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Album of The Year: Limp Bizkit "Still Sucks"


私は毎年12月終盤にその年にリリースされたアルバムで、個人的に1番良かったアルバムを"Album of the year"としてセレクトしてます。

2021年のAlbum of the Yearは間に合わず、年を越してしまいました...

さて、今年2021年のalbum of the yearは、Limp Bizkitの"Still Sucks"をセレクト!!10月30日とハロウィン前日のリリースになってます。

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はい、私はミクスチャーロックが大好きです。

Red Hot Chili Peppers, Nine Inch Nails, Korn, Incubus, Rize etc... ラップとロックが混合した音楽、所謂ミクスチャーが私の音楽テイストの核になっています。特に、中学生の頃にラップメタル(Nu metal)は全盛期を迎えており、やはり世代なのか、今だにこのジャンルは大好物です。

Limp Bizkitと言えば、Nu metalの代表格。このジャンルで1番商業的に成功したバンドでしょう。

ただ、

Limp Bizkitの"Still Sucks"....実は2021年の年末まで発売されていたとは知りませんでした...

なんと10年振り(!)となる新作の"Still Sucks"は、往年のリンプのリフやラップ、そしてバラードが更に磨きかかった傑作です。

初期のころからウェスの刻むリフってかなりカッコイイんですが、2011年にリリースされた前作"Gold Cobra"から、そのリフの変態度合が劇的に増して、中毒性のあるグルーヴィーなリフがウェスの真骨頂になっています。今作もその路線は継承されているようです。

ただストリーミング時代を象徴するかのように、12曲32分(1曲平均2分半強!)というコンパクトな仕上がりです。

アルバムのレビュー

以下、収録曲を順にレビューしていきたいと思います。

#1 Out of Style
「過去は変えられないが、より良い明日を築くための今日をスタート出来る」という意味深な語りで始まる冒頭曲。ダブステップとラップメタルが混合したかのようなリフが印象的です。Kornの"The Path of Totality"を彷彿とさせる仕上がり。

#2 Dirty Rotten Bizkit 
#1と同じテイスト。所々に現れるギターアルペジオが、往年のウェス節を感じさせます。

#3 Dad Vibes
恐らくメンバーが1番自信がある曲だと思います。今の最新のLimp Bizkitを体現する曲だと思うので笑。ただギターは抑え気味かな。

#4 Turn It Up, Bitch
アップライトベースのリフが渋い、オールドスクール風ヒップホップ。この曲がアルバムで2番目に好きですね!

#5 Don't Change
打って変わってアコースティックギターがメインのバラード。恋人に変わって欲しくない!って願う感じのニュアンスの曲かな。意外だけど、フレッドダーストはバラード上手い。テレビ神奈川の昔の番組のSakuSakuの白井ヴィンセントが弾きそうなコード進行です笑。良い曲!

#6 You Bring Out The Worst In Me
イントロはBoards of Canadaを彷彿とさせます。発売日がハロウィン直前なので、ハロウィンについて触れる箇所あり。メインリフのベースがレッチリぽく、サビがメタルコア風な曲。

#7 Love the Hate
Limp Bizkitとフレッドダーストの自虐ネタ曲。なぜこんな曲を発表した!? "We don't give a fuck"のシャウトが往年のフレッドダースト節です。

#8 Barnacle
Limp Bizkitには珍しく王道の8ビートの曲。サビの歌い方がthe Cureのロバート•スミスぽいかな。普通のバンドには定番なリズムだけど、Limpがやると新鮮。

#9 Empty Hall
再度のアコギ曲。フックがちょっと弱いかなー。


#10 Phill Popper 
冒頭2曲同様、ダブステップの要素が強い、タブステップ+メタルコアな曲。

#11 Snacky Poo
フレッドダーストの蔑称、"chocolate starfish"が所々に出てくる再度の自虐曲。オールドスクールなヒップホップ曲。後半の、くだらなくて陳腐な質問を連発してくるインタビューワーにウェスが適当に答える風なアウトロは何なんだろう笑


#12 Goodbye
恋人に裏切られて失恋して、新しい人生を始めることを歌うバラード。いくらミクスチャーが好きと言っても、これがアルバムで1番好きな曲かも。哀愁が漂いまくってます。こういう曲好きだなー。ホント、フレッドダーストはバラードが上手いよ!

まーコンパクトにグルーヴィーな曲とバラードがバランス良く並べられたアルバムです。王道なLimp節にダブステップを混ぜた曲とこれまでのバラードの要素を深化させたアルバムと言えば良いかな。凄い好きですね!!


なぜ今更、リンプを選んだ!?

では、なぜ今年のalbum of the yearにLimp Bizkitの"Still Sucks"を選んだのかというと、今年はこのバンドに特に思い入れがあるからです。

実は私、2021年の8月初旬に新型コロナウィルスに感染しました。新型コロナ特有の症状に大変苦しみましたが、重篤化はせず、無事に回復しました。感染直後の自宅待機中にツイッターを見ていると、ボーカルのフレッドダーストの話題で持ち切りになっていました。フレッドダーストの話題にはなっていますが、タイムラインの画像は全く見知らぬオジイチャンで埋まっていました。

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赤いグラサンをした白髪の髭のオジサン...誰?と思いました。フレッドダーストと言えば、New Eraのベースボールキャップを被った短パンのラッパーじゃないですか↓

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理解するのに数分掛かりましたが、このオジイチャンがフレッドダースト本人だったのです。シカゴで開催されたLollapalooza 2021にこの出で立ちで登場していたのです。別人過ぎるだろ....とんでもない衝撃でした。色々なコメントに"Daddy looks"と書かれていましたが、まさに初老のお父さんという出で立ちでステージに立っていたのです。そこからこのライブが滅茶苦茶気になったので、youtubeで検索したらあったので、急いで見ました。

 まー素晴らしいライブです。新型コロナで世界中が終末的な地獄の黙示録状態を1年以上続けていたのに、何も無かったかのようなオーディエンスの光景。コロナ禍が一番ヤバかった2020年12月頃は、まさかこんな光景を再び見られるとは思いませんでした!自宅療養中の私に希望をくれました。

この動画のコメントにも書き込まれていますが、SNS全盛の近年ライブはどうしてもオーディエンスの中にスマホを見かけるものですが、このライブではあまり見かけません。どこか90年代のvibesが感じられる懐かしさもあるラフなライブなんです!!

新型コロナを克服した高揚感と'90sのvibesを醸し出す滅茶苦茶良いライブ。しかもそのステージには、90年代後半に全盛期を迎えていた時代の寵児だったLimp Bizkit。このバンド、ウェスを中心に演奏力は90年代より格段に向上しています。イントロのPanteraを彷彿とさせるグルーヴィーなメタルリフの嵐は本当にテンションが上がります。

だいたいこのウェスの出で立ちも変態過ぎる...ヤクを常用してないとこんな衣装のインスピレーションは浮かばないよな...


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このウェスの格好とフレッドダーストのルックスにギャップがあり過ぎて、笑ってしまう。しかもこんなdaddy looksのオジチャンがラップを畳み掛けるのなんて全く想像出来ない....

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ベースのSam Riversも滅茶苦茶に減量したのか、こちらも全くの別人。Sam Riversと言えば、指板のフレットマークが光るWarwickの5弦ベースのイメージが非常に強く、典型的なNu metalのベーシストというイメージでした。が、このライブではFender Jazz Bassの5弦を使ってるじゃないですか!! レッチリのFleaが2005~6年の一時期に1961年製の貴重なヴィンテージのシェルピンク ジャズベースをメインで使い始めた時くらいの衝撃はあります。

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私の以前からの格言(笑)なのですが、「ベーシストは、いつか必ず最終的にFenderのジャズベに戻る」というものがあります。ヘヴィなラウドロックの象徴で、Fender Jazz bassとは無縁と思えた リンプのサムもその例に漏れず。

このライブ、時間は短いですが、往年の代表曲を畳み掛けて、最後は新曲のDad Vibesを(演奏するのではなく!)会場で試聴(!?)する感じ(爆笑)で終わります。フレッドとウェスがTシャツをばら撒きまくってます。ウェスはかなり演奏力が向上していて、新加入のツアー限定ドラマー Brand Pertzbornと、Samのパッシブのジャズベとの絡みも含めて楽器隊全体がタイトです。

そしてビックリなのが、フレッドの声質が全盛期と全く変化してないところ! 50代とは思えない声の若さです。リンプの全盛期にそもそも生まれてすらない観客もかなりいたのではないでしょうか。世代を超えてバンドを楽しむというのはとても良いものです。

ライブの感想はこれくらいして、本題の新作の話に戻ります。

リンプはその全盛期に、まー同業者から嫌われました。Nine Inch NailsやらSlipknotやらマリリンマンソン等から特に。90年代後半から数年は正にロックのメインストリームにリンプビズキットがいたわけです。個人的には、2001年頃のthe StrokesやWite Stripes等のガレージロック勢の登場と、本格的な白人ラッパーEminemの台頭で、一気にラップメタルの人気は落ちていった記憶です。


2001年にウェスが脱退し、リンプは迷走します。ギタリスト探しを数年やってましたね。日本でもギターのオーディションやってましたし。結局、元snotのマイクスミスが加入し、2003年に"Results May Vary"をリリースしました。セールス的には全くの不調だったみたいですが、Gimme the Mic, Head for the Barricade, Behind Blue Eyesなど良曲も結構ありました。Behind Blue Eyesはthe Whoのカバーですが、この時、「リンプはバラードが良い」と感じました。事実、新作Still Sucksの"Don't Change"や"Goodbye"は良いですよね。


2005年からウェスが再加入したり再脱退したりを繰り返していますが、今後もそんな感じでいくのでしょう。時代の流行りは流されず(部分的に取り入れてるのもあるけど)、ブレずにラップメタルを貫き通すその姿勢はカッコイイです。もはや様式美です。全盛期のように、"[Limp Bizkit] still sucks"と批判されてるかもしれませんが(恐らくアルバムタイトルはこういう会話から採用された!?)、「俺たちの音楽はこれだ、くらいやがれ!」  とでも言わんばかりの素晴らしいアルバムです。Limp Bizkitの20年前とは変わらない、その硬派なスタイルに敬意を表します。



因みに、以下が過去に私が"Album of the Year"に挙げたアルバム。かなり個人的主観で選んでます。

2020: "Maya" (John Frusciante)

2019: "When We All Fall Asleep, Where Do We Go?" (Billie Eillish)

2018: "Fight the Good Fight" (The Interrupters)

2017: "Wabi Sabi" (Survive Said the Prophet)

2016: "The Getaway" (Red Hot Chili Peppers)

2015: "Pimp A Butterfly"  (Kendrick Lamar)

2014: "1989" (Taylor Swift) 

2013: "Syro" (Aphex Twin)

2012: "Inhibition" (Dot Hacker)

2011: "I'm with You" (Red Hot Chili Peppers)

2010: "The Lady Killer" (CeeLo Green)

2009: "Hocus Pocus" (木村カエラ) 

2008: "Good Girl Gone Bad: Reloaded" (Rehanna) 

2007: "Myth Takes" (!!!/chk chk chk)

2006: "Stadium Arcadium" (Red Hot Chili Peppers) 

2005: "With Teeth" (Nine Inch Nails) 

2004: "In Love and Death" (The Used) 

2003: "Blink-182" (Blink-182) 

2002: "By the Way" (Red Hot Chili Peppers) 

2001: "Morning View" (Incubus)



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