布団でしたおならの行方(おっさん金魚ラジオvol.4)

(ちひろ)
あ、ちょっとおっさん金魚さん!
いまおならしたでしょ。

(おっさん金魚)
したよ。
しましたよ。
だから?

(ちひろ)
だから?
って、謝るとか、恥ずかしがるとか、なんかあるでしょう。

(おっさん金魚)
おならしたぐらいで?
空気における気体の存在比率にほとんど影響を及ぼさへんぐらいのガスを、体の内から外に移動させただけで?

(ちひろ)
あなたはいいですよね。
おっさんやし。金魚やし。
私は若者とおばちゃんのちょうど間くらいの年齢ですが、いちおう人前でおならをするのを我慢したりはします。
他人の迷惑とか、恥ずかしいとか、そういう理由で。

うちはね、夫(33歳)も娘(0歳)もかなり屁こき虫なんですよね。
で、やっぱり夫のおならはくさい。

部屋でおならされると、
「はやく今すぐ窓開けて! くさい! 寒い! 窓閉めて!」
なんていうやり取りが交わされることになるわけです。

娘のおならはきゃわいい〜んですけどね。
夫は屁こき虫が遺伝ではなかろうかとかなり気を揉んでいるようですが。

そして私はというと、便秘の日とさつまいもを食べ過ぎた日に屁こき虫になります。
前者の日は非常に非常にくさいおならが、後者の日は非常に大きなおならが出ます。

後者の場合は普通に部屋でぶっ放すんですが(なぜか私は怒られない)、後者のときはさすがに気を遣います。
「このガス、娘の健康に悪い影響があるのでは…」なんて考えたり。

そういう日は、夜眠る前に布団の中でそっと出すんです。
分厚い布団のおかげで、においは出てこない。

たまに、好奇心で布団をぶわぁっさぶわぁっさして、顔に自分の屁を吹きかけて遊んだりするんですけどね。あはは。

で、ふと思ったんです。
布団の中でしたおならって、朝になったらなくなってるじゃないですか。
あれ、なんでなんですか?
私のくさいおならは、どこに消えたんですか?

(おっさん金魚)
結論から言うと、おならは無数に分割される。

一部は君の体内に再び戻り、
一部は君の大事な娘の呼吸器に入り、
一部は君の夫のおならになって出てくる。
近所のパン屋に並ぶクリームパンの表面をなぞるかもしれない。

エントロピー増大の法則って、知ってるか?
簡単にいうと、
「なにごとも自然に放置すれば、秩序から無秩序へ向かう」ってことや。

秩序から無秩序っていうとわかりにくいかもしれんな。

たとえば、部屋を20度に暖めてたとする。
洗濯物を干す間に部屋のドアを締め忘れてて、廊下の気温が7度やったとすると、部屋はあっちゅうまに冷えてまうわな。

いろんな絵の具が混ざって黒になっていくような感じや。

気体は特にエントロピー増大の法則が働きやすくて、おならなんてもんはもう、すぐに文字通り雲散霧消や。

それを布団という固体で閉じ込めてる分、すぐには空気と混じり合わん。
でも、布団の隙間からちょっとずつちょっとずつ、おなら成分は出ていってる。
においとして検知できへんだけでな。

これが、布団でしたおならがあたかも消えてしまったかのように見える魔法のトリックや。

(ちひろ)
なるほど…じゃあ、おならをするときも、ちょっとずつちょっとずつを意識すれば、あんまりくさくないということでしょうか。

(おっさん金魚)
その場合、スカしっぺになって余計にくさいという説もあるけどな。

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