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愛すべき爪タイム

まずはこの写真を見てほしい

今の私の爪。服はジャージだけど、綺麗でしょ。自分で塗った。なんで全部キレイに塗らんの?って思われそうだけど一応ニュアンスネイルのつもり、というのは建前で本音は「こういうデザインなら剥げてきてもバレないかもしれん」と思ったからこんな塗り方をした迄である。Twitterで見かけたネイルデザインを参考にしたものの、使用するマニキュアが違うのもあり同じ仕上がりにはならない。でも気に入っている。

左手(1枚目)は、昔練乳を容器ごと煮ると中身がキャラメルになると聞いて、実践したのを思い出した。3時間茹でた練乳チューブからは、山吹色に一滴だけ濃密な黒を混ぜたような色のキャラメルペーストが飛び出す。きっと、3時間かけて練乳がキャラメルになっていく過程で、チューブの中の光景は私の左手の爪みたいになっていたのだろう。とても美味しかったし、あの練乳キャラメルもまた作ってみようか。

右手(2枚目)は、夏にスコールが降ったあとの晴れた空みたいだ。下の写真で伝わるといいが、使ったトップコートは同じなのに、色味と塗り方のせいか右手の方が湿り気を感じるデザインになった。これが、母の故郷の奄美大島で、スコールのあとに見られる青空と少しピンクっぽく光る雲のコントラストに似ていて、「あぁ、コロナが落ち着いたらじぃちゃんばぁちゃんに会いに行こう」と思わせてくれるデザインになった。


ネイルが好きだ。ジェルネイルを人から勧められたこともあるけど、自分で塗るのが好きだ。高いマニキュアを持ってるわけではないし、楽器(ベース)を弾くので塗ってすぐ剥げてしまうこともある。でも、一瞬でも爪が可愛い時間があれば心が弾んで誰かに見せたくなるし、同時に誰にも見せずにひとりでこっそり眺めていたい、そんな気分にもなれる。

もちろんプロにやってもらえば私より上手に塗ってくれるし、ジェルネイルをすれば長持ちもするだろう。それでも、私は自分で塗りたい。自分一人でデザインを考えている時間が好きだ。思った通りに仕上がるのも、予想外の出来上がりになるのも乙なものだ。この色とこの色を組み合わせたのは私が世界で初めてじゃないか?なんて思いを巡らせながら、表面が傷つかないようにそっと息を吹きかけ乾かす、あの時間は愛おしい。

すぐ剥げてしまうのも、剥がれた瞬間はガックリくるけれどそれ自体は悪くない。剥がれたところをすぐ直せるのがセルフネイルの良いところだし、欠けたところを補修する様は何かしらの職人のようだ。ほとんど剥げてしまったネイルを落としながら、次は何色を塗ろうか、今日は一旦持ち越して明日このポリッシュを買ってこようかなんてうだうだ考える時間も、こうして文章に起こしてしまえば日常の煌めきと言えるかもしれない。

買うか迷っているネイルを調べている時、黄緑色のネイルをしている男性を見かけた。特にV系バンドマンだったりするわけでもなく、ナチュラルな感じの青年だった。男性でネイルしているのは珍しいと思ったと同時に、すごく素敵だと思った。確かにそうだよな、ふとした瞬間にお気に入りの爪が目に入って心躍るこの感覚は、性別関係なく誰でも独り占めできなきゃ勿体ない。

もしこれを読んでいる人にネイルをしたことがない人がいたら、ダイソーでいいから、売り場で一番好きな色のマニキュア1つと除光液(とコットン)を買ってみてほしい。そして、家で爪に塗ってみてほしい。規則のため職場や学校でネイルできない人も多いだろう、私もそうだった。だから、手に塗るも足に塗るも自由だし、それで外に出るか出ないかも個々人の自由だ。もちろん見せびらかしてもいい。自分だけの爪に自分だけの美しさを纏って、最強の独り占めをしてみる。そんな経験を、誰もが一回はしてもいいんじゃないか。なんてことを考えながら、布団の中で自分の爪を眺めていた。

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