【短歌】 連作『すべての夜へ続く手触り』


暗闇に目を慣らしつつ穏やかに一番悪い未来をおもう


住む場所が安定せずに剥き出しの変数として渡されてゆく


風景の鮮度が落ちてゆくたびに呼吸は深く緩やかになる


四日目の風邪 人生のものすごく貴重な四日間ずっと風邪


十五年前の誰かのアメブロを勝手に読んで勝手に泣いてる


二時半になっても眠れず部屋中の冬ゆび先に集まってくる


帯付きの(思ったよりも温かい手触りがする)百万の束


現金にすれば片手に収まってしまう来年も再来年も


重箱の四隅を集めて新しい箱を作った、みたいな悟り


あたらしい匂いが残るその紙のすべての夜へ続く手触り



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