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2001年当時のニュー・ジーランド難民審査実務 インタビューは2〜4時間 異議の決定は半年以内

今から20年以上前の2001年5月、NZの難民の地位控訴局議長 ロバート・アラン・マッキー氏が東京地裁で丸2日間かけて、難民条約の解釈は求められる公正な手続などについて証言をしました。

今やっている訴訟の証拠として提出しており、次回の書面作成にあたり読み直しているのですが、現在でも十分通用する内容を含んでいます。

国側の反対尋問を読んでいるのですが、改めて驚かされるとともに、これくらいが当たり前だよなと思ったりもします。

・一次申請のインタビュー時間


NZ
通常2時間〜4時間

日本
日本だと1日がかりを何回かに分けることも珍しくない。

・インタビューの報告書

NZ
草案が申請者や代理人に送られ、間違いがあれば訂正できる。

日本
一次審査のインタビュー結果を記載した供述調書を自分で見るために、別の個人情報開示請求をしないといけないし、訂正もできない。

・異議の審査期間

NZ
異議申出後、ヒアリングは6週間から3か月以内。これは申立人が法律扶助を受けたり、準備に必要な期間を設けるもの。ヒアリング後6週間から10週間の間に決定が行われる。基本的には尋問後3か月以内にすべての決定を行うことにしている。

日本
日本の審査請求の平均は2023年は9.9か月。「令和5年における難民認定者数等について」参照。その前は下表のとおりで、これは年間1000件処理する臨時班による書面だけの審査によって期間短縮がされているものと思われます。

出入国在留管理庁公表資料より筆者がまとめた。

・決定書の公開

NZ
個人情報を削除してデータベースに公表。

日本
公開されない。

・異議でのインタビュー実施率

NZ
異議では85〜88%はインタビューを実施する。

日本
「令和5年における難民認定者数等について」によれば、2023年日本で口頭意見陳述を実施したのは384人。不実施が2212人=実施率15%弱で丁度数字が逆転している。

・難民として認定された者の追放

NZ
認定された難民は難民条約32条「締約国は、国の安全または公の秩序を理由とする場合を除くほか、合法的にその領域内にいる難民を追放してはならない」に基づいて退去強制の対象となるか判断される。

日本
2024年6月10日施行の改定入管法61条の2の9第4項2号では、「無期若しくは三年以上の拘禁刑に処せられた者」など、「国の安全または公の秩序」を害するとまではいえない場合にも送還停止効を外され、強制送還が可能とされた。

・認定後の永住権、選挙権

NZ
難民認定されると大多数が永住権を付与され、これに付随して選挙権も取得できる。

日本
「定住者」の在留資格が付与される。「永住権」は「永住許可に関するガイドライン」で認定後5年経過する必要あり。2024年の第213回通常国会では永住許可を取り消しやすくする法案が通ってしまった。選挙権を得るには、帰化して国籍を取得しないといけない。

・不法入国に対する刑事処分

NZ
不法入国は刑事処分の対象にならない。

日本
入管法70条1項2号、2号の2で3年以下若しくは300万円以下の罰金。しかし、国連の恣意的拘禁作業部会は2018年2月7日の「改定審議結果5」第10パラグラフで、非正規滞在等は刑罰の対象とすべきではないとしている。

・制度改善後の申請数の増減

NZ
ニュージーランドで難民1990年に難民認定制度の大幅な制度改善が行われたが、申請者は「増えているとは言えませんが、増えているとか下がっているとか、どちらか一方向に大きく変化しているとは言えません。」「私どもの意図としては、迅速にそして正確に質の高い判断を下すことによりますが、そうしたことから、全く根拠のない申請をしようとする者が気持ちをくじかれて、そうしなくなった現れであってほしいと思っております。というのも、この権利を濫用して申請を行おうとする者が、異議申立ての手続を進めて行くにあたっても、もし6週間で最終的な判断が行われ、その後すぐに退去強制という措置が取られるのであれば、長くそういう手続を取ろうというインセンティブがなくなると私は考えております。」

日本
今の厳格な難民認定基準を緩和したら申請者が激増するのではという、何ら裏付けのない懸念が表明されることがある。また、先の表のとおり、日本の一次審査は2022年33.3か月、2023年26.6か月。迅速かつ正確性の高い判断により濫用者のインセンティブをなくそうという試みはない。

・本国への情報照会

NZ
「恐らく本国の政府の関係者のところに情報を求めるということはやらないと思います。というのも申請者本人に危険が及ぶというリスクが非常に大きくなるからです。」

日本
2004年にトルコ国籍のクルド難民に関する調査のため法務省職員が現地を訪問し、個別事案について調査を行った。日本弁護士連合会が警告を出している。

・難民該当性判断の順序

NZ
迫害の現実的危険が認められるかどうかをまず判断して、その迫害が難民条約上の理由に基づくものかという判断をする、これが一般的な順序である。

日本
ある難民審査参与員は、まず難民条約上の5つの理由に当てはまるかを申請書だけ見て判断し、「その他」なら他は検討しないで不認定にする。だから月1000件処理できる。

この20年間で全く追いつけておらず、おそらくNZはずっと深化しているので、差は開くばかりなのでしょうね。

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