場合は対象から除外するとはっきり説明していたのです。

予防拘禁については、こちら


他の条項が示す前科のある人への厳格対応

また、政府案では

1 1年を超える実刑判決を受けた者は在留特別許可の対象から原則として外す(50条1項ただし書)

2 3年以上の実刑判決を受けたものは難民申請中であっても強制送還を実施できる(61条の2の9第4項2号前段)

として、実刑判決を受けた方の排除方向を強く打ち出しています。

ハナから出すつもりなし

法務省が2019年10月1日に公表した「送還忌避者の実態について」によれば、送還忌避者のうち43%が有罪判決を受けている、「我が国で罪を犯し刑事罰を科された者や退去強制処分歴又は仮放免取消歴を有する者を仮放免することは、我が国の安全・安心を確保する観点から認めるべきではなく、一刻も早い送還を期すべき。」としています(今はWebで見られなくなっていますので、画像を貼り付けます)。

送還忌避者の実態について

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長期収容の解消にならない

このように読売の前記報道や、実刑判決を受けた人への厳しい対応をする法案の姿勢、そして、収容・送還に関する専門部会設置前に公表されていた資料からすると、実刑判決を受けたことが「その他の事情」として考慮され、「相当と認める」ことはできない、として、監理措置の対象外とされることは間違いないでしょう。

法務省による明らさまな差別

2014年12月26日、犯罪対策閣僚会議は、「宣言 : 犯罪に戻らない・戻さない  ~立ち直りをみんなで支える明るい社会へ~」を公表しました。

ここでは、次のように述べられています。

 犯罪や非行をした者は,服役するなどした後,再び社会の一員となる。

 犯罪や非行が繰り返されないようにするためには,犯罪や非行をした本人が,過ちを悔い改め,自らの問題を解消する等,その立ち直りに向けた努力をたゆまず行うとともに,国がそのための指導監督を徹底して行うべきことは言うまでもない。

 それと同時に,社会においても,立ち直ろうとする者を受け入れ,その立ち直りに手を差し伸べなければ,彼らは孤立し,犯罪や非行を繰り返すという悪循環に陥る。地域で就労の機会を得ることができれば,自分を信じることができる。住居があれば明日を信じることができる。彼らの更生への意志は確かなものとなり,二度と犯罪に手を染めない道へとつながっていく。

 同じ法務省なのに、在留資格のない外国人については前科があることで外に出さないという予防拘禁を推し進め、他方でそれ以外の人については社会内で受け入れることが重要であるとしているのです。なんとわかりやすい差別でしょうか。






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