家族で自分だけがHSPなのがつらい(ラジオ相談室4)

おっさん金魚は静かに日光浴をしていた。

2月の太陽は、目覚めの太陽だ。
一年の中で、これほど太陽の力に希望を感じる季節はないだろう。
寒さでこわばっていた体が、徐々に緩んでいく。

水の中で暮らすことの利点のひとつは、
とおっさん金魚はつぶやく。
花粉症と永遠に無縁でいられることだ。

マスク姿のゆめこが彼の体に当たる陽光を遮る。
近頃は、誰も彼もがマスク姿だ。彼女が花粉症持ちなのかどうか、もう見ただけでは判断できない。

マスクを付けた彼女は、大学生にも30代後半にも見える。

(ゆめこ)
家族が大好きなのに、家族と一緒にいるのがつらいんです。
なんだかすごく疲れてしまって。
体のあちこちで何かが溢れたり固まったりして、息ができなくなるような感覚が続いていて、とても悩んでいます。

最近、その原因がようやくわかりました。
いろいろ調べて、自分が内向型、あるいはHSPの傾向が強いことがわかったんです。

内向型人間の時代』という本や、HSP診断テストのおかげで、なんとなくこれまで否定して混乱してきた自分の性質の理解へのヒントがもらえたんですよね。

でも、だからといって家族との時間は相変わらず負担のままです。
特に仕事で疲れて帰ってきたあと、家族の食べる食事の匂い、食卓での会話、明るい部屋、テレビの音なんかがすごく気になってしまって。
家に物がすごく多いのもしんどいです。

家族みんながくつろいで楽しんでいる空間を、自分だけが共有できない。
それがすごく悲しくて。

(おっさん金魚)
おつかれ。
それはほんまに大変やんなあ。
ちょっとここで珈琲でも飲んでいき。
今日はバレンタインブレンドや。ブラジルとコロンビアメインのブレンドやで。

ちょっと金魚のフンのような香りがするという感想もあったけど、美味しいと思うで。というか、ネコのフンの中から取った豆「コピ・ルアク」が高級珈琲豆として名高いくらいやねんから、金魚のフンの珈琲豆があってもええと思えへん?
ビターチョコレートも付けとくで。

さて、内向型とかHSPとかそのへんの専門用語はようわからんけど、自分の場合は「リラックスできる環境が家族と違いすぎる」ってところに、苦しみがあるよなあ。
家族と仲はいいみたいやから、疎遠にするわけにもいかんし、にっちもさっちもいかんなあ。

子供の頃はどやったん?
別に大変でもなかったん?
そうか。

大人になって、いろいろ神経を使う場面が増えて、子供の頃より多くの情報を処理せなあかん状態なんかもしれんな。
キャパそのものは変わってへんのにな。

加えて自分の価値観がだんだんはっきりしてきて、好き嫌いもわかって、それでも大人としてぐっとこらえて受け入れなあかん状況が多い。
キャパオーバーやな。

自分の場合、自分が持ってる限られた「パリピテンション」を、1日の中でどう配分するかが大事になってくる。
パリピゆうても、酒飲んで騒ぐだけとちゃうで。
簡単に言うと「人や物とのキャッチボールの回数」ってところやな。

もし自分にとって、今の仕事が好きやったり大切なものなんやったら、そこにエネルギーを使い切ることを受け入れなあかんな。
家に帰ったら、暗い仏壇部屋で一人静かにご飯を食べたらええ。

大丈夫や。
君の家族はそんなことで君を除け者にすることは絶対にない。
家族の絆っていうのは最強なんやで。
会社の人と違って君のことを理解しようとするし、たとえ理解できなくても、別々の過ごし方をしていても、ちゃんと輪っかの中に入っていられる。

君、お父さんと一緒にお風呂入るか?
入らんやろ?
家族であっても、別々の時空間にいたってええんや。その絶対時間がちょっと減るだけや。
そのぶん休日に家族と草むしりしたり、寺参拝してもええ。
誰しも静かに、ゆったり過ごす時間は大事やし、そういう時間のつくり方に関しては君のほうが家族より先輩なんや。

それでも家族との時間を増やしたいなら、仕事を諦めよう。
在宅ワークとか、自分で疲れにくい環境を作れる仕事に変えてもいいし、ニートしてみるのも手や。

それで君の存在価値は、一ミリたりとも減じへんよ。
存在っていうのは、金や生産性の多寡で測れるような浅はかなもんとちゃうからな!

僕の助手のちひろは、かつて適応障害で公務員を一年でやめて、自分の価値がゼロになって、存在しているぶん世界にとってはマイナスなんや、みたいに思ってる時期があったんや。
そのとき、妹が言ってくれた言葉が今も忘れられへんねんて。

「大丈夫。仕事なんかせんでも、私が一生養ってあげるから」

その妹は、給料が安いことにブツブツ文句を言いながら、休日にネイル行ったりブランド店のウインドウショッピングしたりするのが好きな子なんや。
近い将来結婚して玉の輿に乗って、仕事辞めてダラダラしたいっていうのが当時の夢やったらしい。

その子が自分の姉に、そう言ったんや。本気でな。

な、家族ってええもんやろ?
自分も気遣わんと、自分の思うように過ごしたらええねん。家族やねんから。

最後に。
「パリピテンション」を全然使わへん生き方もありやで。
仕事の内容も、その環境も、家族との関係も、自分の時間も。

全部自分の思うようにデザインしてみたら、たぶん自分の中に眠ってたエネルギーのデカさにびっくりすると思うで。

まあ、これのできる人はごく少数やけどな。
今日は以上や。

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