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夢から覚める

尾山 広平


大量の水がアスファルトの上り坂を勢いよくあがってくる。


津波……?


私は道からそれた建物のなかに潜み、「こっち、こっち」と、すぐそばにいた妻を急ぎ呼び寄せた。


しかし妻は「私はいい」というそぶりで道の脇に突っ立ったままでいる。


私は何度も何度も「早く、早く」と妻を呼び寄せるのだが、まったく動こうとしない。


まもなく妻のいる場所まで大量の水がおしよせ、激しく流れていく。


私は「妻は死んだことだろう」と思いながら、激流がやむのを待った。


やがて流れが止むと、私は妻を探しに走りでた。


ほどなくして道を歩く妻の後ろ姿を発見し「おー、生きていたか!」と浮かれてかけよると別人だった。


私はすぐさま走りだした。


すると直ぐにまた妻の後ろ姿を見つけ近寄っていった。


しかしこれもまた別人だった。


また別人。


あぁ、、、あのとき、


私はすぐそばにいた妻を力づくにでも避難させればよかったとひどく後悔し、



そしてこれが夢だったら……


ん?


私は気づいた。


これは夢だ。


私は夢のなかのある独特の感覚があることに気づいたのだ。


その瞬間、


私の注意は妻から離れ、夢を見ている本人にのみ注がれた。


そうするやいなや、


私はすみやかに目を覚ました。


私はもはや洪水に流されただろう妻の安否を気にすることは二度とない。


そう、



私は夢の苦しみから永遠に解放されたのだ。


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