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2021年の個人的アルバムランキングTOP10

またしても久しぶりの更新になってしまったが、またこの季節がやってきた。
去年からnoteで始めた、年間アルバムランキング。去年は邦楽・洋楽を分けてランク付けしたのだが、もはや邦楽・洋楽を分ける意味もあんまり無くなってきた&分けると個人的にランキング化がしにくいといった事情もあり、今年は一緒くたにしてランキングを決めることにした。
去年は洋邦それぞれの上位5位とその他の紹介としたが、今年は洋邦総合のランキングということで、範囲を広く1~10位のランキングとしてみた。ベスト5に絞って考えるのは難しかったけど、ベスト10もそれはそれで難しかった...。

また、このランキングはあくまでわたくし加賀屋航平の好み・思い入れ・聴いた回数、etc...から編み出したかなりガバガバなものであるため、今から述べる作品の単純な優劣を決めつけるものでは決してないということを理解されたい。今年も前置きとして一応書いておく。

ではでは早速、10位からいってみよう。


第10位
black midi - Cavalcade

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しょっぱなの第10位はイギリスのポストパンクバンド、black midiの2nd AL『Cavalcade』。近年のサウスロンドンを中心としたポストパンクムーブメントのなかでもある意味少し浮いた存在感を放っているこのバンド。
どうやらめちゃくちゃ評価されているらしい、ということで聴いてみたのだが、初めて聴いたときはあんまりピンと来ず、「ナニコレ、ムズカシイ、、、」というのが正直な感想だった。そのジャンルに明るくないのであまり分からないが、ポストパンクだけでなくプログレやジャズからの影響もあるらしく、故にやたら難しく、肌馴染みがない感じがしたのだと思う。
しかしながらどこかで抱いていた「なんか知らんけどこれはすごいぞ....!」という直感を信じ、半分修行のように聴き続けた結果、見事ブラック・ミディの虜になってしまった。今ではめちゃくちゃカッコいいなと思うし、ライブも見てみたい。
たぶん最初の状態なら余裕でランク外だったと思うけど、ここ最近の「キテる」具合がすごくて急に10位に滑り込んできた感じ。
アルバムの冒頭を飾るM1「John L」の衝撃的なイントロがマジでたまらない。超カッコいい。M7「Hogwash and Balderdash」のこれ何の音なん??ってなる「チャキチャキチャキチャキ」っていうイントロも無条件にブチ上がってしまう。イントロのことばっかり書いてしまったけど、本当に惚れぼれする演奏が聴きまくれるアルバム。
8曲42分と長大すぎないところもグッド。聴き終わるとむしろ短く感じるくらい。


第9位
大友良英 - 映画『花束みたいな恋をした』大友良英オリジナル・サウンドトラック

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第9位はまさかの映画サントラ。今年のヒット映画『花束みたいな恋をした』のサントラ集である。
これはもう、99%思い入れや聴いた回数からのランクイン.....。すいません。
僕は映画を観たあと、数日間はその映画のサウンドトラックを聴いて余韻に浸る、、というのが通例なのだが、このサントラはその余韻の期間がすごく長かった。映画の内容が素晴らしかったのはもちろんのことだが、ちょうど映画を観た2月ごろから春にかけ少しずつ暖かくなっていく気候と、このサントラのアコースティックなサウンドがマッチしていたのも大きな理由だと思う。
映画は悲しい結末を迎える男女の物語ではあるものの、このサントラから思い浮かぶのは幸せだったかつての2人の光景である。かといって微かに匂う別れの気配も切なくて、すごく良い。とても心温まるサントラだし、映画にもすごく合っていると思う(もちろん音楽込みで"映画"ではありますが)。
世間では「勿忘」が大流行してましたが、僕はしみじみとこちらを楽しんでおりました。


第8位
shame - Drunk Tank Pink

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またしてもサウスロンドンのポストパンクシーンから。ムーブメントの火付け役の一人ともいえるshameの2nd AL『Drunk Tank Pink』が第8位。
shameは今年の年明けぐらいにドハマりしたので、今作は好きなバンドの新譜としてキャッチ。
1stに比べて構築された部分と良い意味で衝動任せな部分がはっきりと分かれたという印象で、またダンサブルな要素も増えたように思う。1stよりオルタナティブさは後退し、よりニューウェーブっぽさが強くなった感じ。
個人的に前作が会心の出来すぎたので、8位というやや低い位置にしている。今でもどちらの方が好きかと言われれば1stのほうを挙げると思う。
とはいえ好きな曲はいっぱいある。M2「Nigel Hitter」、M3「Born in London」、M5「Water in the Well」あたりは特にお気に入り。アルバム最後のM11「Station Wagon」もカッコよくて好きだけど、LPでいうところのA面が好きかな。B面の勢いでバーーっと突っ走るパートの良さはまだあまり分かりきっていないかも。
shameが好きになったことをきっかけにUKポストパンクの素晴らしいバンドにたくさん出会えたので、感謝の気持ちも込みで、堂々の第8位。


第7位
Yogee New Waves - WINDORGAN

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僕の大大大好きなバンド、Yogee New Wavesの4th AL『WINDORGAN』が第7位。
待ち焦がれた新作で、アナログのリリースがあったのもすごく嬉しかった。
アルバム中盤から後半にかけてディープな世界に突入していく感じは前作と似ているが、アルバム全体を通してより風通しがよく、身軽な感じ。
「to the moon」「あしたてんきになれ」「White Lily Light」等のシングル曲の聴こえ方が以前とは全く変わっていて、それもめちゃくちゃ良かった。
アルバムの流れとしては前作『BLUEHARLEM』(大名盤!!)に軍配が上がるかなぁとはじめは思っていたが、今作後半の「windorgan」~「Toromi Days」~「Jungrete」~「Long Dream」~「White Lily Light」の流れはなかなかに絶品。個人的に今年はめちゃくちゃフィッシュマンズを聴きまくった年だったので、特に「Jungrete」のビートのフィッシュマンズっぽさ、「Long Dream」の「LONG SEASON」ぽさ(タイトルだけか)にすごく興奮した。
まだそこまで思い入れがないかも...ということで低めの7位にしたが、(前作までと同様)時間が経つにつれて大切なアルバムになっていくことは間違いない。


第6位
DYGL - A Daze In A Haze

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こちらもずっと好きなバンド、デイグローの3rd AL『A Daze In A Haze』が第6位。
全体的に気張った印象のあった前作(もちろんめちゃくちゃ良かった)を経て、良い意味でなんとなく力の抜けた感のある今作。あまり掴みどころがない感じもするのだが、その掴みどころのなさがなんともいえない心地よさを醸し出している。
60~80年代のオールドロック、ガレージ、ポストパンク、00年代のポストパンクリバイバルがリファレンスに感じられていた前作までとは異なり、もっと広い意味での「ロック」や、ポップスの雰囲気もかなりある。味は薄いけどずっと食べれる料理、とでも言えるような馴染みの良さがあり、僕も気が付かないうちにかなりの回数聴いていた。
どの曲も良いのだけど、個人的ベストトラックはM2「Banger」。M7「Wanderlust」もかなり好き。DYGLはライブに行くことができて、この2曲も聴けてすごく嬉しかった。
全体的にポップで明るく、DYGL入門編に最適なアルバムだとも思う。


第5位
橋本絵莉子 - 日記を燃やして

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いよいよベスト5、第5位は橋本絵莉子『日記を燃やして』。
言うまでもないが元チャットモンチーのフロントマン、通称えっちゃんのソロデビューアルバム。
チャットモンチーといえば高校時代からずっと大好きなバンドであり、自分のバンドも大きな影響を受けている。ということもあり大期待でこのアルバムを聴いたのだが、これがもう本当に素晴らしい。
チャットモンチーとはまた異なるベクトルでのシンプルなバンドサウンドもさることながら、歌詞のパワーがすごい。彼女の年齢、境遇でしか書けないストレートかつパーソナルな歌詞に、チャット教徒だった僕の心が動かない筈がなかった。日本全国にいる他のチャット教徒にも、同じように強く響いていると思う。
(歌詞、サウンドともに)シンプルでストレート、そしてパーソナルな作風からは、曽我部恵一『曽我部恵一』、奥田民生『29』、John Lennon『Plastic Ono Band』等、かつてバンドのフロントマンだったミュージシャンのソロデビュー作を彷彿とさせるものがあった。
名曲揃いだけど、個人的にはM9「今日がインフィニティ」がとにかくヤバい。


第4位
カネコアヤノ - よすが

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第4位はカネコアヤノの5th AL『よすが』。
祝祭』のときから好きで、その次の『燦々』もかなり好きだった。
今作は初めて聴いたときにはそこまでピンと来なかったのだが、一度しばらく聴かなかった時期を挟んで久しぶりに聴いたときに「これは...!」と衝撃を受け、それ以降かなりお気に入りのアルバムだ。
リリースされて何十年も経ってからではなく、リアルタイムそのときから"名作"のオーラを放っているのが彼女の作品のすごいところだと思う。この『よすが』も間違いなくそうだ。
明らかに時代錯誤とも思えるフォークロックのサウンドでありながら、なぜかこの令和時代の「若者の音楽」と断言できてしまうこの感じは、本当にすごいなと思う。今後日本の音楽史に残っていくアルバムであることは確実だし、リアルタイムでこの大名盤に触れることができている喜びを噛みしめたい。
全11曲のどれもが名曲なのだが、個人的ベストトラックはM9「腕の中でしか眠れない猫のように」。いや、まあ、でも全曲ベストと言いたい。
弾き語りリメイク作の『よすが ひとりでに』はカセットテープを買って聴いたのだが、これもすごくよかった。カセットとの相性が抜群すぎるので、カセットが聴ける環境がある人は是非聴いてみてほしい。


第3位
くるり - 天才の愛

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そしていよいよベスト3、第3位は僕が愛してやまないくるりの最新アルバム、『天才の愛』。
冒頭の大名曲M1「I Love You」、M2「潮風のアリア」を筆頭に、くるりらしくバラエティ豊かな楽曲が並ぶ。
一般評ではその多様な楽曲群から、2012年のアルバム『坩堝の電圧』などが引き合いに出されがちだった(と思う)が、サウンドプロダクションやジャケットの感じから、個人的にはあくまで前作『ソングライン』の延長にあるアルバムだなという印象が強い。なので「変な曲めっちゃ入ってるソングライン」が僕のまずまずの感想だ。
素直に考えれば1位になって当然な大名盤だと思うのだが、その音楽性の幅広さ、世界観の特異さから、現時点では自分のなかでアルバム全体を咀嚼し切れた気がせず、この順位としてしまった。くるりの大ファンとしては1位にしたかった(なると思ってた)のだけど、、、。ゆえに長く向き合う必要があるし、その価値があるアルバムだとも思っている。
個人的ベストトラックはアルバムラストを飾るM11「ぷしゅ」。なんともいえないエセチャイニーズ感や、ダンサブル感がめちゃくちゃ良い。「ビールおいしい」ぐらいのことしか言ってないくだらなさも最高。


第2位
Homecomings - Moving Days

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第2位はHomecomingsの5th AL『Moving Days』。
前作『WHALE LIVING』が良すぎたので聴くのが怖いぐらいだったのだが、そんな心配は全く無用の大名作だった。
これまで以上にやさしく、温かいアルバムで、リリースされた春の季節にもぴったりだった。配信された当初はほとんど毎日聴いていたように思う。まさに日々のサウンドトラックだった。
本当に好きな曲だらけなのだが、M1「Here」、M2「Cakes」は特に好き。「Cakes」は映画『愛がなんだ』の主題歌としてシングルバージョンをかなり聴き込んでいたのでアルバムバージョンがしっくりくるか疑っていたのだが、アルバムバージョンが本当に良くてびっくりしてしまった。より生っぽくなった演奏も良いし(ミックスの妙かな?)、シングルよりエモーショナルになったボーカルも超良いし、新たに加えられたストリングスセクションも超素晴らしかった。
前半の陽性な雰囲気からM9「Pet Milk」~M10「Blanket Town Blues」で深く沈み込むところも良いし、最後にM11「Herge」でまた浮上してくるところも絶妙な安心感があって好き。
こんな名盤を立て続けに発表してこれからどうなるんだろう.....とこっちが不安になってしまうほど。マジで好きなアルバムです。


第1位
ミツメ - Ⅵ

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そして堂々の第1位はミツメの6th AL『Ⅵ』。
こちらもHomecomings同様、前作『Ghosts』が超名盤だったのでやはり聴くのが怖かったのだが、個人的には前作を超えた出来のアルバムだと思う。完成度、聴いた回数、好き具合、今聴いてこれを聴いていたときのことを思い出す度合い(つまり思い入れのこと)等から、1位とした。
大名曲「トニック・ラブ」を筆頭に先行シングルがどれも素晴らしかったので、それに引っ張られる形でアルバム全体も良いものになっているという印象。とはいえアルバム曲もいずれも素晴らしく、アルバム曲のなかでの個人的ベストトラックはM7「システム」だ。ヤバいくらいに歪んだベースとドライブ感のあるビートから他の曲からは少し浮いた印象も受けるのだが、めちゃくちゃカッコいい。アナログで聴いたとき、B面の1曲目でこの爆音のイントロが流れるのも最高だ。
何度も同じ語り口で申し訳ないが、ミツメの浮遊感があって少しサイケデリックな感じが、今作がリリースされた春のぼやけた空気感ともすごくマッチしていたと思う。先述したHomecomings『Moving Days』とこのミツメ『Ⅵ』は個人的にセットで、間違いなく2021年春のサウンドトラックたる2枚だった。


まとめ

本当は10位までに入れられなかった他のたくさんの作品についても書きたかったのだが、なんだか疲れてしまったので泣く泣くあきらめることにする。。あれのことも言いたいし、これのことも言いたいのに、、、となっていてとても悔しいので、時間があれば別記事で書きたいと思う。
ランキングを考えるにあたって、今年はいわゆる"スルメ"な作品がとても多かったように思う。それぞれはとても優れた作品なのだが、ランキングという形式に当てはめるには少し難しく、洋邦をまとめた理由もそこにあったりする。
とはいえ今年も素晴らしい音楽にたくさん出会えて嬉しかった。
また、時間があれば2021年の映画ふりかえり記事も書いてみたいと思う。
ではでは。

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