知ってる!環境のこと(第37話)

⁂データや内容は、当時のものとなりますので、ご理解ください。

みなさんこんにちは、いかがお過ごしでしょうか?今回のテーマは、“ミミズコンポスト” です。ミミズコンポストとは、ミミズを使ってて生ゴミを分解し、堆肥化することです。実はその歴史は古く、進化論で有名なチャールズ・ロバート・ダーウィン(Charles Robert Darwin)が、ミミズの土壌形成に果たす役割を最初に指摘しています。最近は日本でも少しずつ知名度を得ているようです。ここタイでも今注目を浴びています。チェンマイのメージョー大学には、タイ初のミミズ情報センターがあり、ミミズコンポストの普及に中心的な役割を果たしています。
 
コンポストに使われるミミズとは
ミミズは、世界に3,000~4,000種いるといわれていますが、どんなミミズでもコンポストに使える訳ではありません。ミミズは、大きく二つの種類にわかれます。シマミミズのように野菜くずなど腐敗有機物を餌とするものと、フトミミズ類の多くのように腐植を含んだ土壌を主に餌とするものです。コンポストに使われるのは、シマミミズの仲間達、中でも、Eisenia foetida と Lumbricus rubellasが最も効率的だといわれています。また、ミミズは1日あたり自分の体重の半分から同量程度の餌を摂取するため、餌となる生ゴミや新聞、おがくずなどの投入量は、ミミズの量により調節します。
 
ミミズコンポストの長所
ミミズのコンポストがまた注目を浴びている背景には、その有用性に注目が集まっていることに他なりません。
 
無臭
ゴミ箱などが臭いのは、酸素のないところで生ゴミが腐るからです。ミミズコンポストは、十分に酸素が供給して生ゴミを腐らせ、ミミズに食べさせるので、匂いはほとんど無いのが特徴です。勿論、多少は臭いますが、蓋をしておけば、家の中に置いても大丈夫です。

小スペース
小ペースで生ゴミを処理が可能です。従来のコンポストは、主にバクテリアに生ゴミを処理させるため、大変時間とスペースを必要とします。アパートやマンション、また大きな庭のない家でも十分可能です。

電気を使わない
ミミズという生き物の力を借りて生ゴミを処理させるため、電気を使いません。家庭用生ゴミ処理機は、大量の電気を使います。24時間ほとんど電気を使い続けるものもあり、発電に大量の資源を使用していることを考えると、残念ながら環境保護とはいえません。

低コスト
市販されている容器もありますが、不用になった木箱やプラスチックの容器、プラスチックの収納容器などで十分にミミズを飼うことができます。その他に必要なものは、ミミズ、古新聞、水だけです。ミミズ購入費用などの初期投資のみで、コンポストを行うことができます。

早い
ミミズは24時間で自分の体重の半分からそれ以上の重さの生ゴミを処理します。1㎏ミミズ(約2、000匹)がいれば、一日に500g~1㎏以上の生ゴミが処理できる計算です。平均的4人家族の台所から出る生ゴミは一日あたり0.7㎏~1㎏と言われていますから、ちょうどいい量です。ただ、最初は、ミミズを環境に慣らすため、1,000匹(約500g)くらいからはじめた方がいいようです。ミミズのサイクルは3ヶ月ですので、すぐにたくさんの生ゴミが処理できるようになります。

良質の有機肥料ができる
非常に質の良い有機肥料を得ることができます。ミミズの糞には普通の土より5倍の窒素分、7倍のリン、11倍のカリウムが含まれています。また、土の中の栄養分を根が吸収しやすいように調整し、作物の成長を助ける大量の微生物を含んでおり、その数は、食べる前より数倍に増えます。病原菌はミミズがお腹の中で消化してくれるため、作物が病気にかかることもありません。その他、フミン酸(腐植酸)という土壌の状態を調整する物質も多く含まれており、土壌改良剤としての用途もあります。もちろん、化学肥料のように肥料焼けもありませんから、非常に高い付加価値がつきます。あるタイの業者は5キロ/140バーツの値段で販売しています。
 
食用になる
ミミズの肉は軟骨がなく、鶏や家禽類を育てる良質なタンパク質飼料や釣りの餌として利用されていますが、アメリカのカリフォルニアでは、料理コンテストが開かれるほど、ミミズ料理が食べられているようです。また、ルンブルクスルベルス(赤ミミズ)は、血栓症や糖尿病、がん治療の効果が確認されており、薬品や健康食品の一部として使用されています。
 
ミミズコンポストの注意点
ミミズコンポストは、万能ではありません。肉や魚を大量に入れると、腐ることがあります。また、みかんの皮などは、リモネンと言われる成分がミミズを殺してしまうことがあります。刺激臭の強いにんにくや玉ねぎ、調理されたものも基本的にNGです。
 
また、ミミズをコンポストだけでなく、養殖も兼ねる場合、与える餌が、農薬や重金属に汚染されていないか十分に気を配る必要があります。これらはミミズにとっても毒ですが、彼らは強い耐性を持っているため、生物濃縮(ある種の化学物質が生態系での食物連鎖を経て生物体内に濃縮されてゆく現象)を引き起こすからです。実際、この様なミミズを食べた鳥が大量に死んだ例も報告されています。ただ、イギリスでは、これを逆手にとり、汚染された土壌をミミズを使って浄化する方法を実用化しており、今後タイでもこの技術が注目されるでしょう。
 
タイのミミズコンポスト
現在北部タイでは、タイ国立科学技術発展機関北部ネットワーク(National Science and Technology Development Agency Northern Network)の協力により、メージョー大学のミミズ情報センターが中心となり、昨年の9月から、ミミズコンポスト普及活動が本格的に行われています。特に農家の人々の関心は高く、研修の開催日を急遽増やす事態となっています。また、より効率的なコンポストを行うため、北部タイに生息するミミズをリストアップして、各個体を詳しく調査するプロジェクトも同時進行しています。今後の研究の結果が待たれるところです。更に、将来、日本の例にもあるように、製紙工場や繊維工場などが、自社工場で出る製紙スラッジや繊維クズを処理するためにミミズコンポストを行うところが出てくるかもしれません。何れにしても、タイのミミズコンポストはまだ始まったばかり、今後の動きに注目です。

CHAOちゃ~お ちょっとディープな北タイ情報誌
(毎月2回10・25日発行) 2007年6月25日第 101号掲載

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