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わたしのスランプ体験記

わたしに少しでも興味を持ってアクセスしてくれてありがとうございます。

他人の成功体験よりも失敗体験のほうが学びが多い、ということもあり、この話を書くことにした。

今回は2012年の日本選手権で100m平泳ぎ5位に入賞した後と、2014年のジャパンオープンで50m平泳ぎ優勝した後の2つのケースを例に、何がスランプの原因になっていたのか紹介したい。


2012年の日本選手権入賞後の話

大学3年で迎えた2012年4月の日本選手権。100m平泳ぎ決勝を1分01秒17で泳いだ。しかし、同5月のジャパンオープンでは1分03秒17とベスト+2秒かかる。9月のインカレでは何とか1分01秒台で泳いだものの、その後はまた調子を崩した。翌2013年4月の日本選手権は1分03秒、8月の全国国公立では1分5秒という、スランプに陥っていた。結果、大学最後のインカレは、平泳ぎを諦め、自由形に出場した。


2012年4月の後、何が起きていたか。

当時の目標は、全国大会の決勝で泳ぐことだった。その目標を大学3年で迎えたその日本選手権で、達成できてしまった。

レース後、当時指導してもらっていたコーチから、「代表狙えるぞ」と声をかけられた。確かに、インターナショナル標準Cまで0.2秒ほどだったし、翌年のユニバーシアードは十分狙える圏内だった。わたしは、「はい、挑戦してみたいです」と即答した。

このときの目標再設定がスランプの入り口だった。

それまでの「全国大会の決勝」という目標は、自分の原動力となるものだった。インターハイの決勝の入場や泳ぐ選手を見て、カッコいい、自分もそこに行きたいとワクワクした。インカレの決勝の盛り上がりを見て、その思いは更に強くなった。

しかし、「代表入り」という目標は、自分にとって少し遠いものだった。国際大会はテレビの向こう側の世界。もちろんカッコいいとは思っていたが、自分がその世界に行くというイメージが難しかった。自分の心を突き動かす目標にならなかった。

それゆえ、目標達成までに必要な要素の分析をすることを放棄していた。今よりも持久力をつける、パワーをつける。ただそれだけ。戦略性に欠けていた。調子が悪くなっても冷静に分析することがなかった。


では、トレーニングは十分に積めていなかったかというと、そういうわけではなかった。

2012年のGWには、通っていたクラブのトップ選手が集う合宿に行き、メンタルも身体も崩壊寸前(冗談ではない)になるまで泳ぎまくった。通常の練習も週6回から8回に増やし、週4回は高校生と同じ練習をこなすようになっていた。週に3万メートルくらいだった練習量は、6万メートル近くになった。

苦手な持久練習も少しづつこなせるようになり、女子高校生と張り合えるようになっていた。スピード練習では絶対に高校生に負けまいと、質も高くなっているのは感じていた。ささやかな成長が自分のモチベーションになって、人生で一番泳げていたと思う。


普通の人はここまで泳げていれば、そこそこのタイムで泳げるのではないだろうか。わたしはなぜこんなにもタイムが落ちていったのか。

端的に言えば、余裕がなかったからである。

もともと、大会前のテーパー期やその前のスピードに焦点を当てる時期くらいから、急激に調子を上げてくるタイプだった。通常の練習では「ある程度のレベルの泳ぎ」を維持する力しかなかった。

それが、練習量が増えたことによって、ある程度のレベルの泳ぎが維持できなくなった。また、大会前の時期に泳ぎを仕上げきることができなくなった。


そこに気づくこと無く大学4年の夏を迎えてしまった。

平泳ぎは好きな種目で思い入れがあった。それがいくら泳いでもフォームを治そうとしても調子が上がらなくて困った。7月頃までどうしようか悩んだ。

「このままではインカレの決勝に残ることができない」

この思いが平泳ぎに見切りをつけることを決断させた。クロールは、自分にとって平泳ぎ問比べて泳ぎのレベルを保ちやすい種目であった。実際、大学の対抗戦でリレーを泳いでもタイムは悪くなかった。

決勝を狙える種目は50m自由形だったため、インカレまでの2ヶ月間、練習を変えてもらった。高校生と同じ練習は止め、大学2年の頃に行っていた練習に戻す形を取り、何とか最後のインカレに間に合わせることができた(50m自由形 6位)

まとめると、以下が不調に陥った原因である。

1.モチベーションを掻き立てない目標
2.目標達成までのプロセスにおける戦略性の欠如
3.自分のキャパシティを越えすぎた練習量


2014年ジャパンオープン優勝後の話

社会人1年目で迎えた2014年のジャパンオープン。決勝で自己ベストを更新し(27秒60)、優勝することができた。人生で初めての全国大会優勝。

しかし、2015年のシーズンベストは29秒03、2016年は29秒28と長い不調に陥った。


きっかけは怪我だった。

2014年の冬にチームのメンバーと合宿に行ったときの話。調子がとても良かった。自分で初めてなくらい調子が良かった。とある練習の最後、50mをクロールで全力1本飛ばしたとき、自分のスピードについていけず、ターンしようと思ったときには壁に激突していた。幸い傷もほぼなく、骨折もなかったが、しばらく首が動かせないむち打ち状態となった。

2週間程度、首にコルセットを巻いたまま生活をした。コルセットが取れて少しづつ首も動くようになったが、今度はひどい肩こりに悩まされた。

朝起きると小胸筋が極度に収縮していて激痛が走り、首や背中もガチガチになっていた。泳いだ翌日はその症状がさらに酷かった。もちろんケアには通っていた、怪我した当初から1週間に1回は鍼治療を受けた。だが、楽になってもすぐにガチガチになる。朝起きるのが憂鬱で、寝たまま二度と起きなければなんてことを考えたことも。。当然トレーニングからは足が遠のいた。

苦しい日常から開放されたい思いで、「肩こり」「首こり」「小胸筋」いろいろ調べてなんでもやった。鍼治療、ストレッチ、筋膜リリース、岩盤浴…。仕事はデスクワークなので、デスク環境も身体にいいように変えてみた。

泳げば肩がガチガチになる状況には変わらなかったが、朝の激痛が少しずつ和らいでいった。身体をしっかり温めれば、肩の動きが出ることもわかり、トレーニングも徐々に再開した。しばらくして気づいた。

今の自分って姿勢悪すぎじゃないか。

もともとデスクワークの姿勢が悪かった上に、むち打ちがきっかけでさらに姿勢が悪くなっていた。ひどい肩こりが起きて当然の状態だった。


振り返れば、2014年のジャパンオープンは、入社してまだ研修期間。座学が多く、PCを使うことは少なかった。講義を聴くのは暇だったので、ひたすらいい姿勢を保とうとしていた。好調の1つの要因がこれだったと思う。

不調に至った原因をまとめると、

1.デスクワークのときの悪い姿勢(猫背、骨盤後傾)
2.むち打ちをきっかけにさらなる姿勢の悪化


結局のところ

2012年の例も、2014年の例も、共通点があることに気づいた。

わたしは身体の使い方が他人よりも下手である

身体操作の能力が高かったとしたら、練習量が多くなって疲労しても、泳ぎを崩さずに練習をこなせていただろう。むち打ちで肩周りの血流悪化、筋肉の硬直があっても、それが治ってくれば、正しい姿勢に戻せていただろう。

水泳以外の運動が苦手。走るのが遅い、ボールを投げるのが下手、器械運動も真面目さで多少カバー。水泳も練習しないとすぐにタイムが落ちる。身体操作が下手であるということを裏付ける要素はいくらでもあった。すべてがここで繋がった感じがした。

この気づきをきっかけに、解剖学の勉強をするようになった。奥が深すぎて自分じゃどうにもならないと思い、パーソナルトレーニングを受けるようになった。パフォーマンスピラミッドを学んでまさに自分は土台が弱いと認識することができた(詳しくはこちらの記事で)

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教訓

この2つの経験から学んだことを自戒の意味も込めてまとめておく。


目標は、達成したときをイメージして心を動かされるものに設定せよ

もし心を動かされないのであれば、自分にとって本当に達成したい目標ではないのかもしれない。その場合は目標を変えたほうが良い。もし、それでもその目標を達成したいと思うなら、実際に達成している人の話を聞くなどして、その世界をイメージできるようにすることが大切だと思う。


具体的かつ戦略的な計画が立てられているかチェックする仕組みを作れ

現在の自分(AsIs)と目標の姿(ToBe)を比較し、そのギャップを具体化できているか。そのギャップを生んでいる課題は何か。その課題をどの順番で潰していけばよいか。

自分のことは自分が一番良くわかるはずだから、まずは自分で考えることが重要である。しかし自分で考えるだけだと、考えが不十分なことや、考えてるフリになっていることがある。書き出してフレッシュな頭で再度見返すことや、他人に相談するなど、客観的な視点を入れることが大切だと思う。


水泳以外の部分にも目を向けよ

水泳選手である以前に、ひとりの人間である。人間として理想的な、効率的な身体の使い方ができていないと、いくら水泳の技術を磨こうと思っても、筋力や持久力をつけたとしても限界がある。

また、水泳以外のことに割く時間のほうが圧倒的に多い。寝る時間、仕事をしている時間、常に身体は何かしらの影響を受けていて変化している。マイナスの変化をしてしまった場合は、それを0に戻すところから始まる。なんてもったいないことか。

水泳以外のスポーツや動作で何か苦手なことは無いか。普段の生活で何か特徴はないか。視野を広く持つことが大切だと思う。


以上。

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