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珈琲好きのあなたに贈りたい「こひる」の文化(おっさん金魚ラジオvol.1)

(おっさん金魚)
珈琲淹れるでー。
グァテマラとコロンビアが、ええ頃合いやけどどうする?
あ、授乳中やからカフェイン控えてるんか。
ごめんごめん。

(ちひろ)
コロンビア薄めで、カフェラテにしてお願いします。

(おっさん金魚)
お、今日は飲む日なんやな。
そしたらついでに「こひる」のことをみんなに知ってもらおか。

こひる(小昼、こびる)っていうのは、簡単に言うと「おやつ」って意味やねん。

もともとは寒い地方の農家の人たちの間で使われてた言葉で、おやつって言っても甘いものではなくて、実用的な「補食」の意味合いなんや。

農作業って、朝の早くから起き出して作業するやろ。
朝飯前にちょっと作業して、朝ごはんに山盛りご飯食べて、それでも昼ごはんまではもたへんねん。
昔はトラクターとか軽トラもないし、それだけ重労働やったんやな。

だから、朝ごはんと昼ごはんのあいだ、昼と夕ごはんのあいだに、おにぎりとかおやきとか、そういう手軽に食べられるもんを補給する。
それが「こひる」やってん。

(ちひろ)
「こひる」ってググったら、いくつか店が出てきますね。
岩手や長野なんかの地方で、地域おこし的な色合いを帯びたおしゃれな感じのカフェをやっていたり。
いずれももともとの「こひる」の意味にあやかって、おやつタイムを提供しておられますね。
【小昼堂】松本城下町のカフェ|信州の蕎麦・おやき・珈琲の店
夏油古民家Cafe kobiru(小昼)&観光案内所

さらには、東京のお店も出てきました。
5/30 小昼屋OPEN情報 | NAGAE+(ナガエプリュス)
コンセプトが、めちゃくちゃ東京ナイズされてる。
全然腹膨れなさそう。

(おっさん金魚)
東京の人は胃袋ちっちゃいねん。
将来襲ってくるであろう食糧危機に備えて、すでに進化を始めてる人たちやねん。

君のとこの夫婦みたいに、毎食フードファイトみたいな食べ方はせんねん。

(ちひろ)
いやでもうちは節約してるんで、お金の面では少食ですよ。

(おっさん金魚)
そうやってなんでも金銭価値に変えるところが、君ら人間社会の資本主義経済の悪いとこやな。

(ちひろ)
で、私たちは「こひる」をどうしたらいいんでしょうか。
大して肉体労働をしないので、おやつにおにぎりをもりもり食べたりはしないのですが。
いや、授乳中なんで食べますけどね。授乳中なんでね!!

(おっさん金魚)
こひるにはな、単にエネルギー補給以外に重要な役割があってん。
畑仕事をする夫に妻がおにぎりを届けたときにちょっと話するとか、
作業してる人同士で子どもの話するとか、
雨が振りそうやから水やりはやめとこかとか。

そういう、ちょっと休憩がてらに情報交換をする場として機能しててん。

で、現代に生きる君たちは、もうほとんど肉体労働をせんようになった。
わざわざお金を払って、ジムに行ったりするくらいや。
肉体労働から解放されて効率化するためにトラクターを導入した農家からしたら、狂気の沙汰やで。

(ちひろ)
でも実際、仕事って相当な割合でデスクワークになってますからね。
別に楽したいからではなくて、肉体労働という選択肢が減っている。
特に、一次産業って賃金的にあんまり報われない業種じゃないですか。

(おっさん金魚)
まあ最後まで聞きや。
こひるは、君らにこそ必要なんやで。
君らは、毎日頭を使いすぎる。無駄に使いすぎている。
肉体労働が減ったぶん、情報処理に仕事が集中する。
せっかくできた余暇も、絶えず情報処理をする。

そら、疲れるで。

こひるはな、疲れた脳を適度にほぐしてくれる。
肩の力を抜いて、次の作業に備えさせてくれる。

おやつって言ってもたいそうなもんと違うねん。
デパートで食べる、1,780円もするケーキと紅茶のセットじゃなくてええねん。

昼の3時頃に隣で仕事してる同僚に声かけて、給湯室でルマンドとかカントリーマアムとか食べるのでええねん。
甘いものを食べたら血糖値が乱高下するからどうのこうの〜ってのが気になるなら、ナッツとかチーズとか食べたらええねん。
ほんまにそんなんを食べたいなら、の話やけど。
ちなみに僕はビスコが好きや。

そうすることで、体は消耗モードから充電モードに入れる。
同時に、ちょっと目をつむったり小話することで、こんがらがった糸がほぐれていくんや。

睡眠がまさにそれや。夢を見ることで頭を整理したり、体を休めることで回復したり。
けど午睡する時間がなかなか取れん人のほうが多いのも事実やな。

それにこひるの場合は、いつも一緒にいるけど、その人のことあんまり知らんわって人を知る場にもなる。
人が仕事をするのであって、仕事に人が使われているのでない限り、仲間の人間性みたいなのを知ることは重要なことやわな。

特に今の時期、リモートワークをしていると同僚の進捗や意見を気軽に聞く場がなくて、仕事に支障をきたしたり、寂しかったりもするやろ。

だから、半ば強制的にでもいいから、こひるタイムを作って雑談する時間を作ったらどうやろな。
「わざわざチャットで聞くほどでもないけど」って内容には、意外と大事なヒントが含まれてたりするもんやで。

まあその場合、僕が君に珈琲淹れてあげることもできへんし、カントリーマアムの新しい味を一袋同僚にあげることもできへんようになるねんけどな。

(ちひろ)
会社のSlackに、こひる部屋作ってみますわ。
それで、そこに「今から15分間こひる時間なので、返信遅れます」って送ろう。

こひるに、デバイスはそぐわないですもんね。

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