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初めて会った人に対して「この人、いい人なんだろうなぁ」と思い込んでしまう時。

初めて会ったばかりの人と話したり、その人の行動を観察して、「この人、いい人なんだろうなぁ」と思い込む事って、たまにある。

先日、初めて渋谷PARCOに行った時の事だ。目的の4階のショップで、商品を色々見て廻って、好きなゲームのキャラクターがプリントされた手帳のカバーと手帳本体、カバンに十分おさまるサイズの同キャラクターがプリント小さめのポーチを買おうと決めた。

在庫があるか分からなかったので、店員さんに問い合わせた。対応してくれた店員さんの長身で細目の感じや喋り方が、日本の有名なアーティストに似ていた。昨年の紅白で、テレビ初生ライブに出て注目を受けていた存在。そのアーティストが歌い終わった後に、緊張して少し上擦って早口になってテレビに映る姿と、少し緊張して対応してくれている店員の彼と被った。きっと、新人のアルバイトの方なのだろう。

待っている間、他の商品も見ていて、「あ、これいいなぁ」と思うステッカーを見つけた。「つづく」とプリントされたステッカー。「なんのこっちゃ」って感じのシール。ステッカーの種類は、黒、発光色がある青とオレンジ、あともう1色あったが忘れてしまった。ちょっと考えて、発光色がある青を選んだ。直感だ。なんか、惹かれたのだ。

ステッカーを選び終わると、彼が戻ってきた。そのまま会計してもらおうと思ってレジに向かう時に、彼が突然、笑顔で「(ゲームのタイトル)いいですよね、僕も好きです!」とハニカミながら一言。その表情を見て、やっぱ、あのアーティストに似ていた。

レジで商品をバーコードを通してる最中、彼と雑談をした。詳しく何を喋ったかは、うる覚え。覚えているのが、僕がたしか、「このゲームって、どっか怖いとこありますよね」って言ったら、彼は、「僕は3番目の登場キャラクターの修行のシーンが怖かったです」と返ってきた。そうそう、たしかに、そのシーンは僕も覚えていた。あれも、たしか、画面にテキストだけでシーンの状況が描かれていたけど、読むだけで、怖い内容のシーンだった。中学生の時にプレイをして、子供ながらに想像しただけで、怖かった。キャラクターが、かわいらしい一方で、ゲーム内で描かれるてる事は、一部狂気に近いものがあった。今思うと、ちょっとアートなゲーム作品だ。。

雑談も会計も終えて去り際に、「また(ゲームの)タイトルについてお話しましょう」と言って、彼は嬉しそうに見送ってくれた。いやぁ、店員さんと好きなゲームの話で会話できるのは、たのしいなぁ。

その後、フロア数階あがり、小さいギャラリーブースがあったので、入ってみた。さっき下の階で商品を買った店舗にも、ギャラリーブースの展示ついてのチラシがあったので気になっていた。購入した「つづく」のステッカーも、この展示会と関連あるようだった。

展示物に飾ってあったデザインは、北欧の文化や生活様式に影響を受けたデザイナーが作ったブランドで、名前の由来は、フィンランド語からだった。日本語で直訳すると、いまいちピンと来ず。「私、ちょうちょ」。これだけでは、どんな意味を含んでいるのか分からないが、なんか名前だけで、世界観や解釈が色々想像できて、いいなぁと思った。

小さい展示だったので、さほど興味がなければ、10分くらいで会場を観て廻れる規模だった。最初は単なる興味だけだったのだが、会場中心に置かれたガラスケースの展示物に、気づいたら釘付けになっていた。デザイナーの制作メモ、工場への指示出しと仕様書(刺繍について)、テキスタイル制作のアナログのデザイン(設計図みたいなの)などが展示されていた。興味深かったのが、テキスタイルのデザイン手法がアイデアに富んでいた事だ。手書き(鉛筆)、絵の具など色々あったが中でも、おもしろいなぁと思ったのが、消しゴムを使ったゴム版だった。最初ムラのあるモノクロのデザインを観た時、どうやってムラを出したんだろうと思っていたけど、まさか消しゴムを使っていたとは、少しびっくりした。

食い入るようにガラスケースを観ていたから、10分どころか30分以上、会場内にいたと思う。会場に入って、たぶん20分くらい経った時だった。僕の横から足早に近づいてくる気配を感じた。振り向くと、さっき下の階でゲームの雑談をした彼だった。

「あれ、どうしたんだろう?」と思い、若干戸惑いながら、話を聞くと、「すみません、こちらにミスがあって、お渡しそびれたものがありました」と一言。

彼は、少し息切れして、慌てた感じで早口になっていた。申し訳なさそうな表情だった。彼が手に持っていたのは、光沢を帯びた真っ赤なプラスチックボールペンと小さい箱だ。箱は、「百人一首」と書かれていた。カルタだった。

「3000円以上お買い上げのお客さまにお渡しするグッズだったんですけど、私がうっかり渡しそびれてしまい、申し訳ありませんでした」と、頭を下げる彼。

突然の事だったので、僕も何がなんだか分からなかった。さっきまで展示物に意識がずっといっていたので、頭の切り替えが、すぐに追いつかなかった。とりあえず、グッズを彼から受け取って、すぐ思ったのが、「よく、じぶんがいる場所が分かりましたね」って事だった。

ここは8階で、さっき彼がいた階は4階だった。4階から8階まで、ずっと探してたのかと思うと、びっくりした。あれから、20分以上経っていたはずだ。彼が言うには、渡し忘れて、ずっと僕を探していたらしい。

「どうしてここだと思ったんですか?」と尋ねたら、さっき僕が買った「つづく」とプリントされたステッカーを思い出して、「もしや!」と思って、ダメ元で階をあがって探しにきたらしい。彼の少し上擦った早口の言葉や、頑張って笑顔で振る舞おうとしている態度から、必死感が滲み出ていた。

思わず、「すごい洞察力ですね」と僕は一言。好きなゲームキャラの商品が大半の中、あのしれっと買った小さいステッカーから、ここまで探し当てて、やってきた彼に、えらく心を揺さぶられた。

「何度もお手間をとらせてしまい、申し訳ありませんでした」と言って、彼がその場を去ろうとした時、僕は思わず一言「ありがとうございます。頑張ってください!」と彼を自然と応援してしまった。妙に、うれしかったのだ。

展示を見終えて最後に、人が疎らな平日のPARCOの屋上で、冬の夕暮れを見た。とりわけ目立つ大きなビルと横に長く伸びた雲間から見える夕日のオレンジが妙に白くボケているのが、幻想的だった。その夕日を脇目に見ながら、PARCOのビル外側にある、屋外階段(非常階段でない)を1フロアごとに降っていた。

降っている最中、頭の中に自然と思い描くのは、さっきの彼の姿だった。もし、あの時展示会場に、じぶんがいなかったら、彼はどうしていたのだろうか?

キャンペーンの無料グッズとはいえ、渡せなかった事、ミスした事を、彼は家に帰って後悔、気に病むんだろうか。探している最中、どんな気持ちだったのかなぁ。必死だったんだろうなぁ。一緒に店員に、どうしたらいいか訊いたのかもしれない。

フロアを探し回っている彼の姿を想像すると、なんか切ない気持ちになった。僕が同じ立場なら、同じ階のフロアをいったん探すけど、そこで諦めてしまうかもしれない。さすがに、手がかりを見つけて、上の階までは上がって探しに行かなかったと思う。上の階まで行って探すって判断を、彼自身で、考えて判断して、実行したんだろうなぁ。などと、あれやこれや色々想像してしまった。想像してみて、あの展示会場に長く居て、よかったなぁと安堵した。

彼本人じゃないので、実際彼の胸中がどうだったかは、分からないし、想像してる事も僕の思い込みでしかない。だいぶ、美化して盛りすぎている。ただ、経緯はどうであれ、彼が実行した事は事実であるのだ。僕は、その事実と、事実から想像されうる経緯の可能性をもって、「彼は、きっと誠実で、いい人なんだろうなぁ」と思ってしまったのだ。

気に入った商品を買えた事も、いい展示を観れた事も、よかったけど、その日彼に、出会えた事が、一番印象深く、よかったなぁと思えた。PARCOを後にして、渋谷のスペイン坂を下ってる時の僕の顔は、ニヤニヤして、心踊って、歩くテンポも軽かった。




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