2003年 日本数学オリンピック本選 第2問 解答例
コメント:
整数問題ですが、大きい数字を扱うことになる上に変数が増えがちで、
どの方向に処理していこうかかなり迷います。
地道に試行錯誤して処理しやすい形に持っていくしかないですが、
候補を絞るためにもなるべく範囲が限定される変数に置き換えていくのが吉のようです。
解答例:
条件より、$${n}$$桁の正の整数$${c, d (c < d)}$$を用いて
$${a = 10^n c + d, b = 10^n d + c}$$とおける。
条件(3)から、正の整数$${k}$$を用いて$${ka=b}$$とおける。
このとき、$${2\leqq k \leqq 9}$$である。
$$
\begin{align*}
k(10^n c + d) &= 10^n d + c \\
\iff 10^n (d - kc) & = kd - c \tag{1}
\end{align*}
$$
なので、$${d-kc = t}$$(正の整数)とおくと
(1)は$${10^n t = kd - c}$$となり、
$${10^n > d}$$であるから$${t < k}$$である。
$${d}$$を消去すると、
$$
(k^2 -1)c = (10^n - k )t \tag{2}
$$
を得る。
(i) $${k = 3, 5, 7}$$のとき
左辺は$${8}$$の倍数となる一方、
$${10^n -k}$$は奇数であるため、
$${t}$$は$${8}$$の倍数となり、$${t < k}$$に矛盾。
(ii) $${k = 9}$$のとき
左辺は$${16}$$の倍数となる一方、
$${10^n -k}$$は奇数であるため、
$${t}$$は$${16}$$の倍数となり、$${t < k}$$に矛盾。
(iii) $${k = 2, 4, 8}$$のとき
左辺は$${k+1}$$の倍数となる一方、
$${10^n -k}$$は$${k+1}$$の倍数でないため、
$${t}$$は$${k+1}$$の倍数となり、$${t < k}$$に矛盾。
(iv)$${k=6}$$のとき、
左辺は$${5}$$と$${7}$$の倍数になるが、
$${10^n - 6}$$は$${5}$$の倍数でないため、
$${t=5}$$、かつ$${10^n -6}$$は$${7}$$の倍数になり、
$${n = 6m - 3}$$($${m}$$は任意の正の整数)を得る。
この時、$${c = (10^{6m-3} - 6)/ 7, d = (6 \cdot 10^{6m-3} - 1)/ 7}$$であり、
$$
\begin{align*}
a &= \frac{(10^{12m -6} -1)}{7}\\
b &= \frac{6 (10^{12m -6} -1)}{7} (m \text{は任意の正の整数})\\
\end{align*}
$$
が解である。
追記:
必要条件で絞っただけのため十分性が気になりますが、
$${c, d}$$を求めてからそれを組み合わせて$${a, b}$$を作っているので、
$${c, d}$$がどちらも$${n}$$桁であることが示されればよいです。
$${c = (10^n - 6)/ 7, d = (6 \cdot 10^n - 1)/ 7}$$
なのでほぼ自明と言えます。
最小の解は$${m=1}$$のとき、
$${a = 142857, b= 857142}$$
です。その次に小さい解は18桁になります。
条件を満たす例をまず見つけるのも定石ですが、
この問題ではまず見つけられないでしょう。
$${1/7 = 0.142857142857 \cdots}$$
$${3/7 = 0.428571428571 \cdots}$$
$${2/7 = 0.285714285714 \cdots}$$
$${6/7 = 0.857142857142 \cdots}$$
$${4/7 = 0.571428571428 \cdots}$$
$${5/7 = 0.714285714285 \cdots}$$
というように桁がずれていくだけの小数の並びは
算数好きの小学生の間には割と知られているかと思います。
最終的な答えを見ると、これと関連していることから安心感がありますが、
問題文からいきなりこれを連想するのはさすがに無理があるかな。
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