117C38 医師国家試験 解説【産前産後休業の話】公衆衛生

38 32歳の初産婦 (10産)。 妊娠24週の妊婦健康診査のため、夫とともに来院した。妊娠初期に単胎妊娠と診断され、以降の妊婦健康診査において異常を認めなかった。人員不足のため、産前・産後に可能な限り勤務を継続して欲しいと勤務先から要請があり悩んでいるという。夫と共働きで生計を立てている。この患者への説明として正しいのはどれか。 3つ選べ。

a 「産後12週間は就業できません」
b 「請求すれば産前6週間の休業が可能です」
c 「勤務先の要請に従って働くことを勧めます」
d 「産後、男女ともに育児休業の取得が可能です」
e「産前・産後の休業中は解雇されることはありません」


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解説:公衆衛生という分野があり、医学生も主に法令について学びます。医師自身は法令のこと、経営つまりお金のことは疎いことが多く、とはいえ法律問題は是非がはっきりしているため、試験としては出題しやすく、医学部6年生は躍起になって取り掛かります。

さて、働き方改革の前から一般にも話題の内容です。
妊婦は非妊娠時と同等に労働可能か?というのは言わずもがな、です。
個人差はありますが、妊娠出産においては急激な体の変化、そして家族の構成の変化によりこれまで通り労働を行うということは困難です。

この問題は、妊娠出産と就労に関連する問題です。産前休業、いわゆる「産休」は産前6週から取得が可能です。
双胎だと産前14週です。
この期間には妊婦が請求した場合、就業させてはならないと労働基準法に規定されています

「取得が可能」という意味はとらなくてもいいということになりますが、とらない人はあまりいないでしょう。
出産前に出産日はわからないので、分娩予定日(=妊娠40週0日)を「出産日」と仮定しているので、単胎であれば妊娠34週、双胎であれば26週から取得が可能ということになります。
ちなみに、妊娠37−38週で帝王切開をすることが事前に決まっている人については、帝王切開予定日から計算する企業・雇用主もいます(おそらく分娩日は医師が証明するものなので、そのような診断書が必要となります)。

産後休暇は、本人の請求があれば、分娩後8週間は就業させては行けない、という法律です。
特に、産後6週間は請求の有無に関わらず、働かせてはいけません。こちらも労働基準法で定められています。

産前産後休業の補足として;
・出産日は産前です。
・産前産後休業中とその後30日間は解雇できません。
・こちらは男女雇用機会均等法ですが、妊娠したこと、子供がいること、産休を取得したことで解雇したり、不当な扱い(降格など)をしてはいけません。

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産婦人科領域の国家試験対策をしています。 近年の臨床の肌感が問われるような問題に対応しています。 解説希望があればコメントしてください。

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